防御率はリーグ1位。「打力」から「投手力」で勝つチームへ【埼玉西武ライオンズ2022:投手編】

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LIONS Season Review 2022(C)PLM
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 昨季最下位からの優勝を目指した埼玉西武だったが、9月にまさかの失速。それでも近年稀に見る混戦を脱け出し、3位でシーズンを終えた。本記事では投手編、野手編に分け、埼玉西武の2022シーズンを振り返っていく。

 2022シーズンは、投手陣の活躍が目立った。チーム防御率は2.75とパ・リーグ1位の成績。「投手王国」を形成し、3点差以内での勝利は51試合、また2桁失点を許した試合はなく、僅差のリードで守り勝つ試合が多かった。

頼もしさを増す高橋光成。真のエースへ

 今季から選手会長を務めるこの男が投手陣を引っ張った。1年間チームで唯一ローテを守り、チームでただ1人規定投球回に到達。シーズン中盤は勝ち星から遠ざかるも、チームが優勝争いをする9月以降は、感情を表に出して投球するシーンも目立ち、気迫のピッチングを披露した。

 特に印象的なのが9月20日の東北楽天戦。7連敗中と重苦しい雰囲気で試合を迎えるも、これぞエースと言わんばかりの粘りの投球を見せる。8回130球、8安打9奪三振無四死球1失点で11勝目を挙げ、活気を取り戻したチームはこの試合を含め以降5連勝。一気にCS進出を決めた。負ければずるずると下位に転落しそうな試合だっただけに、起爆剤となったこの日の投球は、「エース」そのものだった。

 最終的には、防御率2.20(4位)12勝(2位)勝率.600(3位)128奪三振(4位)、26先発(1位タイ)175.2投球回(2位)21QS(2位)と軒並みリーグ上位の成績を残し、キャリアハイの12勝を挙げた。

苦労人・與座海人が初の2桁勝利&自身初完封も達成

 2017年にドラフト5位で入団したアンダースロー右腕の道のりは決して平坦ではなかった。1年目はケガに泣き、2018年オフにトミー・ジョン手術を断行。育成契約を結び、1年間リハビリに励んだ。2020年に支配下登録に返り咲いて2勝を挙げるも、満足した成績を残せず。しかし、昨季10月に一軍昇格を果たした際には、3試合に先発登板すると、いずれの試合でも5回以上を投げ自責点1以内に抑える好投を披露し、飛躍が期待されていた。

 そして満を持して臨んだ今季は、3月31日(対北海道日本ハム戦)に先発登板。敗戦投手になるも、二軍での調整期間を経た後、4月28日に救援で今季初勝利を手にする。すると翌週の5月5日(千葉ロッテ戦)では、6回無失点で先発登板での今季初白星。以降は安定した投球で順調に白星を積み重ね、9月11日に5回無失点の投球で10勝目を挙げた。

 試合後のヒーローインタビューでは感極まり涙するシーンも。「ファンのみなさんの声援が力になっています」と感謝を口にした。さらに、7月30日には福岡ソフトバンクを相手に自身初の完封勝利を達成している。11月に侍ジャパンにも初選出されたサブマリンの活躍に、来季も目が離せない。

他の先発投手も奮闘

 新加入左腕のエンス投手も好投を続けた。左打者に打ち込まれる試合もあったが、球威のある球を武器にシーズン通じて安定した投球を披露。9月4日に6回無失点の好投で勝利投手となり、埼玉西武の外国人投手では、2019年のニール投手以来となる2桁勝利を挙げた。チームの連敗を5度止めるなど貢献度も高く、柘植世那選手や古賀悠斗選手ら若手捕手と組む試合も多かった。また、本拠地・ベルーナドームで7勝1敗、防御率1.80と相性の良さも話題に。残留が決まった来季も、安定した投球に期待したい。

 松本航投手も奮闘した。防御率3.19、7勝6敗と成績はやや物足りなさが残るものの、チーム3位の先発登板数、同2位の投球回で先発陣の柱に。8月11日の試合では、敗戦投手になったものの、9.2回を投げる粘投を披露。連戦が続く夏場のブルペン陣を休ませた。

 シーズン中盤からは今井達也投手が合流。7月14日に6回1失点の投球で今季初勝利を挙げると、途中離脱もありながら、最終的に防御率2.41、5勝1敗の成績を残した。中でも、チームが熾烈な優勝争いを演じる中登板した8月26日の対オリックス戦では、9回144球10奪三振2失点の熱投を披露。6四球を出しながらも粘り強く投げ続け、チームに勝利を呼び込んだ。

最優秀中継ぎ2投手を擁する鉄壁救援陣

 今季のライオンズを語るうえで避けては通れないのは、リリーフ陣の活躍だろう。昨季連続試合無失点記録を樹立した平良海馬投手や、過去にセーブ王を獲得した増田達至投手を筆頭に、水上由伸投手、今季から中継ぎに挑戦した本田圭佑投手が飛躍した。

 宮川哲投手や森脇亮介投手らも安定した投球を披露し、強力ブルペン陣を形成。長年の課題だった中継ぎ陣の整備に成功した形となった。平良投手と水上投手は35HPで「最優秀中継ぎ」のタイトルを獲得。数多くの勝利に貢献した。

<主な救援陣の今季の成績>
・増田達至投手
52試合 2勝5敗5H31S 防御率2.45
・宮川哲投手
45試合 1勝0敗1S1H 防御率2.59
公文克彦投手
18試合 0勝0敗7H 防御率0.00
佐々木健投手
37試合 3勝0敗5H 防御率3.03
・森脇亮介投手
43試合 1勝1敗10H1S 防御率1.72
・本田圭佑投手
45試合 4勝2敗20H 防御率1.97
・平良海馬投手
61試合 1勝3敗34H9S 防御率1.56
・水上由伸投手
60試合 4勝4敗31H1S 防御率1.77

好スタートも悔しいシーズンとなった新人左腕たち

 2021年のドラフト1位・隅田知一郎投手、同2位・佐藤隼輔投手は、プロ初先発初登板で初勝利を挙げる好スタートを切ったが、以降は勝ち星に恵まれなかった。来季はこの悔しさを晴らすような活躍を見せられるか。

 他にも30試合登板のうち13試合で先発した平井克典投手や、27試合で防御率2.56のボー・タカハシ投手など、つぶぞろいな投手陣。来季も投手力を武器に、上位争いを繰り広げる獅子の姿が目に浮かぶ。

文・谷島弘紀

埼玉西武2022シーズンレビュー:野手編
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