「投高打低」をものともしない活躍を見せ、打撃タイトル2冠を達成
近年まれに見る「投高打低」となった2022年のパ・リーグで、ひときわ大きな存在感を示したバッターのひとりが埼玉西武の山川穂高選手だろう。1試合の平均得点やOPSのリーグ平均などが直近10年で最低というシーズンだったなか、その影響をみじんも感じさせない大活躍。自身3度目となる本塁打王に加え、初めて打点王のタイトルを獲得して2冠を達成した。
原点回帰で3年ぶりの40本塁打到達
そんな山川選手だが、過去2年は苦しい時期を過ごしていた。打率の向上を図り、20年からボールを体の近くまで引きつけて打つスタイルに取り組むも、結果につなげることができず。ケガによる出場数減少の影響もあり、成績が落ち込んでしまった。復調のきっかけとなったのは、21年の終盤にミートポイントを投手寄りに置く打撃スタイルに戻したことだという。そうして臨んだ昨季は開幕直後からアーチを量産。3年ぶりに40本塁打の大台に到達するなど、主砲として打線をけん引した。
打棒復活のカギはフライ打球の増加
ここからは、具体的な打撃の内容について見ていきたい。打撃スタイルの修正に伴って変化していたのが打球性質だ。多くのスラッガーがそうであるように、山川選手はもともと打球に占めるフライの割合が大きい打者だ。ミートポイントの変更を試みたという20年にその割合は減少したが、昨季はレギュラーに定着した18年以降で最も高い62.1%を記録。以前のように、打球にうまく角度をつけられるようになったといえる。
取り戻した変化球への対応力
続いて注目したいのが変化球への対応だ。22年の山川選手に対する投球の変化球割合は、12球団の規定打席到達者で最も大きい67.4%だった。緩いカーブを連投する配球も見られるなど、最も変化球で攻められていたといえる打者だ。その背景には、不振に陥っていた過去2年間は変化球に弱さを見せていた、ということがあるだろう。しかし、昨季は変化球を捉えたときのフライ打球の割合が18、19年に近い水準まで上昇。打撃成績もそれらの年度と同程度の数字を記録しており、変化球への対応が改善されたことが分かる。
苦手だった内角球を克服
もうひとつ注目したいのが、内角球に対する成績だ。昨季は内角球のフライ割合が68.9%まで上昇し、打率や本塁打でも好成績をマーク。このコースは19年以前も含め、どちらかといえば苦手としていたゾーンだが、昨季はその弱点を見事に克服。相手投手にとって、ますます怖い打者になったといえるだろう。
今季は球団レジェンドを超える偉業に期待がかかる
不振を乗り越え、より一層の成長を遂げ、ホームランキングに返り咲いた山川選手。3度目のシーズン40本塁打到達は、秋山幸二氏、カブレラ氏、中村剛也選手に並ぶ球団歴代トップの偉業だ。節目のプロ10年目を迎える今季もアーチを量産し、歴代単独トップに躍り出ることができるだろうか。
さらに、山川選手は3月に開幕するWBCの日本代表に選出されている。日の丸のユニホームを背負うのは18年の日米野球以来であり、WBCは初出場となる。憧れを持っていたと話す国際大会の舞台で、チームを世界一へと導く豪快なアーチに期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2022年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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