本拠地で行われた開幕カード3連敗や主力の故障で序盤は遅れを取るも、底力を見せ、2年連続のリーグ優勝、そして5年ぶりの日本一をつかんだ福岡ソフトバンクホークス。87勝52敗4分、勝率.626で締めた今季を、本記事では投手編、野手編に分けて振り返っていく。
モイネロ、有原航平、大関友久がタイトル獲得 4投手が2桁勝利到達
先発2年目のモイネロ投手は、24試合で12勝3敗、防御率1.46と今季も圧巻の成績を残し、2年連続2度目の最優秀防御率のタイトルを獲得。6月は6日の東京ヤクルト戦でNPB歴代3位タイ、外国人最多の18奪三振を記録すると、13日の横浜DeNA戦では9回3安打13奪三振1失点で完投勝利を挙げるなど4試合2勝0敗、防御率0.90、奪三振42で月間MVPに選ばれた。
また、パーソル CS パファイナルステージでは初戦に先発し、7回無失点と快投。連勝で王手をかけたチームはその後3連敗、3勝3敗で運命の6戦目を迎える。中4日で登板することとなったモイネロ投手だったが、7回93球3安打1失点と好投。MVPを受賞した。
開幕投手・有原航平投手は開幕戦では5回まで好投も、6回に一挙6失点し黒星スタート。続く登板も4回途中6失点と苦しい投球が続いたが、4月25日に8回5安打無失点で今季初勝利を挙げた。7月には4試合4勝0敗、防御率1.50の好成績で月間MVP賞をつかむなど、シーズン中盤に自身8連勝。26試合14勝9敗、防御率3.03で2年連続3度目の最多勝に輝いた。
24試合に登板し13勝5敗、防御率1.66、そして勝率.722で初タイトルとなる勝率第一位を手にした大関友久投手。5月17日の東北楽天戦での勝利を皮切りに自身9連勝をマークし、規定投球回もクリア、キャリアハイの成績でチームの中核を担った。6月12日の巨人戦では勝ち星にこそ恵まれなかったが、5回までパーフェクトピッチングを披露し、9回3安打2四球8奪三振無失点と好投した。
上沢直之投手は4月6日の埼玉西武戦で、6回無失点の投球を見せ、NPB復帰後初勝利。8月には、4試合で4勝0敗 防御率1.73をマークし、月間MVPを獲得した。1年目から規定到達、自身最多タイの12勝6敗、防御率2.74と「10勝カルテット」の一角としてチームを支え、優勝に大きく貢献した。
鉄壁の救援陣 藤井皓哉→松本裕樹→杉山一樹が勝利の方程式に
今季の福岡ソフトバンクの強さは、盤石のリリーフ陣にもあった。松本裕樹投手はシーズン初めから勝ちパターンの一翼として活躍し、4月8日のオリックス戦から15試合連続ホールド。計51試合に出場し、5勝2敗39H、防御率1.07、44ホールドポイントを挙げ、自身初タイトルとなる最優秀中継ぎ賞を獲得した。
こちらも自身初となる最多セーブのタイトルを受賞した杉山一樹投手は、不調のオスナ投手に代わり、6月からクローザーに抜擢。痺れる場面での登板も、奪三振率11.89の高い奪三振能力でチームの勝利を守った。7月に7つ、8月には9つのセーブを挙げタイトル争いに加わると、9月も8セーブを積み重ね、今季最終戦でトップタイの31セーブに到達。ポストシーズンも含めチーム最多の75試合に登板、大きく貢献した。
タイトル獲得にはいたらなかったが、藤井皓哉投手も勝利をつないだ救援陣の一人だ。今季初登板は3月29日、延長10回同点の場面で登板するも、決勝打を浴び悔しいスタート切った藤井投手。しかし、その後はしっかりと修正し、勝ちパターンに戻ると、5月から14試合連続無失点と躍動する。シーズン最終盤に腰痛により離脱となったが、51試合に登板し2勝3敗19H2S、奪三振率13.50、防御率1.44とブルペンを支えた。
その他にも、開幕直後は苦しんだものの、復帰した夏場以降は本来の投球を取り戻したヘルナンデス投手や、火消し、回またぎなどさまざまな役回りをこなし、自己最多の38登板を果たした尾形崇斗投手、5月にトレードで巨人から入団した大江竜聖投手など、勝ちパターン以外のリリーフ陣も奮闘。先発・ブルペンどちらも安定し、リーグトップの防御率2.39を残した。
2023年ドラ1・前田悠伍がプロ初勝利 若鷹が強い印象を残す
今季は若鷹も存在感を見せた。開幕ローテーション入りをつかんだ3年目・前田純投手は、序盤はなかなか白星がつかめなかったが、5月15日の埼玉西武戦で4回まで無安打無四球の投球。結果、7回103球2安打1四球5奪三振無失点で今季初白星を得た。さらに交流戦でも中日相手に、5回まで無安打投球、自己最長の8回を投げ切り2勝目。7月以降は一軍登板なく終わったが、来季は年間通して活躍できるか。
同じく3年目の松本晴投手は、救援投手として開幕一軍スタート。12試合連続無失点と結果を残し、先発へ活躍の場を移す。6月22日の阪神戦で今季先発初勝利を飾ると、続く7月3日の北海道日本ハム戦では、自己最長となる7回を投げ、7安打無四死球14奪三振1失点(自責点0)の快投を披露。最終的には29登板で6勝6敗2H、防御率2.76をマークした。
2023年ドラフト1位の前田悠伍投手は、今季はファームで6月度月間MVPを受賞するなど結果を残し、7月13日の東北楽天戦で一軍初登板。5回まで2安打と好投、6回裏に連打を浴びたもののトリプルプレーで無失点に。運も味方につけた前田悠投手はプロ初勝利を挙げた。その後の登板では思うような結果は出なかったが、飛躍への足掛かりをつくった。
5つの投手部門におけるタイトル受賞者を輩出した福岡ソフトバンク。3連覇を目指す来季は14勝を挙げた有原投手が退団するとみられ、先発陣の変化は気になるところだが、味全ドラゴンズから徐若煕投手を獲得した。来季も安定したピッチャー陣が、勝利をもたらすか。
文・根本葵
