CSの勝敗を分けた今井達也の初回。先制打の裏に今季抱え続けていた課題

中島大輔

2019.10.10(木) 23:04

3回途中6失点で降板した埼玉西武の今井達也投手【撮影:丹羽海凪】
3回途中6失点で降板した埼玉西武の今井達也投手【撮影:丹羽海凪】

 8対6という打撃戦になった「パーソル CS パ」ファイナルステージ第2戦で、福岡ソフトバンクを優位に立たせ、埼玉西武に重くのしかかったのが初回の1点だった。

「初球から100%で」意気込みを語った若獅子の立ち上がり

「相手チームの流れでゲームを進めないようにしたいです。そういった意味で初回から全力で、1球目から100%の力で行きたいと思っています」

 前日、そう話していたのは埼玉西武の先発・今井達也投手だ。レギュラーシーズン中から初回に不安定さを露呈することがあり、とりわけ短期決戦における先制点の重要性をわかっていた。

 対して第2戦目の試合前、福岡ソフトバンクの工藤公康監督は相手先発の今井投手についてこう話している。

「満遍なくではないんですけど、(今井投手から)打っている選手がいます」

 埼玉西武のアドバンテージを含めて1勝1敗で迎えた第2戦。福岡ソフトバンクの先頭打者・牧原大成選手が初球を振ると、センター前にポテンと落ちるヒットで幕を開けた。真ん中高めの153km/hのストレートで、今井投手にとって決して悪いボールではなかった。

好相性の今宮健太に犠打のサイン。大一番でも見せた堅実な攻撃

 ラッキーな形で先頭打者が出塁した福岡ソフトバンクの工藤監督は、幸運を確実につかみにいく。打席には2番・今宮健太選手。今季、今井投手に対して10打数5安打という相性を考えると強行も考えられるなか、工藤監督は送りバントのサインを出した。

 今宮選手は初球をしっかり投手前に転がし、1死2塁。福岡ソフトバンクはシーズン中と同じように、走者が出たらしっかり送って先制点をとりにいく形でチャンスを作った。

先頭に出塁を許した今井達也。今季序盤から抱えていた課題が顔を覗かせる

 一方、今井投手はプレイボールからわずか2球でピンチを迎え、うまくリズムに乗れなかった。「イニングの先頭打者をアウトに取れなかったので、苦しいピッチングになってしまいました」

 今井投手が今季序盤から抱える課題が、大一番でも顔を覗かせた。走者を出すと体の回転が横振りになり、リリースポイントが一定せず、ストレートがシュート回転し、変化球が抜けてしまうのだ。

 3番・柳田悠岐選手の一塁ゴロ、4番・デスパイネ選手の四球で2死1,3塁となり、打席には3試合振りのスタメンとなった中村晃選手が向かう。「チャンスで回ってくると思いました」と、チームのいい流れを感じながら打席に入った。

 初球からストレートが2球続けて抜け、2ボール。3球目は内角を狙ったスライダーが外角に抜けてストライク。そして4球目、内角を目掛けたスライダーが真ん中に甘く入ると、中村晃選手はライト前に先制タイムリーを弾き返した。「球種はあまり考えていなかったです。(来た球を打つ意識?)そうですね」

(C)PLM
(C)PLM

 いい形で先制した福岡ソフトバンクは2回に今宮選手の犠牲フライでリードを広げると、3回に高谷裕亮選手、デスパイネ選手のタイムリーで2点を追加。そして中村晃選手がライトに2ランを放ち、試合の流れを大きく引き寄せた。

 埼玉西武が試合中盤から見せた追撃を継投で逃げ切り、福岡ソフトバンクが8対6で勝利。通算2勝1敗とし、3年連続の日本シリーズ進出へ一歩抜け出した。

◇2019パーソルCSパ「勝負を分けた1打席」バックナンバー
CS初戦の勝敗を分けた8回表の継投と代打。平良海馬に“あの”場面を聞いた

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