荻野貴司、鈴木大地、マーティン、若手投手…… CSを狙う千葉ロッテの魅力に迫る

パ・リーグ インサイト 岩下雄太

2019.9.19(木) 17:08

千葉ロッテマリーンズ・マーティン選手(C)「パーソル パ・リーグTV」
千葉ロッテマリーンズ・マーティン選手(C)「パーソル パ・リーグTV」

 現在、パ・リーグ3位の千葉ロッテ。2016年以来のクライマックス・シリーズ進出を目指し、選手、ファンともに一丸となって終盤戦を戦っている。振り返れば2017年、2018年は80敗以上を喫し、選手もファンもかなり悔しい思いをしたのではないだろうか。井口資仁監督2年目の今季は、ここまで67勝66敗4分で3位と、CS進出圏内につけている。そんな千葉ロッテの魅力に迫っていきたい。

開幕スタメン落ちした荻野貴司、鈴木大地の1,2番コンビが躍動

 今季の千葉ロッテの魅力を語るうえで外せないのは、荻野貴司選手、鈴木大地選手の“1,2番コンビ”だ。荻野貴選手は、自主トレから短いバットを使用していたが、オープン戦で打率.059と振るわず。鈴木選手は、今季から加入したレアード選手との三塁手のポジション争いに敗れ、2人は開幕戦ベンチスタートだった。

 荻野選手は、「バットを去年と同じものに戻しました。ちょっとバットが出てこない感じがあったので、コンパクトにいくイメージです」と、開幕直後に自主トレから使っていた短いバットから、昨年までと同じ約85センチのバットを短く持つスタイルに変更。6月7日の巨人戦から7月4日のオリックス戦にかけて20試合連続安打を放つなど、前半戦をリーグトップの打率.330で終えた。

 これまで毎年のように故障による離脱で悔しいシーズンを送ってきた。腰痛で登録抹消はあったものの、後半戦に入っても大きな故障がなく、プロ10年目で自身初の規定打席に到達。不動のリードオフマンとしてチームを引っ張っている。

 同じく開幕スタメン落ちした鈴木も、開幕直後は出場機会に恵まれなかったが、一塁手の井上晴哉選手が打撃不振で一軍登録を抹消されると、一塁のポジションで出場。このチャンスをモノにし、再びレギュラーの座をつかんだ。井上選手が再昇格した後も、指名打者、一塁、三塁、二塁、ときには左翼で出場するなど、チームのために献身的な働きを見せ、チームを鼓舞している。

 打撃面では鈴木選手が試合を決める場面が何度もあった。「この先の中でも、ナンバー1になる場面で打たせてもらったと思っています」と、5点差をひっくり返すサヨナラ打を放った6月16日の中日戦をはじめ、現時点で3度のサヨナラ打を放っている。本塁打と打点はキャリアハイを更新し、荻野選手とともに打線をけん引した。

途中加入の助っ人マーティンの存在

 荻野選手、鈴木選手に加え、長年チームの課題であった長打力を補ったレアード選手の活躍が目立った前半戦だったが、後半戦に入りレアード選手がやや調子を落とした。そんな中で、打線を盛り上げたのが途中加入のマーティン選手だ。

 メジャー通算58本塁打のマーティン選手は、来日2試合目の出場となった7月27日の楽天戦で来日初本塁打を含むマルチ安打をマーク。「ちょっと違いはあると思いますけど、同じ野球なのでそんなにメジャーと日本の違いは感じていないです」と、日本の野球にすぐに溶け込んだ。

 本拠地のZOZOマリンスタジアムでは10本のアーチを描くなど、46試合の出場ながら14本の本塁打をマーク。外野守備では強肩を武器に5個の捕殺を記録するなど、アグレッシブなプレーで球場を沸かせている。7月30日からZOZOマリンで販売されている「いただきマーティン丼」は、マーティン選手が走者を刺したらその場から割引のサービスが実施されるなど、プレーだけでなく、スタジアムグルメでもファンを喜ばせている。

 7月25日までチームは42勝46敗2分だったが、マーティン選手が来日初出場した7月26日以降は、25勝20敗2分。シーズン終盤戦まで熱い戦いができているのも、マーティン選手の加入が大きいのではないか。

後半戦にかけて若手投手が次々と台頭

 投手陣では、岩下大輝投手種市篤暉投手をはじめ、若手の投手が次々に台頭した。

 種市投手はチームトップタイの7勝をマークするなど、オールスター明けは9試合に登板して3勝1敗、防御率3.04。「調子がよかっただけだと思います」と謙遜するが、クオリティ・スタートも6度達成するなど、エース級の働きを見せている。

 復帰後はリリーフを務めている岩下投手は、前半戦は先発ローテーションに入った。「緊張もするし大事なポジションで、プレッシャーは大きい。そこを任せてもらえるというか、そこのポジションで投げられることは非常に光栄」と、7月2日のオリックス戦からはカード頭を任され、オールスター明け初戦の7月15日の埼玉西武戦も先発を任された。

 岩下投手、種市投手が一軍に定着する中、夏場以降は、ファームで安定した投球を見せていた土肥星也投手、小島和哉投手、佐々木千隼投手、中村稔弥投手、東妻勇輔投手など、若手投手たちが一軍に昇格し結果を残した。

 彼らが活躍している理由のひとつに、ファームでの過ごし方が関係している。小野晋吾二軍投手コーチは「常にいつチャンスが巡ってくるかわからない中で、意識を高くもってやっていくように言っています。また競争意識は、つついてというか、意識させるようにしています」という言葉を選手たちに口酸っぱく伝えてきた。

「あとは準備の意識が高くなってきていると思いますね。試合に対しての準備、ゲームでいいパフォーマンスを出せるための準備の意識が高くなっていると思います」と競争意識とともに、長いシーズンを過ごす中で、試合への準備の意識を高めた。

 また、ファームでは選手たちにコーチ陣の考えを押し付けるのではなく、常に選手本人に自覚を持たせ考えさせるようにし、悩んでいる投手に対してはタイミングを見計らって声をかけていた。ファームでの過ごし方が若手投手台頭のきっかけのひとつになったと言える。

健闘の裏には熱いファンの存在も

 そして千葉ロッテの魅力を語るうえで忘れてはならないのは、マリーンズファンの存在だ。

 本拠地のZOZOマリンスタジアムは、ピンストライプのユニフォームで埋め尽くされ、選手がスタンドのファンとともに勝利をわかちあう“We Are”は選手とファンがひとつになる瞬間だ。ビジターでは、黒の軍団が敵地をホームに変えるほどの熱い声援で、選手たちを後押ししている。

 残り試合数は6試合。4位・楽天は残り試合数が7試合と、1試合多いのは気になるところ。ただ、シーズンラスト3試合は本拠地・ZOZOマリンスタジアムでのゲーム。23日には、長年千葉ロッテを支えてきた福浦和也選手兼任二軍打撃コーチの引退セレモニーが行われる。

 選手とファンが一体となって最後まで全力を尽くし、3年ぶりのCS出場、さらにはその先の日本シリーズへ。10月後半に9年ぶりの歓喜の瞬間を迎えるため、全力で戦っていく。

取材・文 岩下雄太

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パ・リーグ インサイト 岩下雄太

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