
トップから3勝の間に15名がひしめく大混戦を経て、新たな戴冠者が生まれるか
今季のパ・リーグの最多勝争いは、トップから3勝の間に15名の投手がひしめく大混戦となっている。2024年以降は2年連続で伊藤大海投手と有原航平投手が最多勝のタイトルを分け合ってきたが、今季は新たなタイトルホルダーが誕生する可能性も十二分にありそうだ。
今回は、今季のパ・リーグで8勝以上を記録している面々の顔ぶれと、各投手の成績を確認。さらに、今シーズンの最多勝を争っている投手たちが記録する可能性がある希少な記録の数々についても紹介するとともに、今後のタイトル争いの展望も行っていきたい。(※記録は8月27日の試合終了時点)
すでに2桁勝利を挙げている3名の投手を筆頭に、多くの実力者がタイトルを争う
加藤貴之投手とエスピノーザ投手が現時点でリーグトップの11勝を記録し、ハーラーダービーの先頭に立っている。平良海馬投手、前田悠伍投手、大津亮介投手がリーグ2位の10勝を挙げてそれに続き、八木彬投手、北山亘基投手、武内夏暉投手、ジャクソン投手の4名が、いずれも9勝と白星2つの差で先頭集団を追いかけている。
さらに、隅田知一郎投手、高橋光成投手、九里亜蓮投手、上茶谷大河投手、松本晴投手、伊藤投手の6名が8勝を記録し、トップまで3勝差とまだ射程圏内と言える状況にある。過去2シーズンの結果が示す通り、今季も複数の投手がタイトルを獲得する可能性も大いに残されている。
非常に稀な記録の数々が達成される可能性も
続いて、今季の最多勝争いを通じて達成される可能性がある記録について見ていこう。加藤貴投手と前田悠投手はいずれも8月27日の時点で規定投球回に到達しておらず、規定投球回未達で最多勝を獲得する可能性がある。規定投球回に到達せずに最多勝を獲得したケースはわずか3例、パ・リーグに限れば2020年の石川柊太投手のみという非常に希少な記録だ。
また、現在9勝の八木投手は今季の先発登板が一度もなく、リリーフとしての登板のみで最多勝争いに食い込んでいる。NPBにおいて、先発登板なしで最多勝に輝いたケースは1988年の伊東昭光投手(当時・ヤクルト)が唯一の例であり、パ・リーグでは過去に一度も記録されていないだけに、八木投手がタイトルを獲得すれば歴史に残る偉業となり得る。
また、現在10勝を挙げている前田悠投手は今季に入ってから黒星を喫しておらず、現時点で勝率10割をキープしている。また、八木投手も9勝0敗と同じく勝率10割を維持しており、2桁勝利を挙げて無敗の投手が複数誕生する可能性が残されているという点も興味深い。
最高勝率の条件を満たしたうえで勝率10割を達成した投手は、1981年の間柴茂有氏(当時・日本ハム)と、2013年の田中将大投手(当時・東北楽天)の2名のみ。今季のパ・リーグでは田中投手以来13年ぶり3度目の大記録が生まれる可能性もあるだけに、今後の前田悠投手と八木投手の登板試合に注目する価値は大いにありそうだ。
そして、現在8勝を挙げている九里投手は広島時代の2021年に最多勝のタイトルを獲得しており、今季最多勝のタイトルを獲得すればセ・パ両リーグでの戴冠となる。両リーグで最多勝を獲得した投手は、長いNPBの歴史において一人も存在しない。すなわち、九里投手が逆転でタイトルを獲得すれば、前人未到の記録を達成することになるということだ。
得点力と勝率の双方で、Aクラスの球団は投手にアドバンテージをもたらす
最後に、今季のパ・リーグにおける各球団の勝率と打撃成績について紹介する。
福岡ソフトバンクが561得点、北海道日本ハムが487得点を挙げているのに対し、埼玉西武は419得点、オリックスは415得点、東北楽天、千葉ロッテはいずれも300点台となっている。今季のパ・リーグでは、球団ごとの得点力に少なからず差が生じていると言えそうだ。
また、現時点で3位の北海道日本ハムと4位のオリックスのゲーム差は7と、勝率という面でもやや差が開きつつある。打線の援護とチームが勝利する頻度という2つの観点において、Aクラスのチームが投手に対して順当にアドバンテージをもたらしていると考えられる。
打率と得点数がどちらもリーグトップの福岡ソフトバンク、リーグ最多の144本塁打を記録している北海道日本ハムの2チームが、打線の援護という点では有利な環境といえよう。埼玉西武とオリックスは主力選手の故障が続出しているだけに、終盤戦においてどのようなメンバーで打線を組めるかが、投手を援護するうえで重要な要素となってきそうだ。
熾烈な最多勝争いを勝ち抜いた先に、希少な記録達成の瞬間が待ち受ける?
所属球団の得点力が高く、チーム勝率も一定以上の水準にある福岡ソフトバンクの前田悠投手と、北海道日本ハムの加藤貴投手の2名は、今後のタイトル争いでも有利と言える。また、同じく福岡ソフトバンクに所属する大津投手と上茶谷投手と松本晴投手、北海道日本ハムの北山投手と伊藤投手も、今後のタイトル争いにおいて浮上を果たす可能性がありそうだ。
エスピノーザ投手と九里投手がタイトル獲得を果たせるかは、今後のチーム状態にも少なからず影響を受ける可能性がある。埼玉西武は平良投手が10勝に到達しているが、武内投手、隅田投手、高橋光成投手の3名も2桁勝利を挙げた経験を持つだけに、チームの奮闘に併せてタイトル争いでもさらなる躍進を果たしたいところだ。
リリーフのみでタイトル獲得というパ・リーグ史上初の快挙を目指す八木投手、パ・リーグへの移籍1年目で奮闘するジャクソン投手も含め、混戦模様が続く最多勝争い。多士済々の戦いを勝ち抜いて栄冠を勝ち取るのはいったい誰になるのか、今後の各投手の投球に注目してみる価値は大いにあることだろう。
文・望月遼太