タイトル防衛か、初の戴冠か。4名の好投手が繰り広げる、最多奪三振争いの行方は?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.8.13(水) 17:15

埼玉西武ライオンズ・今井達也投手(左)北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(右)【写真:球団提供】
埼玉西武ライオンズ・今井達也投手(左)北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(右)【写真:球団提供】

昨季は今井投手が独走でタイトルを手にしたが、今季は熾烈な争いとなるか

 8月に入り、奪三振王のタイトル争いも加速してきた。8月11日試合終了時点で、伊藤大海投手がリーグトップの138奪三振を記録し、2024年に最多奪三振のタイトルに輝いた今井達也投手とモイネロ投手が134奪三振とそれに続く。さらには宮城大弥投手が121奪三振を記録して上位3名に肉薄する構図となっている。

 昨季は今井投手が2位の伊藤投手と26個の差をつけて最多奪三振のタイトルを手にしたが、今季は終盤戦まで熾烈な争いが展開されそうな気配だ。今回は、モイネロ投手が先発に転向した2024年以降における各投手の月別成績を確認し、今後のタイトル争いの行方を直近の傾向という観点から展望していきたい。(※記録は8月11日の試合終了時点)

伊藤大海投手(北海道日本ハム)

伊藤大海投手 2024年月別投手成績 ©PLM
伊藤大海投手 2024年月別投手成績 ©PLM

 2024年は開幕投手として6回9奪三振と好投を見せ、その後も4月に奪三振率8.65、6月に同8.68とそれぞれ一定以上の数字を記録。ただし、5月は奪三振率4.74、7月は同6.23と数字を落とした月も存在しており、前半戦の奪三振率にはやや波があったと言えよう。

 しかし、8月に入って以降は奪三振のペースが大きく向上し、3カ月連続で投球回を上回る奪三振を記録した。最終的には今井投手に次ぐリーグ2位の161奪三振を挙げ、通年の奪三振率も8.22と、ルーキーイヤー以来3年ぶりとなる8点台の数字を記録した。

伊藤大海投手 2025年月別投手成績 ©PLM
伊藤大海投手 2025年月別投手成績 ©PLM

 2025年は4月に5試合で43個の奪三振を記録し、奪三振率10.46とハイペースで三振を奪った。前年と同様に5月は奪三振率6.68とやや数字を落としたが、6月に入ってからは奪三振のペースが向上し、奪三振率8.53とコンスタントに三振を上積みした。7月、8月も順調に奪三振数を積み重ねている昨年同様の傾向からも、今後の奪三振ショーに一番期待がかかるのが伊藤投手ではないか。現時点でリーグトップの138.2投球回を記録してることも相まって、昨季の投手2冠に続く新たなタイトルに輝く可能性も十二分にありそうだ。

今井達也投手(埼玉西武)

今井達也投手 2024年月別投手成績 ©PLM
今井達也投手 2024年月別投手成績 ©PLM

 2024年は自身初の開幕投手として7回11奪三振と素晴らしい投球を見せたことを皮切りに、4月から6月まで3カ月連続で4試合に先発登板し、いずれも投球回を上回る奪三振を記録。7月には奪三振率11.65という圧巻の数字を残すなど、抜群のハイペースで三振を奪い続けた。

 8月にはシーズンで初めて奪三振数が投球回を下回ったが、それでも月間33奪三振を挙げて奪三振率8.57と一定以上の数字を記録。シーズンが佳境を迎えた9月には奪三振率10.64と再び素晴らしい成績を残し、通年の奪三振率も9.71とタイトル獲得に相応しいハイレベルな水準に達していた。

今井達也投手 2025年月別投手成績 ©PLM
今井達也投手 2025年月別投手成績 ©PLM

 2025年は4月に4試合で32個の三振を奪って奪三振率9.60を記録し、5月には月間43奪三振、奪三振率10.46と再び支配的な投球を披露。そして、6月にはわずか19.2イニングで32個の三振を奪い、奪三振率14.64とまさに圧倒的な数字を記録した。

 体調不良の影響もあってか7月には奪三振率7.80、防御率5.40と調子を崩したものの、8月7日の登板では7回11奪三振と復調を示した。現時点で奪三振率10.25と昨季を上回るペースで奪三振を量産しているだけに、2年連続のタイトル獲得も大いに期待できる状況だ。

リバン・モイネロ投手(福岡ソフトバンク)

モイネロ投手 2024年月別投手成績 ©PLM
モイネロ投手 2024年月別投手成績 ©PLM

 先発転向1年目となった2024年は、シーズン初登板こそ8回4奪三振とやや控えめな数字となったが、4月の奪三振率が8.28、5月が同9.00と徐々に奪三振のペースが増加。そして、6月には奪三振率11.33、防御率0.67とまさに支配的な投球を見せ、自身初の月間MVPに輝く見事な活躍を見せた。

 7月の奪三振率は8.04、8月は同6.67と夏場に入ってからはやや三振のペースが低下していたが、9月には奪三振率9.45と再び優秀な数字を記録。通年の奪三振率も8.56と優秀な水準にあり、リリーフ時代に奪三振の山を築いた剛腕が、先発としても一定以上のペースで三振を奪えることを証明した1年だったと言えよう。

モイネロ投手 2025年月別投手成績 ©PLM
モイネロ投手 2025年月別投手成績 ©PLM

 2025年は4月に5試合で36個の三振を奪い、奪三振率10.02と素晴らしい数字を記録。5月は奪三振率6.83と一転して奪三振のペースが低下したが、6月には30イニングで42個の三振を奪い、奪三振率12.60とあらためて三振を奪う能力の高さを示している。

 8月10日の北海道日本ハム戦は伊藤投手との壮絶な投げ合いとなったが、13奪三振で9回完投し、昨年課題だったスタミナ面の課題を克服してさらなる成長を見せている。自身初となる最多奪三振のタイトル獲得につなげたいところだ。

宮城大弥投手(オリックス)

宮城大弥投手 2024年月別投手成績 ©PLM
宮城大弥投手 2024年月別投手成績 ©PLM

 2024年は開幕投手として6.1回で9奪三振と見事な投球を見せ、4月には4試合で36個の三振を記録して奪三振率10.13という好成績を残した。しかし、その後は故障の影響もあって2カ月連続で1試合の登板に終わり、合計で8個の奪三振を上積みするにとどまった。

 それでも、7月は奪三振率11.58、9月は同10.80と故障からの復帰後は2度にわたって奪三振率10.00を上回る月を生み出した。最終的には奪三振率8.83と、先発ローテーションに定着して以降では最高の数字を記録し、投手としての着実な成長を示した。

宮城大弥投手 2025年月別投手成績 ©PLM
宮城大弥投手 2025年月別投手成績 ©PLM

 2025年は開幕戦で8回7奪三振と快投を見せ、4月以降は4カ月連続で奪三振率9.00以上を記録している。とりわけ、7月には27イニングで32個の三振を記録して奪三振率10.67という素晴らしい数字を残し、通算の奪三振率も9.33と昨季を上回る水準に達している。

 昨季に続いて7月に奪三振率10点台を上回る月を過ごしているだけに、同様の傾向が続けば9月にも奪三振数の上積みが期待できるところだ。8月8日に一軍登録を抹消されたのは気がかりだが、ここから状態を取り戻し、シーズン終盤にはタイトル争いにつながる猛チャージを見せてくれるだろうか。

順位争いもタイトル争いも注目の夏

 現時点で奪三振率ランキングのトップ2に位置している伊藤投手と今井投手は、どちらも2024年の夏場以降に奪三振のペースが向上していた。先発投手にとっては難しい時期となる夏場における実績を鑑みても、両投手がタイトル獲得の有力候補と言えそうだ。

 また、先発転向2年目のモイネロ投手が昨季苦しんだ夏場を克服できるかという点や、宮城投手が元来得意とする8月以降に奪三振の山を築くかにも注目が集まるところだ。リーグを代表する好投手たちが繰り広げるタイトル争いに、今季はぜひ最後まで注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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