後半戦は無傷の6連勝

2024年のメジャー挑戦を経て、今季から福岡ソフトバンクに加入した上沢直之投手。4月6日の埼玉西武戦で移籍後初白星を手にすると、先発ローテーションの軸として存在感を発揮し、最終的には自己最多タイの12勝をマーク。特に後半戦は9試合の先発で6勝0敗、防御率1.74と安定した投球を続けた。今回は、チームの優勝争いを支えた右腕の好投の要因にデータで迫ってみたい。
決め球としてフォークを多投

多彩な変化球を操る投球スタイルが特徴の上沢投手。2ストライクに追い込んだ状況での球種別投球割合を見ると、前半戦はカーブを中心にさまざまな球種を決め球として投じていた。しかし、後半戦はフォークの割合が47.1%と急上昇。同じ2ストライクの条件で渡米直前の3年間(北海道日本ハム時代)のデータを見ても、これほどフォークを決め球に使ったシーズンはなかった。では、なぜ今季の上沢投手はこの球種を選んだのだろうか。
フォークの改良で奪空振り率がアップ

上沢投手は、今季の途中からフォークの握りを変えたことを明言している。これまで投げていたフォークは球速が速く落差が小さいスプリット系のボールだったが、チームメートの藤井皓哉投手や杉山一樹投手から握りを教わり、落差を大きくしたという。同球種の平均球速を見ると、開幕直後は約140キロだったのが6月以降は135キロ程度となっており、ボールの性質が変わっていることが分かる。

ボールのスピードを遅く、変化を大きくすると打者に見送られやすくなる可能性もあるが、実際には打者が手を出す割合はそれほど下がらず、一方でスイング奪空振り率は約9ポイント上げることに成功した。前述の藤井、杉山両投手は、鋭く落ちるフォークで三振の山を築くピッチャーだ。彼らの技術を取り入れた上沢投手も「低めに投げれば絶対に空振りが取れる」と表現しており、確かな手応えと自信がうかがえる。
三振を奪える投手にモデルチェンジ

改良したフォークの効果は成績にもはっきりと表れた。後半戦は2ストライクに追い込んだ打席の半数近くで三振を奪い、被打率は.105と前半戦から1割以上も改善。2ストライクから許した長打は、前半戦の179打数で10本(うち本塁打が4本)あったのに対し、後半戦は114打数で二塁打2本のみと、相手打者にほとんどチャンスを与えなかった。

後半戦は57イニングで60個の三振を奪った上沢投手。奪三振率9.47は、伊藤大海投手や今井達也投手といった剛腕とも肩を並べる数字だ。上沢投手のNPB通算奪三振率が7.33であることを考えると、大きなモデルチェンジを遂げたといえるだろう。
「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第3戦では黒星を喫したものの、6回2/3で10奪三振を記録。「SMBC日本シリーズ2025」第2戦では4者連続の空振り三振を奪うなど、ポストシーズンでも印象的なピッチングを見せた。今回取り上げたフォークが開幕から威力を発揮し続けると、果たしてどのような成績が残るのか。来季も背番号10の活躍から目が離せない。
※文章、表中の数字はすべて2025年シーズン終了時点
文・データスタジアム
