重要な役割とあればベンチの期待もひとしお
開幕戦での先発出場は、野手にとっては非常に大きな名誉となる。特に、1番打者やクリーンアップといった重要な役割を任された選手たちに対しては、首脳陣からもとりわけ大きな期待がかけられているといえよう。
当然ながら、開幕戦という重要な舞台でトップバッターに据えられる選手たちには、それ相応の理由が存在するもの。とりわけ今シーズンに関しては、各球団のチーム事情もあってか、各球団の1番打者が例年以上にフレッシュな顔ぶれとなっている。
今回は、パ・リーグの6球団において開幕戦のトップバッターを務めた、6名の選手たちを紹介。各選手の現状や期待される役割について、詳しく掘り下げていきたい。(※成績は4月3日の試合終了時点)
今川優馬選手(北海道日本ハム)
地元・北海道出身の今川選手は、JFE東日本から2020年のドラフト6位でプロ入り。2021年は二軍で61試合に出場し、打率.310、14本塁打と活躍を見せた。しかし、一軍ではプロ初本塁打こそ放ったものの、打率.071と結果を残せず。大卒社会人でのプロ入りとあって、即戦力としての期待もかかったものの、まずはプロの壁に跳ね返される結果となった。
しかし、新体制となった今季は開幕戦で1番として抜擢を受け、さまざまな打順を経験しながら出場機会を得ている。そして、4月3日のオリックス戦では、待望の今季第1号ホームランも飛び出した。チームに不足する和製大砲候補の一人でもあるだけに、今季中に道産子スラッガーが覚醒を果たすか否かは、ファイターズにとって大きな要素となりうるだろう。
西川遥輝選手(東北楽天)
西川選手は北海道日本ハムで長年にわたって活躍し、通算4度の盗塁王に輝いた実績を持つ。キャリア通算の出塁率も.380と優秀で、1番打者に必要な要素を高いレベルで兼ね備えた存在だ。しかし、昨季は出塁率こそ.362と高かったが、打率は.233とキャリアワーストの数字に終わり、今季からは東北楽天で心機一転の活躍を期すかたちとなった。
新天地でも開幕から6試合続けて1番を任され、出塁率.370、2盗塁と持ち味を発揮。東北楽天は昨季の盗塁数と盗塁成功率がともにリーグワーストで、機動力が積年の課題となっていた。通算313盗塁を誇る西川選手は、まさに課題解決にうってつけの存在と言える。実績十分の新戦力が、1番打者を固定できなかったチームの救世主となるかもしれない。
鈴木将平選手(埼玉西武)
鈴木選手はプロ4年目の2020年にトップバッターとして抜擢され、7月26日の時点で打率.300を超える奮闘を見せた。しかし、8月は月間打率.143と苦しみ、レギュラー定着は果たせず。続く2021年も二軍では打率.333と好成績を残しながら、一軍では打率.158と結果を残せず、なかなかレギュラー奪取のチャンスを生かせずにいた。
だが、今季はオープン戦で全体2位となる打率.333と結果を残し、開幕戦で1番打者の座をつかんだ。開幕9試合目の4月3日に今季初めて1番を外れたが、現在に至るまでスタメン出場を継続させている。広い守備範囲を活かしたセンターの守備にも魅力があるだけに、今季こそは打撃の安定感を高め、一気にレギュラー定着を果たせるだろうか。
高部瑛斗選手(千葉ロッテ)
高部選手は2020年に打率.344、2021年に打率.327と二軍では好成績を記録したが、一軍では2年続けて打率.100台と結果を残せず。だが、今季はオープン戦で打率.393と抜群の成績を残し、オープン戦首位打者の座に輝いた。そして、2021年に全試合で1番打者を務めた荻野貴司選手の不在もあり、今季は開幕からトップバッターとして起用され続けている。
高部選手は2021年に二軍で28盗塁を決め、イースタンの盗塁王を獲得。昨季はリーグ最多の107盗塁を決め、今季も8試合で14盗塁を記録しているチームにとっても、標榜する機動力野球に合致する存在だ。オープン戦での大活躍をきっかけに、今季は一軍でも持ち前のシュアな打撃と俊足を大いに発揮し、このまま主力の座を確保できるかに注目だ。
福田周平選手(オリックス)
福田選手はプロ1年目の2018年から主力となり、2019年には規定打席に到達して30盗塁を記録。続く2020年は故障もあって出場機会を減らしたが、2021年にはそれまで主戦場とした内野からセンターに転向し、5月途中からトップバッターに定着。出塁率.354とチャンスメーカーとしての高い適性を発揮し、切り込み隊長としてリーグ優勝に大きく貢献した。
2022年も開幕から1番打者として起用され続けたが、8試合が終了した時点で打率.161と不振で、4月3日には今季初めてスタメンを外れることに。プロ入りから4年続けて出塁率.340以上を記録する安定感は魅力で、昨季は課題だった盗塁成功率も.900と大きく向上。25年ぶりとなる優勝の立役者の一人でもあるだけに、今後の巻き返しに期待したいところだ。
三森大貴選手(福岡ソフトバンク)
三森選手はプロ5年目の2021年に出場機会が大きく増加。前年に盗塁王を獲得した周東佑京選手の不振と離脱も相まって、トップバッターとして起用される機会も多かった。持ち前の積極的な打撃に加えて、86試合で16盗塁とスピードも発揮。課題だった守備面にも改善が見られ、二塁のレギュラー候補として存在感を発揮するシーズンを送った。
2022年も前年に引き続いてトップバッターとして起用され、7試合で打率.308と開幕から好調な打撃を披露。昨季は345打席で11四球と選球眼に大きな課題を残したが、今季は33打席の時点で6四球と、ボールの見極めも大きく向上している。1番打者としての適性は昨季以上に高まりつつあるだけに、このまま大ブレークを果たす可能性も大いにありそうだ。
各選手が期待通りの活躍を見せるかは、今後のチーム方針にも影響を及ぼす
鈴木選手と高部選手はオープン戦での活躍によって抜擢され、今季はどちらも大ブレイクが期待されるシーズンとなっている。また、今川選手も典型的な1番打者タイプではないものの、チームに不足する和製大砲候補として、早期の台頭が望まれる存在だ。
昨季途中から1番打者としての起用が増加した三森選手と福田選手にとっても、今季は主力の座を確固たるものにできるかを決める、重要な1年となる。加えて、実績十分の西川選手も、新天地での最初のシーズンということもあり、昨季の打撃の不振を完全に脱却し、トップバッターとして今後も活躍を続けられるかの分岐点となりうる。
また、各選手はチーム内における役割の面でも、首脳陣から大きな活躍が見込まれている存在といえよう。その期待通りに各選手が主力として活躍を続けられるかは、今後のチームにおける中長期的な方針にも影響を与えうる。それぞれ立場は違えど、今回取り上げた6名の選手たちの、今シーズンのプレーぶりに注目してみる価値は大いにあるはずだ。
文・望月遼太
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