交流戦での成績はシーズン全体に影響を及ぼすと言われるが……
約2週間半におよんだ2022年の日本生命セ・パ交流戦は、東京ヤクルトが4年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。かねてから、交流戦での戦いぶりがシーズン全体の成績にも影響を及ぼすという言説は、多く見受けられるところだ。では、昨季の交流戦と、パ・リーグにおける年間順位や打者の個人成績に関しては、はたしてどの程度の相関性が見受けられたのだろうか。
今回は、2021年における交流戦のチーム成績と、打率ランキング上位に入った選手たちの成績を確認。その後の年間成績に加えて、各シーズンの経過について細かく振り返っていくことにより、交流戦という期間の重要性を、あらためて検証していきたい。
11年ぶりに交流戦優勝を果たしたオリックスは、その後も快進撃を続けた
2021年の交流戦におけるパ・リーグ各球団の成績と、シーズン全体の成績は下記の通り。
オリックスは交流戦で12勝5敗1分け、勝率.706という好成績を残し、11年ぶり2度目の交流戦優勝を飾った。チームも交流戦前の段階では負け越していたが、ここから大きく調子を上げ、最終的には25年ぶりのリーグ優勝を果たした。交流戦の戦いぶりがチームを勢いづかせ、そのまま優勝にもつながったという点に、疑いの余地はないだろう。
また、オリックス以外で唯一交流戦期間中に勝ち越しをつくった東北楽天は、最終順位でもAクラス入り。2021年の交流戦では12年ぶりにパ・リーグが負け越しただけに、交流戦期間中に他球団に対するリードをつくれたことが、終盤に失速してもそのまま大崩れせず、Aクラスの座を維持できた理由の一つとも考えられる。
千葉ロッテは1つの負け越しをつくったが、この時期は主力の捕手に故障者が続出し、セットアッパーの唐川侑己投手も戦線離脱。交流戦終了直後に加藤匠馬選手と国吉佑樹選手を補強して離脱者の穴を埋め、リーグ戦再開後は再び調子が上向いたことを考えれば、苦しい時期を最小限の負け越しにとどめたことには、小さくない意義があったといえよう。
交流戦で下位に沈んだ2チームは、リーグ戦再開後も苦しんだ
その一方で、交流戦期間中に大きく負け越した2チームは、リーグ戦再開後も苦しい戦いが続いた。開幕から最下位に沈んだ北海道日本ハムは交流戦を浮上のきっかけとしたかったが、4つの負け越しを喫して流れを変えられず。終盤戦で調子を上げて最終的には最下位を免れただけに、交流戦期間中に状態を上げられなかったことが惜しまれる。
福岡ソフトバンクは12球団最多となる8度の交流戦優勝を誇り、伝統的に交流戦に強い球団として知られる。しかし、昨季は投打に離脱者が相次ぎ、リーグ最少の5勝を挙げるにとどまった。最終順位における3位の東北楽天との差は3.5ゲームだが、そのうち交流戦期間だけで2.5ゲームの差をつけられていた。得意としてきた交流戦での不振は、Bクラス転落の大きな要因の一つとなっている。
2021年のパ・リーグにおいて、唯一交流戦の戦いぶりと最終順位がかけ離れたものとなったのが埼玉西武だ。交流戦を勝率5割で乗り切り、6月末まではシーズン成績も勝率5割前後を推移していた。しかし、7月以降に急失速してしまい、最終的にはまさかの最下位に沈んでしまった。
リーグ内打率ランキングの上位2名は、交流戦をきっかけに大きく成績を向上
ここからは、2021年の交流戦において、パ・リーグ在籍選手の中でトップ10の打率を残した選手たちの顔ぶれを見ていきたい。
ビシエド選手(中日)に次ぐ全体2位の打率を残した森友哉選手は、年間打率でもリーグ2位の好成績を記録。ただし、交流戦開始時点の打率は.273にとどまっており、交流戦をきっかけに大きく数字を伸ばしていった経緯を鑑みても、交流戦での活躍が、シーズン成績の向上へとダイレクトにつながった好例といえよう。
また、福田周平選手も交流戦開始時点の打率は.229と低かったが、交流戦では最初の2試合連続で猛打賞を記録。その後も交流戦での18試合のうち無安打に終わったのは2試合のみと好調を維持し、交流戦優勝にも大きく寄与した。リーグ戦再開後もトップバッターとしてチームをけん引し、悲願のリーグ優勝にも多大な貢献を果たしている。
岡島豪郎選手は2018年以降は大きな故障もあって低迷が続いていたが、2021年は5年ぶりに規定打席に到達し、打率.280と一定の数字を記録。シーズン全体で記録した8本塁打のうち、ちょうど半数となる4本塁打を記録した交流戦における活躍も、岡島選手の復活における一助となっている。
そして2022年は、杉本裕太郎選手が69打数27安打の打率.391で初の交流戦首位打者と最多安打に輝いた。まさに尻上がりに調子を上げている杉本選手の働きぶりも、オリックス連覇の鍵となりそうだ。
3名の主力が交流戦で状態を上向かせたことが、オリックスの優勝にもつながった
レアード選手は高打率を残したのみならず、本塁打と打点の双方において、シーズン全体のちょうど2割近くを交流戦だけで叩き出している。年間打率もキャリアハイの2016年にあと.001まで迫っただけでなく、本塁打と打点の2部門でリーグ2位。調子の波が激しい選手なだけに、交流戦での固め打ちがもたらした好影響は大きかったといえる。
吉田正尚選手は2021年に2年連続となる首位打者に輝いたが、同年の交流戦でもさすがの打棒を披露していた。その吉田正選手を上回る交流戦打率を記録したT-岡田選手も、9月30日の千葉ロッテ戦で9回に起死回生の逆転3ランを放つなど、シーズン17本塁打という数字以上に大きく優勝に貢献している。福田選手も含めた3名の主力が交流戦で成績を向上させたことが、優勝への流れをつくったとも考えられよう。
鈴木大地選手もリーグ10位となる打率.277を記録し、例年と同様に安定した活躍を見せた。しかし、角中勝也選手、小深田大翔選手、呉念庭選手の3名は中盤戦以降に打率を下げ、交流戦での好調を最後まで維持できず。この傾向を鑑みるに、より交流戦打率が高い選手のほうが、好調が一過性とならずに状態を維持できる可能性が高いと言えそうだ。
今季のパ・リーグは混戦模様
昨年の数字をみると、チームの年間順位、個人成績の双方において、一定以上の相関性があると言える結果となった。また、それ以前の年においても、交流戦をきっかけに大きく調子を上げたり、あるいは失速を余儀なくされる例は、セ・パ両リーグにおいて枚挙にいとまがない
だが今年に限っては今季の混パ模様を象徴するかのように、2つ勝ち越した千葉ロッテ(3位)から2つ負け越しのオリックス(9位)まで、交流戦で大きく差は開かなかった。この結果が最終順位にどう影響するか、さまざまな意味で要注目だ。
文・望月遼太
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