主力の離脱相次ぐも新戦力が台頭。牧原大成は育成初の首位打者【福岡ソフトバンクホークス2025:野手編】

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2025.12.28(日) 17:00

左から柳町達選手、牧原大成選手、周東佑京選手【写真:球団提供】
左から柳町達選手、牧原大成選手、周東佑京選手【写真:球団提供】

 序盤は主力のけがや不調で苦しんだものの、最終的にはリーグトップのチーム打率.257、551得点を記録し、パーソル パ・リーグ連覇を果たした福岡ソフトバンク。野手陣の活躍を振り返っていく。

牧原大成は育成初首位打者 盗塁王・周東佑京は走攻守でチームをけん引

 育成出身選手で初の首位打者に輝いた牧原大成選手。3・4月は打率.230と苦しいスタートとなったが、5月以降は調子を上げ、8月には打率.385、18打点3本塁打で月間MVPを獲得した。セカンドの守備ではゴールデン・グラブ賞、外野でも度々好守を見せた。125試合に出場し、自身初の規定打席到達。418打数127安打、打率.304、5本塁打、49打点と飛躍の一年を過ごした。

 選手会長として2年目のシーズンを迎えた周東佑京選手は、主に1番で起用された。昨季に手術を受けた左ひざに不安を抱えながらも、開幕戦をマルチ安打と好スタートを切る。以降も好調を維持し、球団記録に並ぶ開幕19試合連続安打をマーク。しかし4月下旬に死球を受け右腓骨を骨折、離脱を余儀なくされた。

 5月20日に一軍復帰し、7月には月間打率.313の好成績を残すと自慢の足で13盗塁をマークする。守備でもけがの影響を感じさせず、9月2日のオリックス戦ではダイビングキャッチで1点を死守。攻守で欠かせない存在であったものの、9月末に再び死球の影響で抹消となり、シーズンを終えた。96試合で打率.286、35盗塁で3年連続4度目の盗塁王、2年連続となるベストナイン、ゴールデン・グラブ賞も獲得した。

柳町達は初のタイトル獲得 野村勇&川瀬晃の活躍も光る

 主力の離脱は痛手だったが、柳町達選手は今季チーム最多となる131試合に出場。開幕一軍を逃すも、近藤健介選手の離脱を受けて4月1日に昇格。昇格当初は4月23日に本塁打を含む3安打2打点をマークし、これをきっかけに調子を上げると、打線の中軸も任されるようになる。交流戦では打率.397で首位打者に輝き、MVPを獲得した。

 リーグ戦に戻ってからは6試合連続無安打、7月は打率.203と調子を落としたものの、徐々に立て直し、9月には打率.337を記録。131試合で打率.292、6本塁打50打点、出塁率.384をマークした柳町選手。シーズン終盤には牧原大選手との首位打者争いを見せ、惜しくも敗れたが、自身初の最高出塁率、ベストナインと2つのタイトルを獲得した。

 野村勇選手は開幕一軍入りも、序盤はベンチスタートが続く。それでも4月11日に決勝打となる2年ぶりの本塁打を放つと、5月1日にはスタメン初出場。5月6日には自身初となる1試合4安打を達成、以降も先頭打者本塁打や決勝本塁打を放つなどチームに勢いを与えた。

 遊撃、三塁をはじめ内野すべてのポジションを守り、安定した守備でも貢献。シーズン後半も調子を落とすことなく完走し、規定打席にはわずかに届かなかったが、キャリア最多の126試合413打席、打率.271、チーム2位となる12本塁打、18盗塁と好成績を残した。

 川瀬晃選手は5月2日の千葉ロッテ戦、後に優勝会見で小久保裕紀監督が「大きなターニングポイントになった」と語った一打を放った。2点を追う9回裏、2死から1点差に追い付いた場面。2死満塁から代打サヨナラ打で連敗を止め、低迷するチームに上昇のきっかけを与えた。

 5月20日の北海道日本ハム戦では、伊藤大海投手から決勝打となるプロ初本塁打をマーク。102試合で224打席、打率.263、2本塁打23打点の成績を残した。来季はスタメン出場の機会を増やしていきたいところだ。

中村晃は主力不在で低迷するチームを先導

 主力・ベテランの離脱が相次いだチームのなかで、中村晃選手は中心選手として低迷するチームを支えた。開幕カードで近藤選手が離脱し、4月1日に今季初のスタメン入り。2安打を放つなど今季初勝利に貢献した。5月以降は不調の山川穂高選手に代わり4番を務めることも多く、8月26日の東北楽天戦では、3号ソロを放ち通算1500安打を達成した。

 スタメンを外れた試合でも、代打として健闘。8月20日の埼玉西武戦では勝ち越しの二塁打、9月2日のオリックス戦では同点打を放った。さまざまな場面で経験値の高さを発揮し、優勝に尽力した。

けがに苦しんだ栗原陵矢は終盤に活躍

 栗原陵矢選手は、開幕直前で戦線から離脱。4月17日に今季初出場でマルチ安打、22日のには1号ソロ含む3安打を放つ。しかし5月は月間打率.132と苦しみ、なかなか状態が上がらず。7月上旬には、再び右脇腹痛により抹消された。

 8月末に復帰し、復帰後初打席で適時打を放つと、その後も好調。9月18日、北海道日本ハムとの首位攻防戦では同点弾含む3安打1打点、三塁の守備でも好反応を見せチームを盛り上げた。9・10月は24試合で打率.359、3本塁打20打点で月間MVP賞を獲得。今季はけがに苦しんだ一年となったが、来季の主軸としての活躍が待ち遠しい。

扇の要を奪取へ 海野隆司&嶺井博希がアピール

 長年正捕手を務めてきた甲斐拓也選手が移籍したことにより、大きなチャンスを得た捕手陣。そのなかで海野隆司選手が105試合と最も多くマスクをかぶり、モイネロ投手の初完封勝利をリードするなど多くの経験を積んだ。打撃では、打率1割台から2割前半と苦しむも、9月には10試合連続安打を放つなど月間打率.302をマーク。来季はバットでも信頼を勝ち取り、正捕手の座を確かなものにしたい。

 海野選手に次ぐ56試合に捕手で出場したのは嶺井博希選手。開幕当初は二軍スタートも、4月10日に昇格。11日には途中出場ながら、同点機をつくり出すヒットや、盗塁阻止など攻守にわたり活躍する。5月11日には2打席連続弾を含む3安打7打点をマーク。さらに終盤には、プロ初の「4番・指名打者」でスタメン出場するなど、バットで存在感を見せた。

けが、不振に苦しんだ近藤健介と山川穂高

 近藤健介選手は開幕カード全試合でスタメン出場も、椎間板ヘルニアとその治療で長期離脱を余儀なくされ、75試合の出場にとどまった。7月には、通算100本塁打と通算300二塁打を達成。以降も勝負強い打撃で、打線に安定感を生み出した。シーズン終盤に再び離脱するも、打率.301、10本塁打41打点をマーク。離脱は痛かったが、さすがの数字を残した。

 昨季の二冠王・山川穂高選手も今年は、苦しいシーズンを過ごした。開幕戦では先制打を打つなど幸先の良いスタートを切ったと思われたが、なかなか調子が上がらず、5月中旬には初めて4番を外された。6月にはファーム再調整も行うなど苦しい期間が続いたが、一軍に復帰した同月27日には10号となる満塁弾。8月は24試合で打率.271と復活の兆しを見せた。

 最終的に130試合で打率.226、23本塁打62打点も、得点圏打率.176とシーズンでは能力を発揮できなかった山川選手。しかし日本シリーズでは打率.385、3本塁打7打点の活躍でMVPに輝いた。来季は取り戻した打棒をレギュラーシーズンでも生かせるか。

新戦力の台頭と既存戦力の復活でさらなる強力打線へ

 今季は新たな戦力の台頭で最下位からの逆転優勝を果たした福岡ソフトバンク。一方で長期離脱で今季は20試合の出場にとどまった柳田悠岐選手も日本シリーズでは打率.455の活躍と、まだまだその存在は大きいように感じられた。来季は主力の完全復活でさらなる強力打線を形成し、リーグ3連覇と2年連続の日本一をつかみ取りたい。

文・根本葵

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