強力な先発ローテーションの存在が、首位を走るチームの原動力となっている
現在リーグ首位に立っている北海道日本ハムが持つ大きな強みの一つに、質・量ともに充実した先発陣の存在が挙げられる。2025年に先発登板を経験した投手のうち、実に8名が防御率2点台以下。先発陣全体の安定感という面では、まさに群を抜く陣容といえよう。
今回は、北海道日本ハムの先発陣が2025年に記録している各種の指標に基づく、各投手の投球内容と全体的な傾向を紹介。ファイターズの先発陣が安定して試合を作っている理由について見ていくとともに、各投手のさらなる活躍にも期待を寄せたい。(※成績は6月16日時点)
8名の先発投手が与四球率2点台以下と、安定した制球力を有する
北海道日本ハムの主な先発投手が今年記録している、各種の投手指標は下記の通り。

奪三振率においては、揃ってイニング数を上回る奪三振数を記録している古林睿煬投手と北山亘基投手の数字が際立っている。それに加えて、伊藤大海投手と達孝太投手もそれぞれ8点台の奪三振率を残しており、本格派の右投手が多く存在する点は頼もしい要素だ。
その一方で、加藤貴之投手が奪三振率3.69、山崎福也投手が奪三振率4.25と、打たせて取る投球を持ち味とする左の技巧派投手も先発陣に名を連ねている。さまざまなタイプの投手がローテーションを構成していることも、対戦相手にとっては対策を難しくする要素の一つとなっている。
制球力に目を向けると、今回取り上げた8名のうち7名の与四球率が2点台以下と、どの投手も優れた制球力を持ち合わせていることがうかがえる。とりわけ、加藤投手の与四球率は0.84と、9イニングを投げた際に出す四球数の平均が1個未満という卓越したコントロールを発揮。また、達投手の与四球率も1.01と、それに比肩する抜群の制球力を示している。
伊藤投手、山崎福也投手、金村投手、古林投手の4名も与四球率が1点台と非常に安定した制球力を示しており、北山投手の与四球率も2点台と優秀な水準に達している。四球で自滅するケースが非常に少ないという点が、投球内容の安定化に一役買っているのは間違いなさそうだ。
「奪三振が多く、与四球が少ない」という、理想的な傾向
三振を四球で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」という指標に関しても、細野投手を除く7投手が全て3.00以上の数字を記録している。
一般的にK/BBは3.50以上であれば優秀とされているだけに、大半の先発投手がその水準に近い数字を記録している点は驚異的といえよう。伊藤投手のK/BBが6.42、古林投手が同5.50、そして達投手は同8.67と、3.50を優に上回る数字を記録している投手が多く存在している点も見逃せないポイントだ。
セイバーメトリクスの分野でK/BBが重視される理由として、奪三振と与四球は投手自身がコントロールできる要素であり、外的要因に左右されにくいことが挙げられる。その点、今季の北海道日本ハムの先発陣は、「奪三振が多く、与四球が少ない」という、まさにセイバーメトリクスにおける理想的な傾向を示していることになる。
チーム全体の守備力も、先発陣の好投に結びつく要素となっている?
ここからは、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」について見ていこう。被BABIPは奪三振や与四球とは異なり、投手自身にコントロールできる要素が少ないことから、運に影響されやすい指標であると考えられている。
今回取り上げた8名の投手たちは、いずれも被BABIPが一般的な基準値とされる.300を下回っている。通常であればこの数字は運に恵まれていることを表すものであるが、近年はNPB全体で投高打低の傾向が強まっていることにより、チーム全体のBABIPが基準値の.300を下回るケースも少なくはない。
実際の数字を見ても、2025年のパ・リーグにおいて被BABIPが.300を上回っているチームはオリックスのみで、残る5チームは全て.280以下となっている。そして、北海道日本ハムがチーム全体で記録している被BABIPは.261と、リーグで最高の数字が記録されている。
被BABIPという指標は、チーム全体の守備力を図るうえでも有用とされている。それだけに、この数字はファイターズの守備陣が広い守備範囲をカバーし、ヒットを防いでいることを示唆するものにもなっている。
その結果として、1イニングに出した走者数の平均を示す「WHIP」に関しても、全投手が1.25以下という優秀な水準に到達している。その中でも、伊藤投手、達投手は1イニング平均で許した走者の平均数が1人未満と抜群の安定感を示しており、各投手がハイレベルなピッチングを展開していることの裏付けとなっている。
安定感抜群の先発陣は、ペナントレースを勝ち抜くうえで大きな強みとなり得る
今季のファイターズ先発陣は、奪三振が多く、四球が少ないという理想的な傾向を示しており、投手陣を盛り立てる野手陣の守備力もあって被安打も少ない。各投手が優秀な成績を残している理由が、今回取り上げた各種の指標にも示されていると言えよう。
ハイレベルな投球内容を示していた古林投手が故障離脱を余儀なくされたのは痛手だが、今こそ層の厚い先発陣の真価が問われる状況とも考えられる。さまざまなタイプの投手が顔を並べる強力な先発ローテーションが、今季のペナントレースの趨勢を左右する要素となる可能性は十分だ。
文・望月遼太