脚力を保ち続けた選手は? 直近10年間のパ・リーグでチーム内盗塁数トップを記録した選手を紹介

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2020.4.15(水) 11:00

埼玉西武ライオンズ・金子侑司選手【撮影:丹羽海凪】
埼玉西武ライオンズ・金子侑司選手【撮影:丹羽海凪】

走力は故障や年齢によって影響を受けやすいものではあるが……

 他の主要タイトルと同様に、盗塁王争いもシーズンが佳境を迎える時期には毎年のように熾烈なものとなってくる。時にはチーム全体でタイトルへの挑戦をバックアップするケースも存在し、1シーズンで40を超える盗塁数を記録する選手も少なからず存在する。

 しかし、盗塁を決めるために必要な要素の一つである脚力は、故障や年齢によって陰りが見える危険性をはらんだものでもある。しかし、実際に一定のスパンにおける盗塁数の変遷を見てみると、長年にわたってチームトップの盗塁数を記録している選手の数も、決して少なくはないことがわかった。

 今回は、直近10年間のパ・リーグにおいて、各球団でチーム内トップの盗塁数を記録した選手たちを調査。その顔ぶれの移り変わりを確認するとともに、長期間にわたって脚力を維持した選手たちを見ていこう。

直近10年間の北海道日本ハムでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間の北海道日本ハムでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

北海道日本ハムファイターズ

 2010年は打撃面でキャリアハイの成績を残した田中賢介氏が盗塁でも自己最多となる34盗塁を記録。その後は糸井選手が2年続けてチームトップの盗塁数を記録し、その後は陽岱鋼選手、西川遥輝選手、中島卓也選手と、盗塁王獲得経験を持つ快速ランナーたちが活躍を見せた。2019年にはチーム全体の盗塁数も少なくなっていたのは気がかりだが、盗塁成功率の高さでも知られる西川選手は2020年に巻き返しを見せてくれるだろうか。

 ちなみに、ファイターズは過去の歴史を振り返っても近年まで盗塁王を輩出したことが一度もなく、2013年の陽選手が球団史上初の盗塁王獲得選手だった。しかし、記念すべき初受賞をきっかけに球団を取り巻く流れは大きく変わり、その後は西川選手が3度、中島卓也選手が1度と、直近7年間で5度盗塁王を輩出。今や、盗塁大国といっても過言ではないチームへと変貌を遂げている。

直近10年間の東北楽天でチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間の東北楽天でチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

東北楽天ゴールデンイーグルス

 2010年から4年間は聖澤諒氏の独壇場に近い状態で、2012年には球団史上初の盗塁王を獲得。2年連続で50盗塁以上を記録し、現在の球団最多記録である通算197盗塁を記録した脚力は、まさしく球団史に残るものだった。一方、2014年以降はチームトップに立った選手の盗塁数自体が大きく減少しており、球団全体の盗塁数自体が控えめという事実も見て取れる。

 そんな中で、助っ人のウィーラー選手や、当時ルーキーだった2016年の茂木栄五郎選手、2017年の田中和基選手、2019年の辰己涼介選手といった、やや意外な面々がチームトップの盗塁数を記録。2014年には同年10月に39歳となった松井稼頭央氏がチーム最多盗塁を記録するなど、全体の盗塁数がやや少ないからこその荒れ模様も感じられる結果となった。

直近10年間の埼玉西武でチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間の埼玉西武でチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

埼玉西武ライオンズ

 2007年から2010年まで4年連続で盗塁王のタイトルを獲得した片岡易之氏、在籍2年間でいずれも40盗塁以上を記録したヘルマン氏、ルーキーイヤーから2年連続で30盗塁以上をマークした源田壮亮選手、直近4年間で2度の盗塁王に輝いた金子侑司選手と、ライオンズは伝統的に多くの快足選手を輩出してきた。上記の顔ぶれと各選手が残した数字を見ても、機動力を使える選手がほとんどの期間で在籍していたことがうかがえる。

 2015年は日本記録であるシーズン216安打を記録した秋山翔吾選手がチーム最多の盗塁を記録したが、NPBでの通算盗塁成功率は.633と高いとは言いがたい数字だ。一方で、2011年の片岡氏や2014年の金子選手のように、盗塁に長けた選手であっても打率.250を下回ったシーズンにおいてはやや盗塁数が伸び悩んでおり、打撃面の成績は盗塁数にも影響するという傾向が見られた。

直近10年間の千葉ロッテでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間の千葉ロッテでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

千葉ロッテマリーンズ

 荻野貴司選手が直近10年中7シーズンでチーム最多盗塁を記録しており、持ち前の俊足を生かして存在感を示し続けている。試合数を見てもわかる通り、ケガで長期離脱を強いられたシーズンも多く、各年の数字自体は抜群に多いというわけではない。だが、わずか46試合で25盗塁を稼ぎ出した2010年に代表されるように、出場した試合では着実に盗塁を稼いでいたと言えそうだ。

 また、2011年に41盗塁を記録した岡田氏や、2018年に39盗塁を記録した中村選手のように、1シーズンで多くの盗塁数を記録した選手は存在したが、パ・リーグの6球団で唯一、直近の10年間で盗塁王を1人も輩出していない球団となっていた。プロ10年目で初めて規定打席に到達した2019年の荻野貴選手も、その実力からすれば同年の盗塁数はやや伸び悩む結果に。来季は2年連続で規定打席に到達し、自身初の栄冠を手にできるだろうか。

直近10年間のオリックスでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間のオリックスでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

オリックス・バファローズ

 上記のランキングの中では、2016年に35歳にして53盗塁を決め、史上最年長タイで盗塁王を獲得した糸井嘉男選手の活躍が目を引く。上記のランキングで盗塁数が多かった順に並べると、1番目から3番目まですべてが糸井選手になるという事実が、あらためてその超人ぶりを示しているだろう。

 また、2012年の野中信吾氏は同年74試合に出場したものの、打数はわずか120と、スタメンとしての出場機会はそこまで多いとはいえなかった。出場機会が限られる中で、チーム最多の盗塁を記録した点は特筆に値するだろう。それ以外の年は1桁の盗塁が1度、10盗塁台が4度と、チーム全体の盗塁数が伸び悩むシーズンも多かった。それだけに、2019年に30盗塁を記録した福田周平選手の今後の飛躍には期待したいところだ。

直近10年間の福岡ソフトバンクでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM
直近10年間の福岡ソフトバンクでチームトップの盗塁数を記録した選手(C)PLM

福岡ソフトバンクホークス

 本多雄一氏は直近10年間のパ・リーグでは最多となるシーズン60盗塁を2011年に記録し、2010年からの2年間で119盗塁を稼いだ。4年連続を含む5度のチーム最多盗塁と、切り込み隊長の座に相応しい機動力を発揮してチームを支えた存在だ。2014年からは柳田悠岐選手が3年連続を含めて5年間で4度のチーム最多盗塁を記録しており、2015年に達成したトリプルスリーの快挙にもその脚力は不可欠だった。

 2019年にチーム最多の盗塁数を記録した周東佑京選手は、シーズン後には「侍ジャパン」でも活躍を見せて一躍知名度を上げた。打数は102と、先述したオリックスの野中選手と同様にスタメンでの出場機会が多いとはいえなかったが、相手に警戒されやすい代走での出場であっても着実に仕事をする圧巻の俊足は、チームにとっても大きな武器となっている。

直近10年間で5回以上、チーム最多の盗塁数を記録した選手の顔ぶれは?

 最後に、直近10年間で5回以上チーム最多盗塁を記録した選手たちを紹介したい。

荻野貴司選手
7回(2010、2013~2017、2019)
西川遥輝選手
5回(2014、2016~2019)
聖澤諒氏
5回(2010~2013、2015)
本多雄一氏
5回(2010~2013、2016)

 西川選手、聖澤氏、本多氏と、盗塁王に輝いた経験のある選手たちがそれぞれ5度のチーム最多盗塁を記録しているが、盗塁王を獲得したことはない荻野貴選手が7回と、今回取り上げた選手の中では最多の回数を記録した。今回のランキングはその性質上、チーム内に俊足の選手が多いか否かにも左右されるものではある。だが、上述の5選手はいずれも、長期間にわたって脚力を維持し続けた選手であると言ってよいだろう。

 俊足の選手が一塁に出ると、球場全体が盗塁の可能性を念頭に置いた状態で試合が進みだす。盗塁を巡る走者とバッテリーの駆け引きは、野球における読み合いの中でもとりわけ見応えのあるものの一つだ。今後もパ・リーグの各球団において、持ち前の俊足で長年にわたってチームに貢献し続ける選手が現れることに期待したいところだ。


文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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