新天地・北海道日本ハムで打撃が開花

2023年6月にトレードで中日から北海道日本ハムに加入した郡司裕也選手。中日時代は思うような成績を残せなかったものの、プロ入り当初から期待されていた打撃が新天地で開花。昨季は自身初めて規定打席に到達し、今季はすでに3度サヨナラ打を放つなど、持ち前の勝負強さでチームに貢献している。今回はそんな郡司選手のバッティングがどのように変わったのか、その進化の過程を探っていきたい。
三振と四球の割合から浮かび上がる2つの転機

はじめに三振と四球の割合を年度別で見てみると、数値の変化から2つの転機が浮かび上がってくる。まず1つ目は北海道日本ハムに加入した23年で、中日時代と比べて三振、四球ともに減少している。そして2つ目が今シーズン。移籍後に改善した三振割合を10%台にキープしたまま、四球割合が再び増加していることがわかる。では、この2つの転機それぞれにおいて、彼のバッティングにどのような変化があったのか。もう少し詳しく見ていきたい。
移籍後は打撃の積極性が増加

1つ目の注目点である移籍前後の変化は、スイングの積極性が増したことだ。中日在籍時はファーストストライクスイング率がNPB平均よりも10ポイント以上低く、打ちにいくボールを慎重に見定めるタイプのバッターだった。ところが移籍を機に打撃スタイルを改めており、北海道日本ハムでは浅いカウントから積極的にスイングを仕掛けるようになっている。23年6月30日の移籍後初打席では、山本由伸投手(現ドジャース)の初球を捉えてヒットを放つ思い切りの良さを見せていた。
追い込まれる前に決着をつけることで打撃に安定感が生まれる

中日時代の郡司選手は追い込まれるともろい面があり、2ストライク打率は.138とその間のセ・リーグ平均.180に比べてかなり低い数値だった。しかし、移籍後は打席内でのアプローチが積極的になったことにより、追い込まれる前に決着する打席が増加。結果として、それまでよりも安定してヒットを打てるようになったと考えられる。
また、先に紹介したように同じタイミングで四球割合も減少しており、これもおそらくは打席内での勝負が早くなったことに起因している。打率を残せるようになった反面、四球で塁に出るという持ち味は薄れてしまっていたといえる。そして、その四球割合が再び良化したのが、2つ目のターニングポイントである今シーズンだ。
今季途中から元来の持ち味が復活

上の表はこれまでに紹介した各種成績を今季の3・4月とそれ以降に分けたものだ。3・4月を見ると、追い込まれる打席や四球の割合は昨季のように低いままだが、2ストライク打率が.250と高くなっていることが分かる。前半戦トータルでは.262を記録しており、これは現時点で200打席以上に立ったパ・リーグの打者の中で最も高い数字となっている。シーズン最初の1カ月で2ストライク時の打撃に手応えをつかみ、追い込まれることを恐れなくなったのだろうか。5月以降は追い込まれた打席の割合が増え、それに伴って四球を選べるようにもなっている。
リーグ屈指の出塁能力を備えたバッターに成長

移籍を機に安定してヒットを打てるようになり、元来の持ち味である四球を選ぶ能力も復活したことで、今季大きく数字を伸ばしているのが出塁率だ。現時点で規定打席には50打席ほど届いていないものの、200打席以上立った打者の中ではリーグ2位の好成績を収めている。ここまで9番を除いた全打順でスタメン出場している同選手だが、リーグ屈指の出塁能力を生かしてどの打順からでもチャンスを広げることができ、北海道日本ハム打線につながりをもたらしている。さまざまなポジションを守ることができるユーティリティー性も相まって、チームにとって重要なピースとなっている。
昨季はリーグ2位でフィニッシュし、6年ぶりのAクラス入りを果たした北海道日本ハム。今季は現在首位に立って優勝争いをリードしているが、この2年間のチームの躍進を語る上で、郡司選手の攻守にわたる貢献は欠かせない。ペナントレースを制して歓喜の時を迎えるべく、今後も持ち前の打棒と明るいキャラクターでチームを盛り立てていく。
※文章、表中の数字はすべて2025年7月21日終了時点
文・データスタジアム
