「日本での生活を心から楽しんでいます」
そう笑顔で話すのは、楽天イーグルスの主砲・ボイト選手だ。昨年7月に入団すると、合流初日にあいさつ代わりの一発で鮮烈なNPBデビューを飾り、結果的にはチーム最多の13本塁打をマーク。「トウホク サイコー!」と流ちょうな日本語で締めるお立ち台が恒例になるなど、今や東北のファンに愛される、チームに欠かせない助っ人だ。今回は、そんなボイト選手に自身のルーツや日本での生活について語ってもらった。
始まりは“Tボール” マーク・マグワイアに魅了された幼少期
ミズーリ州東部に位置するセントルイスで生まれ育ったボイト選手のルーツは、4歳の頃に始めたTボールにある。Tボールとは、野球やソフトボールに似た競技で、ピッチャーはおらず、ティースタンドに置いたボールを打つ競技だ。そこで自身のポテンシャルに気づいたボイト選手は、地元の野球チームで本格的にスキルを磨いた。
ボイト選手が幼い頃は、当時カージナルスに所属し、現在アスレチックスの選手育成担当特別補佐を務めるマーク・マグワイア氏が、セントルイスのヒーローだったそう。そして、ボイト選手もまた、マグワイア氏のプレーに魅了された少年の一人だった。
「彼は私のアイドルでした。ポスター、野球ボール、記念品、バット……ありとあらゆるグッズを持っていましたね。マグワイアのバット『ビッグ・スティック』も持っていて、兄弟と一緒に庭でウィッフルボールをしたり、野球場に行ってそれを振り回したりしていました。彼のレベルには到底及びませんが、私のプレースタイルも彼に憧れてつくり上げたものです」
こうして、カージナルスファンとして育ったボイト選手は、2017年、憧れのカージナルスのユニフォームに身を包み、足しげく通ったブッシュ・スタジアムでメジャーデビューを迎えた。
「本当に最高でしたね。カージナルスのファンとして育って、そのカージナルスでメジャーデビューできたんですから。キャリア通算2本目か3本目のホームランは、本拠地ブッシュ・スタジアムの『ビッグ・マック・ランド(マグワイア氏の愛称にちなんで設けられたレフトスタンドの看板エリア)』に飛び込んだんです。あれは本当に感慨深かったですね。セントルイスは野球が盛んな街なので、私の野球愛が育まれたのは、間違いなくあの街でした」
当時を思い出しながら、懐かしそうに語ったボイト選手。マグワイア氏の背中を追いかけてプロを目指していた当時のボイト選手のように、ボイト選手のプレーに憧れを抱き、プロを目指して懸命に練習に励む東北の子どもたちも多いことだろう。そんな子どもたちに向けて、自身の経験を踏まえた上で、こうアドバイスを送る。
「私がここまで来ることができたのは、とにかくハードに努力してきたからです。大切なのは、自分を律して打ち込むこと。それは、ただバットを振ったりノックを受けたりすることだけではありません。自分の体のケアや栄養管理、そういったあらゆる面が含まれます。細かな積み重ねが大切なんです」
2020年ア・リーグ本塁打王も苦戦した日米野球の違い

2020年、新型コロナウイルスの影響で短縮シーズンになったものの、ア・リーグの本塁打王に輝くなど、十分な実績を引っ提げて楽天イーグルスに入団したボイト選手だが、1年目の昨季について「最初は苦戦しましたし、慣れるまでに時間がかかりました」と振り返る。
特に「投手のクイックモーションの速さ」に苦戦したそうで、「アメリカでは、ピッチャーはランナーの動きをそこまで気にしませんが、日本では盗塁やバント、ヒットエンドランが多いんです」と、日米のプレースタイルの違いに苦しんだことを明かした。しかし、ボイト選手は、それを「新たな気づきになった」とポジティブに捉えている。
「“三振か長打か”という今のメジャーリーグのスタイルに対して、日本は”古き良き野球”に近いと感じますし、それが、野球をより楽しくさせてくれました。アメリカだと、練習も自分のルーティンを個々にこなしますが、日本はチーム全体で動きます。バントやヒットエンドランのように、自分の役割を果たすことが求められるので、チームプレーの側面が間違いなく強いですし、データだけの世界ではないんです。それが“家族”のような一体感を生んでいて、新鮮で心地いいですね。すごく気に入っています」
また、野球に限らず、日本の文化もとても気に入っているという。
「野球のレベルも想像以上に高かったですが、文化も素晴らしいし、何よりすごく安全です。家族に対しても、チームが手厚くサポートしてくれて本当に助かっています。日本で経験を積むのは本当に素晴らしいことですし、多くの外国人選手が日本に留まるのも納得ですよ」
シーズン途中加入ながら、優れた適応力とコミュニケーション能力でチームに溶け込んだボイト選手。オフは、とにかくたくさんのトレーニングに取り組みながら、友人や親戚、そして家族とできるだけ長い時間を一緒に過ごしたといい、頬を緩ませながら「4月には家族が日本に来る予定なんですが、本当に楽しみです。やっぱり、家族が恋しいですから」と語った。家族の支えを受け、万全の状態で来日2年目のシーズンを迎える。
後編へ続く
インタビュー・竹林慎太朗
文・後藤万結子
