パーソルCSパ オリックス制覇の理由は、打線の積極性とリリーフ陣の配球変化にあり

パ・リーグ インサイト

オリックス・バファローズ 森友哉選手【写真:球団提供】
オリックス・バファローズ 森友哉選手【写真:球団提供】

劣勢をはね返した打撃陣のデータに注目

パーソル CS パ オリックス 点差状況別の打撃成績(C)データスタジアム
パーソル CS パ オリックス 点差状況別の打撃成績(C)データスタジアム

 千葉ロッテとの決戦となった「2023 パーソル クライマックスシリーズ パ」のファイナルステージを、アドバンテージの1勝を含めた対戦成績4勝1敗で制し、3年連続の日本シリーズ進出を決めたオリックス。4試合すべてが3点差以内の決着となるなど手に汗握る試合が続いたが、その中で光ったのが劣勢時における打線の反発力だ。今回のファイナルステージではビハインドの状況でチーム打率.310、OPS.946と好成績をマークした。第1戦は初回に3点を先行されるも、中盤に攻勢を仕掛けて逆転勝利。敗戦を喫した第2戦でも試合を2度ひっくり返すなど、粘り強い攻撃を見せた。

逆転劇を生んだのは積極性にあり

パーソル CS パ オリックス 点差状況・カウント別のスイング率(C)データスタジアム
パーソル CS パ オリックス 点差状況・カウント別のスイング率(C)データスタジアム

 オリックス打線の打席内でのアプローチを調べると、同点または劣勢時のスイング率に大きな特徴が見られた。点差状況が同点・ビハインドの場面では、カウント1ストライク時に投じられたストライクゾーンの投球に対して90%台と高いスイング率を記録。特に逆転勝利を収めた第1戦では同条件の14球すべてでスイングを仕掛けており、追い込まれる前に勝負しようという意図が見てとれた。レギュラーシーズンにおける同じ点差状況・カウントでのストライクゾーンスイング率は70%台であることから、短期決戦を戦ううえで、普段とは異なる積極的なアプローチに打線全体で取り組んでいたと考えられる。

森友哉に杉本裕太郎……日替わりで生まれた打のヒーロー

パーソル CS パ オリックス 主な打者の同点・ビハインド時の打撃成績(C)データスタジアム
パーソル CS パ オリックス 主な打者の同点・ビハインド時の打撃成績(C)データスタジアム

 同点・ビハインド時の個人打撃成績を見てみると、第2戦で一時逆転となる2ランを含む2安打3打点をマークしたセデーニョ選手、第4戦で先制2ランを放った森友哉選手、そしてシリーズMVPに輝いた杉本裕太郎選手とクリーンアップの3人が好成績。また、第3戦では若月健矢選手が決勝打を含む3安打の活躍を見せるなど、それぞれの試合でチームを救う打のヒーローが生まれた。

走者を出しても流れを渡さないリリーフ陣も光った

パーソル CS パ オリックス 救援投手 走者人数別の投手成績(C)データスタジアム
パーソル CS パ オリックス 救援投手 走者人数別の投手成績(C)データスタジアム

 拮抗(きっこう)した展開で粘りを見せたのは打撃陣だけではない。今ステージを制した要因の一つとして欠かせないのが、リリーフ投手陣の踏ん張りだ。リリーフ陣が走者を置いた場面で許した安打は1本のみで、2人以上のランナーを抱えたのも1度だけ。唯一敗れた第2戦こそ最終回に逆転負けを喫したものの、その他の3試合では継投に入った後のイニングで相手チームにリードを与えることなく、チームに勝利を呼び込んだ。

相手の攻勢を封じた配球の変化

パーソル CS パ オリックス 救援投手 走者有無別のストレート投球割合(C)データスタジアム
パーソル CS パ オリックス 救援投手 走者有無別のストレート投球割合(C)データスタジアム

 そんなリリーフ陣のピッチングで注目したいのが走者の有無による配球の変化だ。ファイナルステージでは6投手がリリーフ登板したが、走者なしの場面でのストレートと変化球の投球割合は基本的にレギュラーシーズンと同程度。その中で山岡泰輔投手、阿部翔太投手に関してはストレートの割合がシーズンから10%以上増えており、全体としては比較的速球主体の傾向だった。

 続いて走者ありの場面を見てみると、一転してストレートの割合が減少していることが分かる。いずれの投手もレギュラーシーズンでは走者の有無による投球割合の大きな変化は見られなかったが、CSでは山崎颯一郎投手や山岡投手のスライダー、守護神・平野佳寿投手のフォークなど、走者を置いた場面で変化球の割合が大きく増加していた。ファイナルステージにおける千葉ロッテ打線の走者あり時のボールゾーンスイング率は37.2%で、これはシーズンと比べて約7%高い数値。特に変化球では46.0%とボール球の約半数でスイングを誘うことに成功していた。たとえ走者を許しても、大胆な配球の変化で揺さぶることにより、相手の攻勢を封じていたといえる。

「関西ダービー」を制して2年連続の頂点へ

 初戦でエース・山本由伸投手が立ち上がりから失点を重ねるなど、オリックスとしてはまさかの展開で始まった「2023 パーソル クライマックスシリーズ パ」。それでも、積極的な攻撃で劣勢をはね返した打線と、相手に勢いを与えないリリーフ陣の活躍でファイナルステージを突破。リーグ3連覇を果たしたチームの地力を見せつける戦いぶりだった。そして、いよいよ10月28日には今季最後の大一番である「SMBC 日本シリーズ 2023」が開幕する。セ・リーグ王者の阪神と激突する「関西ダービー」でもオリックスらしい全員野球で勝利をつかみ、2年連続の日本一を成し遂げたい。

※文章、表中の数字はすべて2023年クライマックスシリーズ終了時点

文・データスタジアム編集部

関連リンク

「関西ダービー」頂上決戦 セ・リーグ王者の顔ぶれ
パーソル CS パ優勝記者会見 中嶋聡監督一問一答
パーソル CS パ MVPは杉本裕太郎、パーソル賞は紅林弘太郎
1995年の打点王、イチロー、田中幸雄、初芝清…3名のその後は?
茶野篤政はNPB史上初・育成1年目で開幕スタメン 2023年ルーキーの活躍【オリックス編】

記事提供:

パ・リーグ インサイト

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE