3年目の昨季は初めて規定投球回をクリア

2021年ドラフト1位で埼玉西武に入団した隅田知一郎投手。昨季は26試合に先発してリーグ2位の179回1/3を投げ、自身初めて規定投球回に到達。チーム3位の9勝を挙げるなど、年間を通して安定感のある投球を続けた。特に注目したいのが与四球率で、昨季の1.76はルーキーイヤーの22年と比べて約半分の数字だった。今回は、隅田投手がどのように与四球を減らし、ピッチングの質を高めていったのかをデータで探っていく。
少ない球数で有利なカウントに


与四球を減らすためにまず重要なのは、ストライクを先行させることだ。23年までの隅田投手は初球のストライク率が50%台中盤でリーグ平均を下回っていたが、昨季は前年比で一気に7.5ポイントも向上させ、リーグ平均を上回る64.1%をマーク。2球で2ストライクと追い込む打席も大幅に増え、投手有利のカウントで打者と勝負することができていた。
追い込んだ後の配球にも変化が

打者を追い込んだ後の投球にも変化があった。2ストライク時の球種別投球割合を見ると、球速の速いストレートやカットボールの割合が徐々に減少し、フォークやチェンジアップの割合が増加。2種類の落ちるボールを決め球として積極的に投じるようになっていた。なお、この2球種は左右どちらの打者にも使っている。

そして、隅田投手はこれら2球種をリーグ平均以上の高い割合でボールゾーンに投じていた。この投球は打者が手を出してもヒットになりにくく、ストライクが先行していれば1球見送られてもまだ投手にとっては余裕がある。2ストライク時の被打率は2球種とも1割台で、ボールゾーンを効果的に使えたことが好成績につながったと考えられる。
球数減でより長いイニングを消化

打者に対して主導権を握るピッチングが奏功し、1イニングあたりの投球数は前年より2球ほど少ない14.74をマーク。パ・リーグの規定投球回到達者では北海道日本ハム・加藤貴之投手、福岡ソフトバンク・有原航平投手に次ぐ3番目の少なさだった。1試合あたりの平均投球回も大きく伸び、24年6月12日の広島戦では99球で完封勝利を挙げる「マダックス」も達成している。
今季も4月19日の福岡ソフトバンク戦で今季初完封をマークするなど、開幕から4連勝の活躍。計31イニングで与えた四球はわずか3つと、安定感は昨季以上に高まっているようだ。チームの上位進出、そして自身初の2ケタ勝利に向けて、背番号16は着実に歩みを進めている。
※文章、表中の数字はすべて2025年4月26日終了時点
文・データスタジアム