起用回数は信頼度の証? パ・リーグ代走ランキング

パ・リーグ インサイト 成田康史

2020.4.7(火) 18:00

福岡ソフトバンクホークス・周東佑京選手【撮影:丹羽海凪】
福岡ソフトバンクホークス・周東佑京選手【撮影:丹羽海凪】

 野球選手にとって、スタメンに選ばれ、ゲームの終盤まで出場し続けることは目標の1つとなるだろう。一方で、「代打」や「守備固め」のように、試合終盤に登場するその道のスペシャリストたちも、野球における欠かせないピースである。

 今回は、そのスペシャリストの中でも「代走」に焦点を当てる。昨季、福岡ソフトバンク・周東佑京選手の活躍によって脚光を浴びた走塁のスペシャリストというポジションだが、パ・リーグ各球団ではどのような選手がその役割を担っていたのか。6球団からそれぞれ、昨季の代走起用数上位5名をピックアップし、その傾向を見ていきたい。

【埼玉西武】
1位:水口大地選手…15回
2位:熊代聖人選手…13回
3位:愛斗選手…7回
4位:木村文紀選手…6回
5位:佐藤龍世選手…5回
5位:永江恭平選手…5回


 昨季パ・リーグ2連覇を果たした埼玉西武では、水口大地選手の起用数が最も多かった。水口選手は2018年こそ5回に終わったものの、17年には28回、16年には13回と、プロ通算で61回の代走起用を経験している。今季も、試合終盤の勝負所で背番号「0」が塁上を駆け抜けてくれそうだ。

 また、昨季出場試合数を大きく伸ばした愛斗選手は、代走起用数でも3位にランクイン。5位の佐藤龍世選手とともに、今季はレギュラーポジションをうかがう活躍に期待したい。

【福岡ソフトバンク】
1位:周東佑京選手…47回
2位:高田知季選手…18回
3位:釜元豪選手…14回
4位:上林誠知選手…12回
5位:福田秀平選手…8回


 ひと際目立つのは、周東佑京選手の47回という数字だろう。リーグ2位の千葉ロッテ・岡大海選手の25回と比較しても、20回以上の差をつけてリーグトップの起用回数を記録した。昨年11月に行われたプレミア12での、二盗、三盗を連続成功させたシーンも記憶に新しい。今季は自慢の快足を武器に、さらなる出場機会を狙っていく。

 そして福岡ソフトバンクの特徴として、代走起用の回数が他チームと比べて多いことが挙げられる。2位・高田知季選手で18回、3位・釜元豪選手で14回という数字は、他球団であればトップでもおかしくないものであった。工藤公康監督による控え選手の絶妙な起用が、チームを3年連続日本一に導いたとも言えそうだ。

【楽天】
1位:辰己涼介選手…10回
2位:オコエ瑠偉選手…9回
3位:山崎幹史選手…8回
4位:小郷裕哉選手…6回
4位:三好匠選手…6回(トレード)


 楽天では、2018年のドラフト1位ルーキー・辰己涼介選手が10回の起用でトップに立った。開幕から一軍入りを果たした辰己選手は、4月に3回の代走起用を経験すると、その後は先発に定着。約3カ月間スタメンでの出場が続いたものの、8月に入ると4回の代走起用を経験するなど控えに回る機会が増えた。今季は、この回数を減らすことが、レギュラー獲得への物差しとなる。

 その他では、シーズン途中に広島へトレードとなった三好匠選手は、短い集計期間にも関わらず6回の代走起用を記録。一方で、トップの辰己選手でも10回と、パ・リーグを見渡しても代走起用の少なさが目立つ結果となった。

【千葉ロッテ】
1位:岡大海選手…25回
2位:三木亮選手…18回
3位:細谷圭選手…13回
4位:加藤翔平選手…12回
5位:三家和真選手…4回


 移籍2年目のシーズンとなった岡大海選手が、リーグ全体でも周東選手に次ぐ2位となる25回を記録した。昨季はそれに伴って盗塁数も増加。2015年に記録したキャリアハイ・18盗塁に迫る13個の盗塁を決めた。年々存在感を増す韋駄天は、今年もその脚でチームに貢献する。

 2位の三木亮選手はシーズンを通して様々な役割をこなす中、開幕から間もない4月、そしてCS争いを繰り広げた9月に多くの代走起用があった。キャリアハイの盗塁数を記録したバイプレーヤーは、縁の下の力持ちとなってチームを支えていたと言えそうだ。

【北海道日本ハム】
1位:杉谷拳士選手…14回
2位:中島卓也選手…12回
3位:平沼翔太選手…5回
4位:石井一成選手…4回
4位:谷内亮太選手…4回


 杉谷拳士選手、そして中島卓也選手は、ともに2018年シーズンから打撃成績を落とす結果に。控えに回る機会も増え、代走起用数もそれに応じて増えることとなった。新たな戦力の台頭もある中で、今季はその数を減らしていきたいところ。

 一方で、3位、4位には伸び盛りの選手たちが並んだ。平沼翔太選手は、昨季自己最多となる73試合に出場。プロ初本塁打も放つなど、今季の飛躍に向けて確かな経験を積んだ。石井一成選手は、18年には1割台となった打率を.224とし、出場試合数も増加させた。ともに内野のレギュラーポジションを狙う存在だけに、今季はこのランキングにも大きな変動があるかもしれない。

【オリックス】
1位:佐野皓大選手…16回
2位:後藤俊太選手…8回
2位:小田裕也選手…8回
4位:安達了一選手…5回
5位:鈴木昂平選手…4回


 オリックスでは、野手転向2年目のシーズンとなった佐野皓大選手が1位に輝いた。キャリアハイとなる68試合に出場した昨季は、持ち前の身体能力を生かして12盗塁を記録。プロ初本塁打も放ち、野手としての素質の高さを見せつけた。プロ入り後に野手転向を果たした苦労人は、今季さらなる飛躍を遂げることができるか。

 同率の2位には、し烈な外野手争いに臨む2選手がランクイン。ジョーンズ選手の加入でポジション争いが激しくなる中、俊足を武器とする後藤駿太選手、小田裕也選手、さらにはランキング1位の佐野選手はどのようにアピールしていくか、注目だ。

 パ・リーグ6球団の代走起用数を見てみると、「伸び盛りの若手」が起用されているケースと、「俊足が武器のバイプレーヤー」が活躍しているケースの2パターンが中心となっていることが分かった。今季は、各球団の代走勢力図がどのように変わっていくのか。「代走起用回数」の変化を観察することで、将来を担う存在の台頭をいち早く見つけられるかもしれない。

文・成田康史

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