東北楽天の2023シーズンは70勝71敗2分、勝率.496でパーソル パ・リーグ4位だった。
6月を終えて5連敗を3度経験するなどシーズン前半は投打が噛み合わず。ところが、7月5日から8連勝と調子を上げたチームは月間15勝7敗と勝ち越し。9月も月間13勝9敗で「パーソル CS パ」出場圏を射程に捉えると、10月1日には2位に浮上する。
シーズン最終戦の10月10日、「勝てば3位、負ければ4位」という大一番を本拠地・楽天モバイルパークで迎えたが、0対5で千葉ロッテに完封負け。2年ぶりのCS出場を逃し、石井一久監督は今季限りで退任した。
今回は2023シーズンの特集として、東北楽天打線を回顧する。
選球眼に長けた打線 盗塁数は唯一の3桁
チーム打撃成績は打率.244、1140安打、104本塁打がいずれもリーグ3位。485打点はリーグ最多だ。リーグ最少の三振937の一方でリーグ最多の490四球を選んでおり、IsoDとBB/Kも当然、リーグ最高値をマーク。選球眼に長けた打線といえる。また、盗塁数は12球団唯一の3桁となる102盗塁だった。
個人タイトルでは浅村栄斗選手が3年ぶり2度目のホームラン王に。小深田大翔選手はリーグ最多タイの36盗塁を成功させ、自身初の盗塁王を獲得した。パ・リーグ外野手トップの守備率.997を記録した辰己涼介選手は、3年連続3回目のゴールデン・グラブ賞を受賞している。
4月の月間打率.208、3本塁打と開幕からまさかの不振に陥った浅村選手。5月は7本塁打、交流戦では打率.333と復調すると、7月に本来の打棒を取り戻す。7月7日から9試合連続安打。7月16日千葉ロッテ戦では2本塁打するなど、2017年以来6年ぶりの1試合5安打の大暴れ。この月は打率.395、9本塁打24打点、OPS1.220の好成績で月間MVPを受賞する。
9月14日にはパ・リーグ新記録となる1144試合連続出場を達成。チームのCS出場争いが佳境に入ると、浅村選手も9月16日から10試合連続安打を放ち、シーズン最終盤まで打線を引っ張った。
キャプテンのバッティングがチームの浮沈に連動したシーズン。CS出場は叶わなかったが、個人としては8年連続の全試合出場。リーグトップに並ぶ26本塁打、同3位の78打点、打率.274、OPS.829の成績を収め、ベストナイン二塁手部門に2年連続で選出されている。
小深田選手は自身最多となる134試合に出場し、プロ入りから4年連続で規定打席に到達。自身初タイトルとなった盗塁も含めて123安打、5本塁打、37打点などキャリアハイを更新。守備では主にセカンドを守りながら、サード、ショート、外野を守った。タフなユーティリティープレーヤーとして年々存在感を高めている。
プロ8年目・村林一輝が正遊撃手を勝ち取る 小郷裕哉は初2桁本塁打
チームがシーズン後半に巻き返すことができた要因に浅村選手の復調に加え、2人の「ドラフト7位野手」の成長も挙げられる。
まずはプロ8年目の村林一輝選手。2015年ドラフト7位で入団した村林選手はこれまで守備固めや代走での出場が多かったが、今季は開幕ショートの山崎剛選手とのポジション争いを制した。
6月25日に「9番・ショート」で今季初スタメン。3打数2安打と結果を出すと、7月から「1番・ショート」で出番を増やす。7月2日千葉ロッテ戦は4安打5打点と打ちまくってチームの最下位脱出に貢献。7月30日埼玉西武戦では延長10回裏にプロ入り初のサヨナラタイムリーを放った。
7月下旬から13試合連続安打するなど、夏場の逆襲の象徴となった村林選手。定評があった守備でも、ムダのない身のこなしと堅実な送球で何度もチームを救った。来季もレギュラーに定着できれば、6年連続ゴールデン・グラブ賞の埼玉西武・源田壮亮選手の対抗馬にもなりうるだろう。
2018年のドラフト7位、プロ5年目の小郷裕哉選手も昨年の10試合から今季は120試合と大幅に出場試合数を増やし、キャリアハイを更新する102安打10本塁打49打点13盗塁を記録した。
交流戦の東京ヤクルト戦で2試合連続猛打賞とアピールすると、「3番・ライト」でスタメンに名を連ねるように。6月16日、17日の2試合連続本塁打など6月は月間打率.341と開眼。7月11日と12日にも再び2試合連続アーチを放ち、連勝中のチームに勢いをもたらす。8月は打率.215と調子を落としたものの、10月3日福岡ソフトバンク戦で自身初のシーズン100安打目となる10号ソロが飛び出した。
2018年ドラフト組に期待
遅咲きながら村林選手と小郷選手が開花した一方でさみしいニュースも。今季終了後に銀次選手が現役引退を発表したのだ。プロ18年目の今季は開幕からファーム調整が続き、9月22日に代打で初出場。9月25日北海道日本ハム戦での代打タイムリーが現役最終安打となった。
2024年は今江敏晃監督、野手キャプテンの浅村選手を中心にチームは新たなスタートをきるが、特に期待したいのは2018年ドラフト組。辰己選手、太田光選手、小郷選手のほか、今季パ・リーグ1号をエスコンフィールドで放った伊藤裕季也選手や、ファームで首位打者となった渡邊佳明選手がその世代にあたる。来年28歳の中堅どころが実力を発揮し続ければ、チームに隆盛が訪れるはずだ。
そして2024シーズンは球団創設20周年のメモリアルイヤー。新体制で優勝を目指す楽天イーグルスに注目したい。
文・菊地綾子
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