通算5度目のシーズン30セーブを達成した2022年
昨季、東北楽天の守護神として開幕からフル回転の働きを見せた松井裕樹投手。最終的にはリーグトップの32セーブを挙げ、自身3年ぶり2度目となる最多セーブのタイトル獲得を果たした。通算5度のシーズン30セーブを達成した投手はほかに3人いるが、パ・リーグ球団のみに在籍して達成したのは松井投手が初めてだ。
ルーキーイヤーから高い奪三振能力を発揮
松井投手は先発でキャリアをスタートさせたが、その当初からすぐれた奪三振能力を見せていた。プロ2年目の2015年、抑えに抜てきされると才能が開花。セットアッパーに回った年や先発に再挑戦した年も含めて高い奪三振率を記録し続け、昨季はキャリアハイとなる14.46をマークした。これは昨季パ・リーグで30試合以上に救援登板した39投手の中でも、福岡ソフトバンク・モイネロ投手に次ぐ2番目の高さだった。今回は、松井投手が圧倒的な数字を残すことができた要因について探っていく。
全体的な球速アップ
松井投手の主な持ち球はストレート、カーブ、スライダー、フォークの4球種。昨季はどの球種も前年と比べて球速が2~3km/h向上しており、フォークの平均球速は140km/hを超えていた。140キロ台のフォークを武器とする投手といえば、右腕ではオリックス・山本由伸投手やロッテ・佐々木朗希投手などが挙げられるが、左腕でこれほど速いフォークを操る投手は珍しい。
スライダーの威力が向上
球速が上がったことによる恩恵を最も受けたのは、松井投手の代名詞ともいえるスライダーだ。2ストライクに追い込んだ状況での奪空振り率は27.5%と前年から大幅に向上し、フォークに並ぶ勝負球として機能していた。大きく曲がるスライダーは打者に見極められる可能性もあるが、昨季は球速アップによりボールを見られる時間が短くなったことで、多くの空振りを奪えるようになったと考えられる。
ピッチングの幅を広げて打者を追い込む
もうひとつ注目したいのが、追い込む前のピッチングだ。2021・22年ともにストレート中心の組み立てだが、昨季は前年よりもスライダーやフォークの割合が多くなっている。スピードアップした変化球をより多く交えることで、相手にとっては的を絞りにくくなりそうだ。実際、打者を2ストライクに追い込んだ打席の割合は66.5%と、前年の62.8%から増加していた。このように三振を奪うチャンス自体を増やせたことも、自己最高の奪三振率を記録できた要因として挙げられるだろう。
3月に開幕するWBCの日本代表に選出されている松井投手。2017年の前回大会では3試合の救援登板で無安打無失点とチームに貢献しており、今大会でも持ち味を生かした投球に期待したいところだ。また、27歳でシーズン開幕を迎える今季は通算200セーブまで残り3としており、DeNA・山崎康晃投手の記録(29歳10カ月)を塗り替える史上最年少での達成も目前となっている。球史に残る名クローザーへと歩みを続ける左腕のピッチングに、今季も注目していきたい。
※文章、表中の数字はすべて2022年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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