つまり我々野球ファンが求めているものは何かというと、「ロマン」だ。三振が多くても、ひとたびバットに当たればボールがピンポン玉のように飛んでいく長距離砲や、制球力に乏しくとも、指にかかった時のストレートは一級品…… そんな選手たちに感じるワクワク感、それがロマン。
今回は、ロマンをふんだんに感じさせてくれる「恵まれた体格」と「若さ」の両方を兼ね備えたパ・リーグの投手(身長190cm以上・25歳以下・支配下登録)をピックアップして紹介する。(以下の成績は10月13日試合終了時点)
一軍で輝き始めた「令和の怪物」
佐々木朗希(ささき・ろうき)投手/千葉ロッテ
2年目/2001年11月3日生まれ(19歳)
190cm/85kg
【一軍成績】
9試合2勝2敗51.1回49奪三振、防御率2.81
【ファーム成績】
5試合1勝0敗20回19奪三振、防御率0.45
令和の怪物がついにベールを脱いだ。今季2年目を迎えた佐々木朗希投手は、5月16日にいよいよ一軍デビュー。初登板ながら制球も安定しており、5回6安打5奪三振2四球4失点(自責2)とまずまずのデビュー戦となった。
プロ2試合目の5月27日には、高校時代に立てなかった甲子園のマウンドで5回4失点(自責3)と躍動し、プロ初勝利をマーク。その後も中10日以上の間隔をあけながら先発を任され、ここまで2勝2敗、防御率2.81と結果を残している。9月10日には、田中将大投手の初マッチアップで、ともに8回2失点と素晴らしい投手戦を演じた。
左足を大きく上げるダイナミックなフォームから繰り出される直球は常時150km/hを超え、スライダー、フォークも切れ味上々。リリースポイントも安定しており、51.1イニングで14四球と制球力の高さも心強い。19歳にしてこれだけの完成度とポテンシャルを兼ね備えた逸材は、これから我々にどんな景色を見せてくれるのだろうか。
千葉ロッテの若き「ツインタワー」
土居豪人(どい・ひでと)投手/千葉ロッテ
3年目/2000年4月2日生まれ(21歳)
191cm/92kg
【一軍成績】
13試合0勝0敗13.1回9奪三振、防御率6.75
【ファーム成績】
21試合1勝1敗21回17奪三振、防御率2.57
高卒3年目、貴重な経験を積んだのが土居豪人投手だ。松山聖陵高校から、2018年ドラフト8位で入団。1年目はイースタンで防御率9点台、2年目も同5点台と、一軍デビューは遠いかと思われたが、2021年はオープン戦6試合で防御率0.00、被安打0と圧巻の投球を見せ、初の開幕一軍をつかみ取った。
3月26日の福岡ソフトバンクとの開幕戦こそ、1回1安打2四球2失点でほろ苦いデビューとなったが、4月7日のオリックス戦では8球で3者凡退に切るなど、随所に素晴らしい投球も披露。5月と7月に抹消され、その後はファーム暮らしが続いたが、21試合で防御率2.57の好成績を残した。今季は土居投手にとって、間違いなくステップアップのシーズンとなっただろう。
河村説人(かわむら・ときと)投手/千葉ロッテ
1年目/1997年6月18日生まれ(24歳)
192cm/87㎏
【一軍成績】
19試合4勝0敗36.2回24奪三振、防御率3.68
【ファーム成績】
10試合2勝1敗44回44奪三振、防御率1.64
河村説人投手は2021シーズン前半、ルーキーながらブルペンの一翼を担った。星槎道都大からドラフト4位で入団すると、オープン戦で5試合に登板するなど春先からアピールを続け、開幕一軍入り。プロ初登板となった3月26日の開幕戦は、甲斐拓也選手に本塁打を許して1回1失点という結果だったものの、中継ぎとして15試合に登板した。
5月に土居投手とともに一軍登録を抹消されると、その後は先発として調整を進め、7月7日の福岡ソフトバンク戦でプロ初先発。5回2安打2四球2奪三振1失点の好投で、見事プロ初白星を挙げると、そこから無傷の4連勝中。後半戦は先発としてチームに貢献している。
長身だが、スラっとした立ち姿が印象的だ。140km/h中盤の直球と鋭く落ちるフォーク、カットボールをしなやかな腕の振りで操り、相手打者を手玉に取るタイプ。さらにファームではここまで44イニングで与四球は「14」と、制球力も悪くない。順調な成長曲線を辿れば、来季以降はローテーションの柱としても期待できる存在だ。
日本人7人目の「160キロ」鷹の怪物右腕
杉山一樹(すぎやま・かずき)投手/福岡ソフトバンク
3年目/1997年12月7日生まれ(23歳)
193cm/102kg
【一軍成績】
14試合1勝2敗1H20.1回25奪三振、防御率3.98
【ファーム成績】
15試合5勝2敗64.1回64奪三振、防御率1.40
タレント揃いのホークス投手陣に、またひとりホープが現れた。杉山一樹投手は2018年ドラフト2位で入団。恵まれた体格から投げ込む150km/h台後半の直球と、鋭く縦に落ちるスライダーを駆使した、空振りの取れる投球スタイルが魅力である。
2021年は初の開幕一軍をつかみ、4月7日の北海道日本ハム戦では1回無失点でプロ初勝利をマークした。しかし制球力が課題で、登板したほとんどの試合で複数の四球を与えてしまっている。順調にストライクが取れていても、突如として制球を乱す場面があり、まだまだ安定感には乏しいというのが現状だ。
それでも5月11日の千葉ロッテ戦では、日本人投手として史上7人目となる160km/hをマーク。その後抹消されてしまったが、ファームで先発に挑戦。64.1イニングを投げて64奪三振、与四球も18にとどめており、防御率1.40と圧巻の投球を続けた。9月24日にプロ初先発を果たすと、5回1安打6奪三振1失点の好投で大器の片鱗を見せた。
全米ドラフト1巡目指名のトッププロスペクトが日本で開花中!
C.スチュワート・ジュニア投手/福岡ソフトバンク
3年目/1999年11月2日生まれ(21歳)
198cm/101kg
【一軍成績】
11試合0勝2敗1H23.2回36奪三振、防御率6.08
【ファーム成績】
12試合6勝1敗53.2回55奪三振、防御率1.84
C.スチュワート・ジュニア投手は、18年の全米ドラフトでブレーブスから1巡指名(全体8位)を受けたが、契約が合意に至らず。翌19年の全米ドラフトを待つかと思われたが、一転、大型6年契約を提示した福岡ソフトバンクでのプレーを選択。全米ドラフトで1巡目指名され、トッププロスペクトと称された19歳の若手選手が日本での長期契約を結ぶことは前例になく、異例の契約として大いに注目を浴びた。
3年目の今季は4月17日にプロ初登板を果たすなど、中継ぎとして4試合に登板するも、その全試合で四球を与えるなど制球難もあり、一時は登録を抹消。ファームでは主に先発を務め、毎試合のように好投を続け、8月15日にプロ初先発のチャンスが到来。ここで、5回9奪三振無安打無失点の圧巻の投球を見せ、見事アピールに成功。その後も一軍に帯同し、主に先発やロングリリーフを務めている。
150km/hを超える直球と変化の大きいカーブ、スライダー、チェンジアップを投げ込む投球は、調子次第では手が付けられず、まさにワールドクラス。ここまで23.2イニングで36奪三振と驚異的な奪三振能力を見せている。けん制、クイック、フィールディングなどの細かい部分も成長が見られるなど、アメリカ出身のダイヤの原石は、着実に福岡で磨きがかかっている。
前半戦、連勝も髪も伸ばした獅子のエース
高橋光成(たかはし・こうな)投手/埼玉西武
7年目/1997年2月3日生まれ(24歳)
190cm/105kg
【一軍成績】
26試合11勝8敗169.2回121奪三振、防御率3.66
高橋光成投手は前橋育英高校2年時、大黒柱としてチームを夏の甲子園初出場初優勝に導くと、2014年ドラフト1位で埼玉西武に入団。1年目から月間MVPに輝くなど5勝を挙げる活躍で存在感を示した。その後はシーズン11敗を記録したり、故障に苦しんだりと悩める時期が続いたが、19年に自身初の2ケタ勝利で復活。昨季は自身初の規定投球回に達し、8勝8敗、防御率3.74の成績を残した。
チームのエースとして期待を受けた今季は、初の開幕投手を勝利で飾ると、交流戦前まで自身5連勝の活躍。ゲン担ぎとして伸ばし続けた髪の毛も話題となった。交流戦期間に調子を崩すも、リーグ戦再開後は再び安定した投球を続け、9月20日にはキャリアハイとなる11勝目をマーク。なかなか上昇気流に乗れないチーム事情の中、QS回数「17」はチームトップ(リーグ4位)。たとえ状態が悪くても、ゲームを作り続けるその姿はまさに「エース」と呼んで差し支えないだろう。
地元出身、獅子期待の3年目右腕
渡邉勇太朗(わたなべ・ゆうたろう)投手/埼玉西武
3年目/2000年9月21日生まれ(20歳)
191cm/91kg
【一軍成績】
16試合3勝4敗2H49回28奪三振、防御率3.86
【ファーム成績】
14試合2勝2敗34回25奪三振、防御率5.29
渡邉勇太朗投手は、浦和学院高校から18年ドラフト2位で入団した地元・埼玉出身の長身右腕。1年目はファームで防御率14点台、2年目は5点台とプロの壁にはじき返されていたが、3年目の今季初昇格。6月9日の横浜DeNA戦、4点ビハインドの5回表にプロ初登板を迎えると、落ち着いた投球で3イニングを無失点に退ける好投。これが打線に火を付け、この試合、4点差を追い付いての引き分けに持ち込んだ陰の立役者となった。
14日には1点リードの6回裏に登板し、2回3奪三振無失点のパーフェクト投球でプロ初ホールドをマーク。150km/hを超える直球と140km/h台中盤で鋭く変化するカットボール、スライダー、フォークなどを交える投球スタイルで、前半戦は8試合に登板し、中継ぎ陣の一角を務めた。
後半戦からは先発に挑戦。8月15日のプロ初先発を5回1失点、プロ初勝利で飾ると、26日は福岡ソフトバンク打線を5回2安打5奪三振無失点と手玉に取り、プロ2勝目をつかんだ。ポテンシャル抜群の地元出身右腕にかかる期待は大きい。
大ケガから復活!山本由伸の同期右腕
山崎颯一郎(やまざき・そういちろう)投手/オリックス
5年目/1998年6月15日生まれ(23歳)
190cm/90kg
【一軍成績】
8試合1勝2敗33回24奪三振、防御率4.36
【ファーム成績】
13試合1勝5敗59.1回57奪三振、防御率3.34
高卒5年目の山崎颯一郎投手は、山本由伸投手と同期入団だ。敦賀気比高校では2年春、同校が福井県勢初の選抜優勝を果たした際、背番号18でベンチ入り。当時のエース・平沼翔太選手(北海道日本ハム)の陰に隠れて登板機会はなかったが、豊かな将来性を見込まれ、2016年ドラフト6位で指名されている。
2年目の2018年にはウエスタンで20試合、100.1イニングに登板し、5勝を挙げる活躍。オフには「第2回WBSC U-23ワールドカップ」で最優秀防御率賞を獲得するなど、将来が見込まれたが、2019年5月に肘を故障、8月にはトミー・ジョン手術を受け、オフに育成契約を結ぶこととなった。
長いリハビリ期間を経て、2020年10月1日ウエスタン阪神戦でついに実戦復帰。先発登板して1回無安打無失点に抑え、ストレートは150km/hを記録した。同年12月に支配下復帰を勝ち取ると、2021年5月1日の福岡ソフトバンク戦でプロ初登板。最速152km/hの直球とナックルカーブを交え、無失点に抑えた。その後は先発としてチャンスをつかみ、7月8日のプロ初先発は5回無失点。9月からはローテーションの一角に加わり奮闘を続けると、9月29日に念願のプロ初勝利をマーク。同期のエース・山本投手に負けじと、ここからスター街道を歩めるか。
かつてのクローザーは手術からの復活へ
石川直也(いしかわ・なおや)投手/北海道日本ハム
7年目/1996年7月11日生まれ(25歳)
192cm/90kg
※今季登板なし
ファイターズファンはその姿を待ち望んでいる。石川直也投手は、山形中央高校から14年ドラフト4位で入団すると、17年には37試合に登板。18年にはクローザーも務め、52試合で19セーブ、19年は60試合に登板し、21ホールドを挙げるなど、将来の守護神候補としてさらなる飛躍が待望された。
しかし、昨季は開幕から二軍生活が続くと、夏にトミー・ジョン手術を決意。今季はリハビリに時間を充てたため、公式戦での登板はなかった。回復は進み、フェニックスリーグで実戦復帰の予定。19年には54.1イニングで75奪三振と驚異の奪三振能力を見せた25歳右腕は、手術を経てパワーアップした姿を見せられるだろうか。
体力強化に取り組んだ高卒ルーキー
内星龍(うち・せいりゅう)/投手
1年目/2002年4月24日生まれ(19歳)
190cm/88kg
【ファーム成績】
2試合0勝0敗2回0奪三振、防御率0.00
今回挙げた選手のなかでは、唯一の新人である内星龍投手。今季はファームでも2試合の登板と、体力強化に取り組むシーズンとなった。一軍デビュー、そして憧れの山本由伸投手との投げあい実現に向け、来季以降はファームでの実戦を重ねていきたい。
粗削りながら夢を見せてくれる選手たちを見守り、一喜一憂するのも醍醐味だ。実戦の中でさまざまな課題と収穫をつかみ、日々伸びているであろう彼らの成長曲線を楽しみに追いかけていきたい。
文・岩井惇
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