課題だった確実性も、5月は向上
身体能力抜群のロマンあふれる大器が、いよいよその本領を発揮しつつある。北海道日本ハムの万波中正選手が、早くも自身初の2桁本塁打に到達。4月末の時点では打率.155と確実性に大きな課題を残していたが、5月の月間打率は.284と数字が向上。続く6月は月間打率.211とまだ調子に波はあるが、2度の猛打賞を記録するなど主力として定着しつつある。
また、5月10日以降は主に5番打者として起用されるようになっているが、クリーンアップの一角として相手バッテリーのマークが厳しくなる中で、しっかりと結果を残している点も特筆ものだ。今季だけで既に4度もサイクル安打にリーチをかけるなど、好調な試合ではまさに手が付けられない打撃を披露しており、今後のさらなる活躍にも期待がかかる。
今回は、万波選手のまさに常識外ともいえる打撃スタイルについて、「各種指標」「コース別打率」「球種別打率」という、3つのデータをもとに紹介。具体的な数字を参考にしながら、覚醒の気配を見せる22歳の若き逸材について、より深く掘り下げていきたい。
2021年に示した確かな成長が、今季のブレイクにもつながっている
万波選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
万波選手は横浜高校から、2018年のドラフト4位でプロ入り。プロ1年目の2019年は二軍で90試合に出場し、打率.238ながら14本塁打と持ち前の長打力を発揮。一軍でも2試合に出場し、高卒ルーキーながら貴重な経験を積んだ。翌2020年はさらなる活躍が期待されたが、二軍での58試合で打率.196、8本塁打と成績を落とし、一軍出場は果たせなかった。
3年目の2021年は二軍で打率.280と確実性を向上させ、65試合で17本塁打と長打力も両立。この活躍が認められて一軍での出場機会も増加し、プロ初本塁打を含む5本塁打を記録した。一軍での打率は.198と粗削りではあったが、高いポテンシャルの一端を垣間見せるシーズンとした。
そして、2022年はオープン戦の16試合で5本塁打、長打率.628と、持ち前のパワーを発揮。自身初の開幕一軍入りを果たすと、その後は先述の通りの活躍を見せ、近未来の主軸として大いに期待が持てるだけの躍動を続けている。
豪快極まりない打撃スタイルが、あらゆる意味で希少な数値を生み出している
続いて、万波選手がこれまで記録した各種の指標を見ていきたい。
2019年は一軍での4打席のうち、ちょうど半数となる2打席が三振だった。その後も2年続けて出場試合数を上回る数の三振を記録する一方で、四球の数は2021年は4個、2022年はここまでわずか2個と、極めて少なくなっている。
その結果、2022年における四球率、IsoD(出塁率と打率の差)、BB/K(四球数を三振数で割って求める)といった、打席での忍耐力を示す指標における数値は、いずれもかなりの低水準に。とりわけ、四球率とIsoDに関しては、ある意味希少と形容できるほどの記録的な値に達している。
その一方で、長打率は2年続けて.400を超えている。万波選手は俊足の持ち主でもあり、三塁打の数は2021年には1本、2022年は既に2本。脚力を生かして貪欲に先の塁を奪う積極的な姿勢は、野手としての大きな強みだ。
また、今季は得点圏打率.289とシーズン打率を上回っており、勝負強いバッティングを見せている。打者としてはまだまだ粗さが目立つが、ピンチを迎えてより慎重な投球を心がけるはずの相手投手に対して、幾度となく痛打を浴びせているのは興味深い。ここまで紹介してきた成績にも示されている、並外れた思い切りの良さが、その勝負強さを支えている可能性はありそうだ。
当然ながら、四球を多く選び、かつ三振数を少なく抑えるほうが、打者としての評価は高くなる。だが、万波選手の場合は、持ち前の豪快な打撃スタイルと、打撃と走塁の双方で発揮される思い切りの良さが、長打力と勝負強さという特徴につながっているとも形容できる。まさに型破りといえる常識外れの成績の数々は、万波選手が持つ魅力を、端的に示すものでもあるだろう。
得意・不得意がハッキリ。厳しいコースの球を捌く器用さも
次に、万波選手が2022年に記録している、投球コース別の打率を確認しよう。
ど真ん中のボールに対して非常に高い打率を残しており、甘い球を逃さずに捉えていることがわかる。また、ストライクゾーンの外角に来た球に対しても、一定以上の強さを発揮していることが示されている。192cmという恵まれた体格を利したリーチの長さを、上手く打撃に生かしているといえよう。
また、右打者にとっての内角低めにあたるコースに対して、ストライク、ボールの双方において、打率.400を超える数字を残しているのも特徴的だ。通常であれば厳しいコースとされるインローの捌きが抜群に上手い点にも、万波選手の非凡な打撃センスが表れている。
その一方で、内角真ん中と高めに対しては打率.000と、一転して大の苦手としている。また、真ん中の高めと低めに関してもそれぞれ打率.143と、総じて得意・不得意がはっきりしているタイプの打者と考えられる。
とはいえ、得意なコースに来た際の爆発力は驚異的なものがあり、打者として明確なツボを有しているのは間違いないだろう。すなわち、万波選手の豪快な打撃スタイルは、こうしたコース別打率にも反映されているということだ。
投球コースと同様に、球種にも得手不得手が
最後に、万波選手が2022年に記録している、球種別の打率を紹介する。
カットボールに対して打率.400というハイアベレージを記録している点をはじめ、8つの球種のうち3球種に対して、打率.270以上を記録。シュートに対しても高い打率を残している。
しかし、速球とフォークに対しても打率1割台と、弱点もまた明白だ。それでも、先述したコース別打率においては、真ん中低めのボール球に対して、打率.273という数字を記録。今後は持ち前の長いリーチを生かして、フォークへの対応力を高められる可能性は十分にありそうだ。
また、パ・リーグには速球派の投手が多いため、ストレートを苦手としている状況を克服することができれば、さらなる成績向上にも期待が持てる。特に、リリーフ投手の場合は、速球とフォークを主体に投球を組み立ててくる投手が多くなってくる。この2球種への対応力が向上すれば、試合終盤の重要な局面においても、その勝負強さを存分に発揮できることだろう。
他にない豪胆な魅力を備えた、まさに「規格外」な存在
得意とする外角のボールやど真ん中の甘い球を早いカウントから打ちに行く豪快さに加え、インローの捌きや、得意とする球種の多さといった、非凡な対応力の高さも備える。球種・コースの双方で示された弱点の多さや、何よりも選球眼に大きな課題は残すものの、そうした欠点すらも万波選手の特色としてしまうほどの、突き抜けた魅力のある選手といえよう。
超がつくほどに積極的な打撃スタイル、恵まれた体格と身体能力、そして天性の打撃センスが合わさって生み出される力強い打棒は、まさに規格外と呼ぶに相応しいものだ。見る者を楽しませる選手としての資質を十二分に示す俊英のバッティングには、今後もますます注目が集まっていくことだろう。
文・望月遼太
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