山川穂高が打線をけん引。若手が台頭も外野と1番打者を固定できず【埼玉西武ライオンズ2022:野手編】

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LIONS Season Review 2022(C)PLM
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 投高打低と言われた2022シーズン。かつて「獅子おどし打線」と称された破壊力は鳴りを潜め、得点力不足に悩まされるシーズンとなった埼玉西武。チームの得点数は464得点でリーグ5位、チーム打率の.229はリーグ最下位の数字で、投手陣が好投しても打線が援護しきれない試合が目立った。

 それでも昨季まで不調だった、主砲・山川穂高選手が完全復調。ケガなどで主力不在の危機も若手の踏ん張りで乗り越え、徐々に順位を上げて7月に今季初の単独首位に立つと、8月まで優勝争いに食い込み、最終的に3位でシーズンを終えた。

不敗神話まで生まれた。打点&本塁打の2冠を獲得した山川穂高

 今季打線を引っ張ったのは山川選手だろう。直近2年間は悔しいシーズンとなり、巻き返しを誓った今季はシーズン序盤から絶好調。開幕から4戦で4本塁打を放つなど、上々のシーズンの滑り出しを見せた。

 しかし、3月30日の試合で走塁中に足を負傷。約3週間の離脱を強いられたものの、調子を落とさず、復帰後も本塁打を打ち続けた。特に5月は好調で、23試合に出場し、打率.321、9本塁打18打点の活躍。5月まで山川選手が本塁打を放った試合はチームが全勝し、「不敗神話」まで生まれた。6月26日には、通算200号本塁打を達成。通算697試合目での達成は、日本人選手最速の快挙に。シーズン終盤は調子を落とすも、7月以降も4番打者として活躍を続け、最終的に41本塁打、90打点で2冠に輝いた。

主力不在の危機も若手が補う

 今季は昨季と打って変わり、打順が流動的だったのが特徴だろう。その中で、主力不在の危機を若手選手を中心に補い、上位争いに踏みとどまってきた。

 まず、捕手のポジションだ。正捕手・森友哉選手がケガにより4月3日に出場登録を抹消。その間に、柘植世那選手、牧野翔矢選手、ルーキーの古賀悠斗選手が代わりにマスクをかぶった。

 その中でも大きなインパクトを残したのが牧野選手だ。今シーズンは開幕一軍をつかみとると、4月6日にプロ初先発初出場を果たす。初打席で相手先発・岸孝之投手のカーブを逆方向へ弾き返し、初安打をマーク。4月9日の試合では、7投手を巧みにリードし、12回を無失点に抑え、守備面でもアピールした。6月にトミー・ジョン手術を受け、来季開幕からの出場は難しくなったが、正捕手不在時の活躍は、首脳陣の脳裏に焼き付いたはずだ。

 さらに5月7日には、源田壮亮選手が自打球の影響で、出場登録を抹消。キャプテンでもあり、守備の要である源田選手の離脱は、大きな衝撃をもたらした。しかし、そのチームの緊急事態を救ったのは、高卒ルーキー・滝澤夏央選手だ。滝澤選手は育成ドラフト2位で今季入団した18歳。ファームでコンスタントに試合に出場し続けると、5月13日に支配下登録を勝ち取る。そして同日の試合に「2番・遊撃手」でスタメン出場を果たし、第3打席で快足を飛ばしてプロ初安打となる内野安打を放った。

 守備機会も危なげなくこなし、源田選手に負けず劣らずのグラブさばきを披露。翌14日の試合では、同点適時三塁打&プロ初打点を含む2安打2打点の活躍をみせ、チームの勝利に貢献した。支配下登録時の会見で「スピードを活かした守備と、泥臭いプレーっていうのが自分のプレースタイルだと思うので、本当に必死になってがんばりたいと思います」と話したように、躍動感あふれる必死なプレーで多くのファンを虜にした。

長年の課題である「1番打者」と外野は固定できず

 主力の離脱はなんとかしのいだが、2020シーズンから不在の「1番打者」は今季も埋まらなかった。

 シーズン序盤は、オープン戦から好調だった鈴木将平選手が1番打者に座った。「1番・中堅」で初の開幕スタメンをつかみとると、開幕2戦目でマルチ安打の活躍。4試合連続安打を放つなど存在感をみせたが、5月2日に登録を抹消され、ファームでの調整が続いた。

 それでも7月半ばから再び一軍に帯同すると、コンスタントに安打を放ち、7月29日の試合では、攻撃の起点となる3安打の活躍。新型コロナ陽性判定により、再びファームでの調整を余儀なくされるも、8月後半以降は外野の一角として存在感を放ち、最終的にいずれもキャリアハイの58試合出場で53安打、打率.250の成績を残した。また、シーズン中盤以降は外崎修汰選手が「1番」に定着しかけたものの、固定には至らず。リードオフマンの不在は、得点力不足の原因にもなった。

 外野のポジションも定まらなかった。シーズン序盤は鈴木選手、愛斗選手がスタメンを勝ち取るも、打撃不振やケガなどで定位置獲得まではいかず。愛斗選手はバッドを短く持つなど、打撃面で試行錯誤をみせ、5月には月間打率3割を超える活躍を見せるなど、今季は自己最多の121試合に出場。飛躍のきっかけをつかみ、来季こそは打撃での好不調の波を抑え、定位置奪取へ期待がかかる。

今季も芸術的な守備でファンを魅了した「とのげん」コンビ

 鉄壁の二遊間は今季も健在だった。源田壮亮選手と外崎修汰選手の同級生コンビ「とのげん」は、そろって三井ゴールデン・グラブ賞を獲得。(源田選手は5年連続5度目、外崎選手は2年ぶり2度目)2人そろっての受賞は、2020年以来2度目となった。今季も数々の打球をさばき、幾度もチームのピンチを救う好守備を披露。来季以降も、ライオンズの二遊間は安泰だろう。

シーズン終盤に失速も3位に踏みとどまる

 9月以降は厳しい戦いの連続に。9月1日まで単独首位に立つも、連敗などで下位へ転落。これまでチームを引っ張ってきた主砲・山川穂高選手が夏以降ペースダウン、さらには好投を続けてきた投手陣にも疲労の色が見え始め、投打がかみ合わない試合が増えた。

 そんな苦しい状況でも、上位に踏みとどまるべく「獅力」をつくして戦った。9月6日には、2019年以来となる3者連続本塁打を記録。7連敗中で迎えた9月20日の東北楽天戦では、山川選手のチーム44イニングぶりの適時打で6試合ぶりに先制をすると、シーズン最終盤から合流した金子侑司選手らの活躍もあり、連敗を止める。その後は連勝し、敵地で迎えた9月28日の東北楽天戦で、平沼翔太選手が決勝の1号ソロを放ち、「パーソル CS パ」への進出を決めた。

 山川選手の好不調の波がチームの成績に直結していた今季。来季は「3番・捕手」を務めていた森友哉選手がオリックスに移籍する。山川選手の前後をどの選手に任せるか、空いた正捕手のポジションを誰が奪うのか。若手の台頭に期待したい。

文・谷島弘紀

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