2名の投手がタイトルを分け合った昨季に続き、今季も激戦の様相
6月が終了時点におけるパ・リーグの最多勝争いは、2勝差の中に6名の投手がひしめく争いとなっている。昨季は伊藤大海投手と有原航平投手がともに14勝を挙げて最多勝に輝いたが、今季も最後まで熾烈なタイトル争いが繰り広げられることになるかもしれない。
今回は、最多勝争いに加わっている投手たちの成績を簡潔に紹介するとともに、各投手が所属するチームの勝率や得点力などの数字を確認。今後のタイトル争いの展望を占っていきたい。(※成績は6月29日の試合終了時点)
現時点で6勝以上を挙げている6投手を筆頭として、多くの投手にチャンスがある状況
パ・リーグ球団に所属する投手の中で、5勝以上を記録している投手たちの顔ぶれは下記の通り。

伊藤投手がリーグトップの8勝を挙げ、モイネロ投手と隅田知一郎投手がそれに次ぐ7勝を記録。伊藤投手は2年連続の最多勝獲得に向けて順調に歩を進めており、モイネロ投手は7勝負けなしの勝率10割と支配的な投球を展開。隅田投手も自身初の2桁勝利を通過点とする勢いで勝ち星を積み上げ、この3名がタイトル争いをリードする状況となっている。
さらに、今井達也投手、九里亜蓮投手、曽谷龍平投手の3名が6勝を挙げ、リーグトップまで2勝差につけている。リーグトップの110奪三振を記録している今井投手、広島時代の2021年に続く両リーグでの最多勝獲得を狙う九里投手、昨季記録した自己最多の7勝に早くも並ぶペースで白星を挙げている曽谷投手と、いずれも今後の活躍が楽しみな存在だ。
現時点で5勝を記録している投手も7名控えているが、その中でも達孝太投手が6試合の先発で5勝、QS率100%、防御率0.64と圧倒的な投球を見せている点は注目に値する。菅井信也投手も8試合の登板で5勝を挙げており、ハイペースで白星を重ねている若き投手たちがタイトル争いのダークホースとなる可能性もありそうだ。
伊藤投手、モイネロ投手、今井投手の3名は、後半戦に白星のペースが向上していた
ここからは、6月終了時点で6勝以上を挙げている投手のうち、2024年以前にパ・リーグ球団に在籍していた5名の投手の、直近数年間における後半戦の投球に着目していきたい。
2024年の伊藤投手は交流戦までに記録した白星が5勝だったのに対し、交流戦後だけで9勝と白星を積み上げるペースが大きく増加。交流戦後の白星の数は、2021年が6勝、2022年が5勝、2023年が4勝と年々減少していただけに、積年の課題を克服してタイトルを獲得したという事実は、今季の展望を占ううえでも大きなプラス要素となっている。
また、モイネロ投手も昨季挙げた11勝のうち7勝を交流戦終了後に挙げており、先発転向1年目から夏場に強いことを証明していた。リリーフを務めていた時期には夏場に負傷離脱することも少なくなかったが、昨季は25先発で163イニングを投じるなど耐久性の面でも進化を遂げており、今季も後半戦にさらなる勝ち星を積み上げていきたいところだ。
隅田投手は2023年から2年続けて9勝と惜しくも2桁勝利に手が届いていないが、2023年は交流戦以降で7勝と、後半戦で多くの勝ち星を積み上げていた。しかし、2024年は交流戦後の15試合で5勝とやや白星のペースが鈍化しており、今季こそは前年と同じ轍を踏まずに最多勝争いに加わり続けられるか。
2024年の今井投手は8月10日の登板を終えた時点で4勝8敗と苦しい星勘定が続いていたが、シーズン最後の7試合で負けなしの6連勝を記録して2年連続の10勝に到達。その前年にあたる2023年にも7月以降だけで7勝を挙げるなど、かねてから終盤戦に強いだけに、序盤戦から勝ち星を積み上げている今季は、これまで以上の大勝ちにも期待できるはずだ。
曽谷投手はプロ2年目の2024年に7勝を挙げたものの、交流戦終了前の8試合で4勝を挙げたのに対し、交流戦終了後は12試合で3勝と白星のペースが大きく鈍化。今季は交流戦終了時点で6勝と前年を上回る成績を残しているだけに、後半戦も順調に勝ち星を積み上げて昨季からの成長を示したいところだ。
勝率1位の北海道日本ハムと、得点力に優れる福岡ソフトバンクが有利と言える
続いて、2025年のパ・リーグ各球団が記録している勝率と打撃成績について見ていきたい。

投手が白星を挙げるためには、登板した試合でチームが試合に勝利することが絶対条件となる。そのため、リーグ成績上位の球団、すなわち勝率が高いチームに所属している投手は、それだけ最多勝争いでも有利になると考えられる。その点、リーグ首位の北海道日本ハムに所属している投手たちには少なからず優位性があるといえよう。
チーム総得点に目を向けると、福岡ソフトバンクがリーグトップの263得点を記録しており、オリックスが同2位の257得点、北海道日本ハムが同3位の248得点となっている。投手が白星を挙げるには打線の援護も必要不可欠となるため、頭一つ抜けた得点力を誇る福岡ソフトバンクに所属する投手たちはやや有利な立場にあると言える。
オリックスと北海道日本ハムも一定以上の得点力を備えているだけに、両球団に所属する投手たちも比較的恵まれた立場にあると言えそうだ。一方、埼玉西武はリーグ最少の192得点と上位3球団から大きく水をあけられており、残るシーズンでは野手陣の奮起に期待したいところだ。
昨季は後半戦で9勝を挙げ、チームも好調な伊藤投手が最有力候補か
伊藤投手は前年に交流戦後だけで9勝を記録したことに加えて、北海道日本ハムが勝率と得点力の双方に優れている点も追い風であり、現時点では最有力候補と言えそうだ。また、モイネロ投手も前年の交流戦終了後に7勝を挙げており、福岡ソフトバンクがリーグトップの得点力を持つ点が強みで、自身初の最多勝を手にする可能性は十分にあるはずだ。
果たして熾烈を極める最多勝争いを勝ち抜き、栄冠を勝ち取るのはどの投手となるか。残るシーズンにおける各投手の投球と、後半戦で詰み上がる白星のペースに、今季はあらためて注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太