育成から支配下契約を勝ち取り、大ブレーク
昨季、ソフトバンクのリリーフ陣の中でひときわ輝きを放った藤井皓哉投手。一度は戦力外通告を受けてNPBを離れたが、独立リーグで研鑽を積んで2021年オフにソフトバンクと育成契約。22年は開幕直前に支配下への返り咲きを果たすと、55試合に登板して22ホールド、防御率1.12と出色の成績を残した。本稿では充実のシーズンを過ごした右腕のピッチングについて掘り下げていきたい。
持ち球は高水準の3球種
昨季はストレートとフォークで投球割合の9割近くを占めており、スライダーを含めた3球種でピッチングを組み立てた。いずれのボールも被打率は優秀で、リーグ平均と比較しても高数値を記録。1イニング勝負のリリーフゆえに投じられた球種こそ少ないが、どれもハイレベルだった。
唯一無二の軌道を描くフォークボール
中でも藤井投手にとって最大の武器となっているのが、魔球とも評されるフォークだ。「スライドしながら鋭く落ちる」という独特な軌道のボールは、バットに当てることすら困難で多くの打者を苦しめた。被打率は.072とパ・リーグ投手の中でNo.1を記録。フォークを代名詞とするソフトバンク・千賀滉大投手やオリックス・平野佳寿投手を抑えてのトップであり、一躍球界屈指のフォークボーラーに躍り出た。
打者にコンタクトを許さない切れ味
次に打者がスイングした時に空振りを奪った割合を見ていくと、フォークは53.4%をマーク。2スイングに1回はバットを空に切らせており、数字の上でも抜群の落差を証明するものになっている。また、その他の球種もリーグ平均を大きく上回っているが、これはバッターがフォークを意識するがゆえに相乗効果として空振りを誘発していた可能性はあると推測される。とはいえ、打者が思い描いた球筋をしのぐボールを藤井投手が投じていたことに疑いはなく、とらえるのが困難な投手であった。
先発転向を見据える今季の課題は?
大活躍のシーズンを経て迎える今季は先発転向を見据えているが、これに向けては課題といえる点もあった。それがゲームメーク力という部分だ。昨季は1打席あたりの投球数が4.52とリーグ平均と比べても多く、これは先発投手として活躍するための大きな障壁となり得る。
フォークピッチャーにとっての宿命ともいえる点だが、空振りを奪える一方で、見極められてしまえばボールになることも多くどうしても球数は増加してしまう。先発として長いイニングを投げ抜き、ゲームをつくるためにはカウント球や勝負球のフォークを活かすためのボールが今後必要になってくるだろう。
オフの自主トレーニングでは「先発をやる上で必要」と今季は投じていなかったカーブの習得に早速励むなど、さらなる飛躍に向けて抜かりはない。圧倒的なフォークを投じる姿から、千賀投手を重ねる人も多いだろうが、飽くなき向上心もよく似ている。7年連続で2ケタ勝利を挙げたエースのように、今季は苦労人右腕が投手陣の柱としてソフトバンクを引っ張ってくれるはずだ。
※文章、表中の数字はすべて2022年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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