三木肇監督のもと始動した2025年の東北楽天は、67勝74敗2分、勝率.475、パーソル パ・リーグ4位でシーズンを終えた。4年連続4位と悔しい結果に終わった一方で、多くの若手選手が頭角を現し、来季に向けた収穫も多かった1年とも言えるだろう。今回は、東北楽天野手陣の2025シーズンを振り返っていく。
足を生かした攻撃でチーム盗塁数は断トツの1位
今季を振り返ると、チーム打率.244、432打点はそれぞれリーグ4位と、昨年とほぼ横ばいになったが、特筆すべきは“盗塁数”だろう。チーム盗塁数はリーグトップの「110」を記録。内訳を見てみると、小深田大翔選手が28個、中島大輔選手が22個、辰己涼介選手が20個と、特定の選手一人が盗塁数を稼いだのではなく、複数選手がコンスタントに盗塁を成功させていることが分かる。このように、果敢に次の塁を狙う、足を生かした攻撃が印象的だった。
また、チーム本塁打数はリーグ最少も、シーズン中盤以降はボイト選手や黒川史陽選手などのパワーヒッターが存在感を示すなど、昨季と比較しても確実に攻撃力が上がったと言えるだろう。
浅村栄斗が通算2000本達成! 平成生まれの選手としては初の快挙も苦しい1年に
大記録まで残り「36」本で今シーズンを迎えた浅村栄斗選手だったが、今年は苦しい1年になった。2015年から連続出場を続け、歴代4人目の記録を保持していたものの、開幕からなかなか打撃の調子が上がらず、5月18日の出場をもって記録が「1346試合」でストップ。
それでも、主軸として背中でチームを引っ張ろうとする姿を見せ続けてきた浅村選手。5月24日・北海道日本ハム戦、山崎福也投手の変化球をはじき返し、ついに史上56人目となる2000安打を達成した。平成生まれの選手としては史上初の記録達成となっている。
しかし記録達成後も不振に苦しみ、7月には二軍での調整を余儀なくされるなど、苦難のシーズンを過ごした浅村選手。結果的に96試合で打率.239、9本塁打、34打点と、13年連続2桁本塁打を達成することはできなかったが、来季は復活した姿に期待したいところだ。
宗山塁はケガなく一軍完走 パ新人44年ぶりとなる遊撃手部門でのベストナイン受賞
5球団競合の末、ドラフト1位で入団した宗山塁選手は、敵地で迎えた開幕戦(3月28日・オリックス戦)でデビューを飾った。「2番・遊撃手」で先発出場した同試合では、1点ビハインドで迎えた9回表、1死3塁で第4打席が回ると、マチャド投手の初球をはじき返し、プロ初安打が貴重な同点打に。その後は5試合連続安打を記録するなど、好スタートを切った。
また、4月16日・福岡ソフトバンク戦では、上沢直之投手から先制弾となるプロ初ホームランを記録。以降もケガなく出場を続け、一軍でシーズンを完走した。新人野手としては、球団4人目となる100安打を達成すると、12球団ルーキー最速で規定打席到達。さらに、パ・リーグ遊撃手部門では、新人44年ぶりとなるベストナインに輝くなど、十分すぎる成績でルーキーイヤーを終えた。
村林一輝は最多安打者賞を獲得 三井ゴールデン・グラブ賞&ベストナインにも選出
10年目・村林一輝選手は、昨季を上回る活躍を見せた。昨シーズン、ショートのポジションでレギュラーに定着した村林選手だったが、宗山選手の加入もあって、今季は三塁手としての出場がメインに。それでも、ポジション変更をものともせずに一度も離脱することなく出場を続け、4月、5月、7月にはいずれも月間打率3割を超えるなど、安定した成績をマーク。終盤こそ調子を落としたものの、夏場には首位打者に躍り出るなど、打線をけん引し続けた。
また、遊撃手・宗山選手と抜群のコンビネーションで鉄壁の三遊間を形成するなど、守備でも数々のピンチからチームを救った。結果として、137試合で513打数144安打、打率.281といずれもチームトップの成績をマーク。最多安打のタイトルを獲得すると、三井ゴールデン・グラブ賞、ベストナインにも選出され、チームにとって欠かせない存在へと成長を遂げた。
2年目・中島大輔はリードオフマンに
2年目を迎えた中島大輔選手は、前年を大きく上回る124試合に出場するなど存在感を示した。昨季は、故障による離脱などもあり、37試合の出場にとどまった中島選手。今季は開幕一軍入りこそ逃したものの、4月半ばに昇格。5月は月間打率.304を記録するなど頭角を現すと、シーズン中盤からはリードオフマンとして存在感を発揮し、以降は離脱することなく、一軍でシーズンを走り抜けた。
黒川史陽はブレイクを果たす 規定打席未達ながらもハイアベレージをマーク
高卒6年目・黒川史陽選手は、ブレイクの1年に。83試合に出場し、301打数90安打、4本塁打、33打点、打率.299と、規定打席未達ながら3割近い打率を残し、大器の片鱗を見せた。8月5日・オリックス戦では、両軍無得点で迎えた11回裏、1死から浅村選手が四球で出塁すると、黒川選手の同級生・武藤敦貴選手が代走に。その後、2死2塁から黒川選手がヒットを放つと、武藤選手が激走でホームイン。入団から切磋琢磨して高め合ってきた同級生コンビが、激闘に終止符を打った。
ボイトは途中加入にもかかわらずチームトップの13本塁打をマーク
今季から加入したボイト選手も、打線の主軸として活躍した。6月に入団したボイト選手は、7月2日に一軍登録されると、同日の千葉ロッテ戦に「6番・指名打者」でスタメン出場。早速、第2打席で来日初安打を放つと、迎えた第3打席、木村優人投手の変化球を捉え、力強い打球はレフトスタンド中段へ。鮮烈なNPBデビューを果たした。
以降も勝負強いバッティングで打線をけん引し、途中加入だったにもかかわらずチームトップの13本塁打を記録。お立ち台では「TOHOKU サイコー!」と毎回声を張り上げてスタジアムを盛り上げるなど、ファンからも愛されているボイト選手。初めてNPBでフルシーズン戦うことになる来季は、さらに本塁打を量産してくれるに違いない。
ルーキー・吉納翼&陽柏翔が一軍デビュー 21年ドラ1・吉野創士も一軍の舞台に
ドラフト5位・吉納翼選手、ドラフト6位・陽柏翔選手も一軍デビューを果たしている。吉納選手は、二軍95試合で、5本塁打、打率.223を記録し、9月29日に初昇格。初安打こそ生まれなかったが、2試合に出場した。なお、11月に左肩反復性肩関節脱臼に対する鏡視下Bankart修復術を受け、試合復帰まで5カ月を要することが発表されている。
陽選手は、10月3日に初昇格を果たすと、同日の埼玉西武戦、代打でNPB初打席に立ち、カウント3-2から安打を記録した。その後も、俊足を生かした積極的な走塁を見せるなど、少ない出場機会でも持ち味を発揮。来季に向けて大きくアピールした。
また、2021年のドラフト1位・吉野創士選手は、高卒4年目の今季、初めて一軍の舞台に立った。入団からここまで二軍でたくさんの経験を積み、9月29日に満を持して一軍初昇格を果たした吉野選手。出場2試合目となった9月30日・千葉ロッテ戦で初安打をマークすると、10月3日・埼玉西武戦で本拠地デビュー。同試合では初タイムリー、初打点を記録し、塁上では力強いガッツポーズで喜びをあらわにした。
イーグルス一筋14年、岡島豪郎が現役引退 最終打席は安打で有終の美
多くの若手が躍動した一方で、長年チームのために戦ってきたベテランがまた一人、現役生活に終止符を打った。
球団創設初の日本一に輝いた2013年、リードオフマンとして打線をけん引し、以降も主力選手として躍動した岡島豪郎選手が、今季限りでバットを置く決断をした。ガッツあふれるプレーと持ち前の明るさで、チームメイトそしてファンから愛された岡島選手。現役最終打席となった10月4日・埼玉西武戦では、同郷・高橋光成投手から安打を放ち、有終の美を飾った。なお、来季からは球団アンバサダーとして、東北・球団の魅力を発信する活動を行うことが発表されている。
2013年以来13年ぶりのリーグ優勝へ
ここまで振り返ってきたように、今季は若手の活躍が目立った東北楽天だが、野手最年長の鈴木大地選手も、内野全ポジション、そして時には外野守備をこなすだけでなく、ピンチでもチャンスでも、積極的な声掛けを行うなど、今年も精神的支柱としてチームを支えた。
2013年以来13年ぶりのリーグ優勝、そして日本一に向けて、十分な戦力はそろっているはずだ。三木監督の続投が決まっている2026シーズン、東北に再び栄冠をもたらせるか。
