NPB史上初となる、2度目の投手4冠を達成した2022年
リーグ連覇、そして26年ぶりの日本一に輝いたオリックス。その絶対的エースとして君臨し、今季のパ・リーグMVPに輝いたのが山本由伸投手だ。
2021年に最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率といったタイトルを独占すると、今季もその活躍ぶりを再現し、2度目の投手4冠を達成した。NPBが2リーグ制となってからの達成者は山本投手の他に8名いるが、達成翌年に1つでも主要タイトルを獲得したのは3名のみ。名だたる好投手をもってしても、ハイパフォーマンスを継続するのは至難の業ということだ。
現在のパ・リーグのみならず、NPBの歴史全体で見ても指折りの存在といえる山本投手。本稿ではそんな彼の貫禄あふれる投球を形づくる、ひとつの要素を示したいと思う。
抜群の質を誇る3つの球種
はじめに、山本投手の持ち球について見ていきたい。
主な武器はストレート、カーブ、フォークで、これらは毎年優秀な被打率を記録している。他にもカットボールやシュートなど多彩な球種を操ることができるが、ここ数年は徐々に主要な3球種の割合を増やしてきた。被打率の優秀な信頼できるボールで投球を組み立てる。このシンプルな思考が、安定した成績を残し続けるようになった一因なのかもしれない。
カウントを取るフォークの精度向上
次に、ウイニングショットともいえるフォークに焦点を当て、打者を“追い込む前”の投球について見ていこう。
デビュー当初から三振を奪う決め球として威力を発揮してきたフォークだが、ここ数年は早いカウントでの使用が増えてきた。特に今季はストライク率が70.7%と同60%前後で推移しているリーグ平均を大きく上回り、カウントを取るボールとして高い効果を発揮。スピードボールもあるなかで、打者は最初からこの球もマークせざるを得ず、こうした組み立てが山本投手の攻略を難しくしている要素のひとつともいえるだろう。
勝負を分ける3球目までに打者を制圧する
前述したフォークの精度向上も影響してか、今季は3球目までに打者を追い込むケースが大きく増加した。
打者との勝負において先に追い込むか、ボールが先行するかは重要な分岐点となる。山本投手の場合も例に違わず、3球目までに追い込んだ打席では相手を圧倒しており、とりわけ三振割合は47.8%とリーグ平均を10ポイント近く上回る。こうした優位なカウントをより高い確率でつくれるようになったことが、今季の山本投手が見せた進化といえるだろう。
2年連続の投手4冠という前人未到の快挙を成し遂げた背景には、対戦の中で早々に優位に立ち、そして制圧するという、まさに王者の貫禄ともいえるピッチングがあった。迎えた日本シリーズは負傷降板となり最後に悔しさも味わったが、その思いをバネにさらなる進化を見せるのか、山本投手の2023年が今から楽しみだ。
※文章、表中の数字はすべて2022年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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