![東北楽天ゴールデンイーグルス・渡辺翔太投手【写真:球団提供】](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/B3iC1iVSrUlvCly8VFi4g8ZlK9fQnd1UMkJNZ8gd.jpeg)
ルーキーながらセットアッパーで活躍
![渡辺翔太投手 月別成績(C)PLM](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/t8iKeTsqdgVYuwndBzarMjta6K1Scq0AXOlSfZad.jpeg)
今季のルーキーの中で特に印象的な活躍を見せたのが、東北楽天の右腕・渡辺翔太投手だ。九州産業大からドラフト3位で入団し、6月3日に一軍初昇格。デビューから8試合連続無失点と好投すると、7月以降はセットアッパーの役割を担った。トータルでは51試合で防御率2.40、チームトップの25ホールドなどの好成績をマークし、新人王候補の中で山下舜平大投手に次ぐ票を獲得した。
希少な変化球「パーム」の使い手
![2014年〜23年のパ・リーグでパームを投じた投手(C)PLM](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/3ZjyjYgcqJt3HJ7haY5yMj8Mntx6ylTzudr7JgP5.jpeg)
そんな渡辺投手の大きな特徴が、パームを持ち球にしていることだ。手のひら(パーム)で包むような独特の握りから投じられる変化球。パ・リーグでは帆足和幸氏(元埼玉西武、福岡ソフトバンク)が代表的な使い手として活躍していたが、ここ10年で実際に投じた投手は6人のみ。今季渡辺投手がパームを投じたこと自体がリーグ6年ぶりの出来事だったが、その割合も27.4%と持ち球の中ではストレートに次いで高く、球界でも希少なパームボールの使い手といえるだろう。また余談になるが、今季は埼玉西武の佐藤隼輔投手も1球だけパームを投じている。
一般的な変化球との違いとは
![渡辺翔太投手 球種別平均球速(C)PLM](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/AqsVGhkhGs7lYpQ88sHzEw1eclTTezIQ8Zpixvtr.jpeg)
では、このパームとはどんな性質の変化球なのだろうか。まず前提として、パームはフォークやチェンジアップなどと同様、落ちるボールに分類される。そして渡辺投手はアベレージで150キロ近いストレートを投じるパワーピッチャーだが、それに対してパームの平均球速は128.9キロで、ストレートと比較すると20キロ以上遅いボールだ。そのためフォークのようにストレートに近いスピードで落ちていくというよりも、チェンジアップのように打者のタイミングを外すボールだといえる。
![渡辺翔太投手 球種別スイング奪空振り率・ゴロ割合(C)PLM](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/Yo8EUclycYJlyDxNU5oTEfeYh3vzNsmlqFknF5ka.jpeg)
一方で打者にスイングを仕掛けられた際の結果を見てみると、一般的なチェンジアップとは異なる性質が見てとれる。スイング奪空振り率は40.2%と高い確率で空振りを誘っており、またバットに当てられたとしてもゴロ割合は71.0%とその多くが比較的安全なゴロになる。どちらの指標もチェンジアップよりもフォークの方が高い割合になる傾向にあるが、渡辺投手のパームはフォークのリーグ平均を上回る数字だ。また自身もスプリットを持ち球にしているが、決め球としてはパームを選択するケースが多く見られた。
パームの被打率は.080。リーグ屈指の打たれないボールに
![2023年パ・リーグ 球種別被打率ランキング(C)PLM](https://insight.official-pacificleague.com/storage/_images/_insight/yDt8aLTGXA06CB83DIm5RpeadLqvbI73JzxMwM8D.jpeg)
他の落ちる系のボールとはひと味違う特徴を持った渡辺投手のパームボール。50打数4安打、被打率.080という結果は、今季パ・リーグで投じられた全球種の中でも屈指の数字だった。絶滅危惧種ともいえるこの“魔球”の存在が、若き右腕の飛躍を支えたことは間違いないだろう。
今季までクローザーを務めた松井裕樹投手がメジャー挑戦を表明したことから、チームの守護神の座は空席となる見込みだ。その後継者として、セットアッパーも務めた渡辺投手の名前も当然挙がってくるはずだ。伸びのある直球と大きく落ちる決め球、そして1年目から重要な場面でマウンドに上がった経験を生かし、さらなる地位を築き上げることを期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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