今季のパ・リーグでは既に6名の投手が20ホールドポイント(HP)以上を記録しており、最優秀中継ぎ投手賞をめぐる争いは混戦模様となっている。上位4名はタイトル獲得経験を持たないことも相まって、自身初戴冠を果たす投手が現れる可能性が高い点も興味深い。
今回は、今季のパ・リーグにおいてHPで上位10以内に入っている投手たちの顔ぶれと、各投手の活躍ぶりについて確認。指標が示す各投手の特徴についてあらためて紹介していくとともに、今後のタイトル争いの展望についても考えていきたい。(※記録は7月26日の試合終了時点)
抜群の制球力を示す椋木蓮と、高い奪三振率を誇る2名の投手がタイトルを争う
今季のパ・リーグで、HP数がリーグ10位以内に入っている投手たちの顔ぶれは下記の通り。

椋木蓮投手がリーグトップの27HPを記録しており、篠原響投手が24HP、鈴木昭汰投手が 23HP、甲斐野央投手が21HPと僅差でそれに続いている。さらに、島本浩也投手、松本裕樹投手が20HPで5位タイに入っており、田中正義投手、オスナ投手が18HPで7位、ウィンゲンター投手が9位、八木彬投手が10位に位置している。
続いて、HP数でリーグトップ10に入っている投手たちが残している、各種の指標について見ていこう。

椋木投手はプロ1年目の2022年に先発として4試合で奪三振率10.70を記録したが、トミー・ジョン手術から復帰した2024年以降は奪三振率が低下。その一方で、今季は34.1イニングで与えた四球がわずか4個、与四球率1.05、K/BB6.75という驚異の制球力を発揮し、WHIPも0.87と1イニング平均で出した走者を1人以内に抑える抜群の安定感を示している。
それに対して篠原投手、甲斐野投手は、投球回を上回る奪三振数を記録、鈴木投手も32.2イニングで32奪三振を記録している点が特徴的だ。鈴木投手はこれまで投球回を上回る奪三振数を記録したことは一度もないため、奪三振率8.82と見事な数字を残している今季は、防御率0.73を記録した2024年以上に打者を圧倒する投球を展開しているという見方もできそうだ。
19歳の篠原投手は前年に一軍デビューを果たしたばかりだが、同年はわずか2試合の登板ながら奪三振率10.29と非常に高い数字を記録していた。登板数が増加した今季も奪三振率9.60とハイレベルな成績を残しており、一軍の舞台でも大いに持ち味を発揮してセットアッパーとして大ブレイクを遂げつつある。
また、鈴木投手は与四球率3.31、篠原投手は与四球率3.60と、高い奪三振率に加えて一定の制球力を備えている点も強みとなっている。奪三振が多く、与四球を一定以下に抑えるというセイバーメトリクスにおける理想的な傾向は、投手としての安定感にも直結する。
奪三振率が向上した甲斐野央と田中正義をはじめ、多くの投手が鎬を削る
甲斐野投手は与四球率が5.65と制球面では課題を抱えているが、奪三振率は10.06と非常に高い数字を記録。2024年に埼玉西武へ移籍して以降の奪三振率は2年続けて7点台とやや低下していたが、今季はキャリア通算の奪三振率9.38という高水準に違わぬ力強い投球を取り戻しており、セットアッパーとクローザーの両方で大車輪の活躍を見せている。
島本投手は阪神時代の2019年には63試合に登板して防御率1.67、奪三振率9.10と抜群の数字を残したが、2024年以降は2年連続で奪三振率が3点台に落ち込んでいた。移籍1年目の今季も同4.28と同様の傾向が出ているが、通算の与四球率は2.59、今季の与四球率も2.96と一定以上の制球力を備えており、打たせて取る投球にシフトして結果を残している。
田中投手は同僚の島本投手とは対照的に、今季は奪三振率9.38、与四球率1.99とどちらも素晴らしい数字を記録。K/BB4.71、WHIP0.88と指標面の成績は優秀で、防御率3.13という数字以上に優れた投球内容であることを裏付けている。通算の奪三振率は8.90、通算の与四球率は2.81とキャリアを通じて同様の傾向にあり、投手としての能力の高さが示されている。
松本裕投手は2022年から4年続けて投球回を上回る奪三振数を記録していたが、今季は奪三振率7.36と例年に比べるとやや低下している。だが、与四球率は1.47とキャリア平均の3.32よりも遥かに優秀であり、K/BBも5.00と制球力を大きく向上させたことが、例年同様の安定した投球を実現している大きな理由の一つと考えられる。
オスナ投手は奪三振率9.51、与四球率1.29、K/BB7.40と圧巻の成績を残し、故障と不振に苦しんだ過去2年間の苦戦を払拭し、セットアッパーとして再起を果たしつつある。
ウィンゲンター投手は故障で出遅れたものの、今季は登板した16試合全てでホールドを記録し、防御率0.00を維持する離れ業を披露。奪三振率9.39、WHIP0.78と指標面でも優秀だ。八木投手は奪三振率こそ5.93ながら与四球率2.20と安定した制球力を発揮し、15ホールドポイントの半数以上をリリーフでの白星によって積み上げる特異な働きを見せている。
勝負の夏場を乗り越え、中継ぎとしての勲章を手にするのはどの投手になるか
驚異の制球力を武器に安定感抜群の投球を見せる椋木投手が、現時点でタイトル獲得の最右翼となっている。また、鈴木投手と篠原投手も高い奪三振率と一定の制球力を備えており、今後も安定した投球を続ける可能性は高い。甲斐野投手は現在チーム事情で抑えを務めていることもあり、最優秀中継ぎのタイトル争いからは一歩後退となりそうだ。
島本投手と田中投手も7月は月間防御率が悪化しているだけに、昨季の最優秀中継ぎ投手賞に輝いた松本裕投手が巻き返しを見せる可能性も残されている。また、運に左右される要素が大きいとされる「被BABIP」が基準値の.300を上回っている篠原投手は、今後の運の揺り戻しが期待できる側面があるという点も見逃せないところだ。
夏場を迎えてシーズンが佳境に向かっていく今後の試合において、より多くのHPを積み上げていくのはどの投手となるか。自身初タイトルを手にする投手が現れる可能性も大いに残されている熾烈な争いの行方に、今季はぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
