西口直人、西垣雅矢ら中継ぎ陣が奮闘見せた1年 岸孝之は通算400登板達成【東北楽天ゴールデンイーグルス2025:投手編】

パ・リーグ インサイト

2025.12.20(土) 11:00

東北楽天ゴールデンイーグルス・西口直人投手(左)西垣雅矢投手(右)【写真:球団提供】
東北楽天ゴールデンイーグルス・西口直人投手(左)西垣雅矢投手(右)【写真:球団提供】

 三木肇監督のもと始動した2025年の東北楽天は、67勝74敗2分、勝率.475、パーソル パ・リーグ4位でシーズンを終えた。4年連続4位と悔しい結果に終わった一方で、多くの若手選手が頭角を表し、来季に向けた収穫も多かった1年とも言えるだろう。今回は、東北楽天投手陣の2025シーズンを振り返っていく。

3年連続リーグワーストだったチーム防御率はリーグ4位タイの3.37とやや良化

 チーム防御率は昨季まで3年連続リーグワーストだったが、今季は、リーグ4位タイの3.37。同じく昨季リーグワーストだった失点もリーグ3位と、昨季までの課題が少しずつ改善されつつある。

 しかし、今季規定投球回に到達した投手は0人。なかでも昨季2桁勝利を挙げた早川隆久投手は2勝8敗、防御率4.35、藤井聖投手は6勝7敗、防御率3.20に終わるなど、先発陣に課題が残った。しかし、その一方で、西垣雅矢投手はリーグ2位の63試合に登板すると、西口直人投手はトミー・ジョン手術を乗り越え、52試合で防御率1.07を記録。昨季から中継ぎに転向した藤平尚真投手は今年も安定した投球を披露するなど、中継ぎ陣の活躍が目立った。

最年長・岸孝之は通算400試合先発登板を達成

 チーム最年長の岸孝之投手は、規定投球回には到達しなかったものの、チーム2位の109イニングを消化。今年も衰え知らずの粘り強いピッチングでチームを支えた。4月3日埼玉西武戦、今季初登板となった試合では、7回1失点で勝利投手となり、ルーキーイヤーから19年連続の勝利をマーク。さらに、8月26日の福岡ソフトバンク戦では、6イニングを投げて1失点(自責点0)と試合をつくり、自身通算170勝に到達。同試合でNPB通算22人目となる400登板を達成した。

 また、6月12日中日戦、7回無失点の好投でチームの連敗を止めた後のヒーローインタビューで残した「こんなもんじゃないぞイーグルス」という言葉も話題に。後日、この言葉がデザインされたタオルが発売されると、チームの終盤戦ポスターにも用いられるなど、プレー以外の部分でも最年長としてチームをけん引した。通算200勝まであと「30」。来季の活躍にも期待がかかる。

2年目・古謝樹も奮闘 チームトップタイの7勝をマーク

 今季チームトップの白星を挙げたのは2年目・古謝樹投手だった。昨季ドラフト1位で入団した古謝投手は、今年2月の春季キャンプ、背中の張りで離脱。それでも、オープン戦で実戦復帰すると、開幕カード2戦目の3月29日オリックス戦で、今季初先発のマウンドに上がった。同試合では白星つかずも5回2安打無失点の好投を見せると、4月6日千葉ロッテ戦では、9回103球3安打無失点で自身初の完投・完封勝利を挙げている。

 また、9月26日の福岡ソフトバンク戦では、6回途中1失点と試合をつくり、キャリア初の100投球回に到達。5勝8敗だった昨季と比較すると、今季は19試合で7勝7敗と、大きく成長した姿を見せた。来季は、中継ぎ陣の負担を減らすためにも、7回まで投げ切る試合を増やしたいところだ。

西垣雅矢がチームトップの63試合に登板 

 4年目・西垣雅矢投手は、中継ぎとしてチームトップの63試合に登板した。ルーキーイヤーから昨季までの3シーズンは一軍に定着することができなかった西垣投手だが、今季は開幕一軍スタート。5月25日北海道日本ハム戦では、同点のまま迎えた延長11回表に登板すると、2死から四球を出したものの無安打無失点に抑え、プロ初ホールドをマークした。

 以降も安定した投球を続け、終盤には勝ちパターンに。63試合を投げて、7勝1敗、14ホールド、21ホールドポイント、防御率1.96と大躍進の1年を過ごした。また、7勝は古謝投手に並んでチームトップの成績だ。シーズンを通して、西垣投手の熱投が試合の流れを変え、チームに勝利を呼び込んだと言えるだろう。

西口直人がトミー・ジョン手術からの復活劇

 9年目・西口直人投手は、右ひじの手術から復活を果たした。2023年9月にトミー・ジョン手術を受けた影響で、昨季は育成選手としてリハビリに励んだ西口投手。そして今季2月に支配下復帰すると、順調な調整ぶりを見せ、開幕一軍メンバーに名を連ねた。

 5月13日千葉ロッテ戦、同点で迎えた9回表、5番手としてマウンドに上がると、2三振を含む3者凡退に封じる。すると直後の9回裏、チームは渡邊佳明選手の犠飛でサヨナラ勝利。西口投手は1003日ぶりの勝利を手にし、ヒーローインタビューでは「うれぴー!」と喜びを爆発させた。

 以降も安定した投球でブルペンを支え、7月6日には開幕から26試合連続無失点の球団記録を樹立。同8日に今季初失点も、結果として52試合で3勝1敗、31ホールド、防御率1.07と圧倒的な成績を残し、見事な復活劇を見せた。

中継ぎ転向2年目・藤平尚真は29試合連続無失点で球団新記録樹立 

 昨季から中継ぎに転向した藤平投手は、今季もフル回転の活躍を見せ、自己最多の62試合に登板した。シーズン最終戦の10月5日には、2番手として登板すると1イニングを無安打1奪三振無失点に抑え、球団新記録となる29試合連続無失点を記録。結果としては62試合を投げて、2勝2敗、21ホールド、防御率2.11で9年目のシーズンを終え、シーズンを通してブルペンを支えた。

加治屋蓮は新天地で躍動 内星龍も先発・中継ぎの両起用をこなす

 新加入の加治屋蓮投手も躍動した。二軍で開幕を迎えたものの、4月上旬に昇格。5月27日埼玉西武戦では、同点の7回裏を3者凡退で切ると、直後に味方が勝ち越し、移籍後初勝利を手にした。夏場にはやや調子を落としたものの、12年のキャリアを生かした修正力で、ケガ無く移籍初年度を走り抜け、52試合で2勝1敗、18ホールド、防御率3.50を記録した。

 5年目の内星龍投手は、先発、中継ぎの両方で起用された。昨季、本格的に先発へ転向した内投手だったが、中継ぎ陣の離脱などを理由に今季から中継ぎに再転向。先発や先発投手が早いイニングで降りた試合でのロングリリーフなどの起用もあったが、見事応えてみせた。来季の起用法はまだ明らかになっていないが、どんな起用であっても、今季の経験を生かした好投を見せてくれるだろう。

ルーキー2投手も堂々の一軍デビュー

 ドラフト3位・中込陽翔投手、ドラフト5位・江原雅裕投手は一軍デビューを果たしている。

 中込投手は5月4日オリックス戦、9回表11点リードの場面でマウンドへ。2死から連打でピンチを招きながらも、無失点に抑え、大学の先輩にあたる田中貴也選手とのバッテリーで記念すべきプロ初登板を終えた。

 江原投手は開幕カードの3月28日オリックス戦、8回裏のマウンドに上がると、堂々の無失点投球でデビューを飾る。9月15日千葉ロッテ戦では、同点のまま迎えた延長12回表、1死2塁のピンチを招きながらも、最後は併殺に打ち取り、試合は12回裏へ。ここで小郷裕哉選手に球団通算2000号となるメモリアルアーチが生まれ、江原投手はプロ初勝利を手にした。

昨季2桁勝利の早川隆久&藤井聖は苦難の1年に 来季は復活なるか

 冒頭でも述べたように、昨季それぞれ自身初の2桁勝利を収めた早川投手、藤井投手は苦しい1年となった。

 早川投手は、4月4日千葉ロッテ戦、7回1失点で今季初勝利も、そこから約2カ月半白星から遠ざかるなど本来の力を発揮できず、7月4日の登板を最後に一軍登録を抹消。以降は二軍での調整が続いた。9月3日に再昇格し、同日の埼玉西武戦に先発も、3回途中6失点と先発としての役割を果たすことができず。登板数、白星数ともにキャリア最小で5年目のシーズンを終えた。なお、9月末に左肩後方関節唇クリーニング術を受け、試合復帰まで4〜5か月を要することが発表されている。

 藤井投手は、4月8日北海道日本ハム戦で今季初先発も、5回2失点で勝敗つかず。以降も、安定した投球をなかなか披露することができず、5月半ばまで白星から遠ざかる苦しいシーズン立ち上がりとなった。

 5月16日福岡ソフトバンク戦で今季初勝利も、勝ち星は伸び悩み、9月に先発した4試合のうち3試合では、いずれも4回持たないなど、悔しいシーズンに。その一方で、福岡ソフトバンク戦は5試合に登板して3勝1敗、防御率1.52と鷹キラーとして役割を発揮している。

 来季の上位浮上には、両投手の復活が欠かせないだろう。

則本昂大は海外FA権の行使も、ドラフトでは即戦力投手を複数獲得で投手力向上へ

 イーグルス一筋13年、チームのために腕を振り続けてきた則本昂大投手が海外FA権の行使を表明。ハワード投手、ヤフーレ投手もわずか1年で退団となった。

 しかし、今年のドラフト会議では、1位に花園大学・藤原聡大投手、2位に早稲田大学・伊藤樹投手、6位に第96回都市対抗野球大会で橋戸賞(最優秀選手賞)を受賞した王子・九谷瑠投手を獲得するなど、即戦力投手を複数獲得している。また、前田健太投手の加入も決まっている。来季は投手力のさらなる向上が見込まれる東北楽天、オープン戦からし烈なローテーション争いが見られそうだ。

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