多様な個性でプロ野球を彩る。パ・リーグが誇る「小さな巨人」たち

パ・リーグ インサイト 成田康史

2019.11.8(金) 17:00

埼玉西武・森友哉捕手【撮影:丹羽海凪】
埼玉西武・森友哉捕手【撮影:丹羽海凪】

 プロ野球選手に限らず、プロスポーツの選手は概ね「体格に恵まれている」というイメージを持つ人は多いだろう。実際、プロ野球選手の平均身長は平均しておよそ180センチと言われ、これは同世代の日本人男性の平均身長・約171センチを優に上回っている。福岡ソフトバンクの投打の柱、千賀滉大投手、柳田悠岐選手がそれぞれ186センチ、187センチであることからも、「体格に恵まれている」ことはプロ野球選手として成功する要素の1つと言えそうだ。

 しかし、体格がものを言うプロ野球界においても、それを跳ねのけて決して大きいとは言えない体で結果を残してきた選手たちがいる。そこで今回は、現在パ・リーグに所属している「170センチ以下」の選手達に焦点を当て、チームごとに彼らの活躍ぶりを紹介していく。

※選手名横の()内は身長、成績は2019年のもの

埼玉西武ライオンズ

野田昇吾投手(167センチ)
23試合2勝0敗2ホールド 19.2回 10奪三振、防御率3.66

 社会人野球・西濃運輸から埼玉西武に入団すると、即戦力として1年目から22試合に登板。翌年以降も徐々に登板機会を増やし、昨季は58試合で19ホールドを挙げて優勝に貢献した。今季はファームでの調整が長くなったが、8月に一軍復帰すると、優勝争いの渦中にあるチームで貴重な左腕として役目を果たした。

森友哉捕手(170センチ)
135試合 162安打 23本塁打 105打点、打率.329 OPS.959

 大阪桐蔭高校からドラフト1位で入団した森選手は、ルーキイヤーの2014年から6本塁打を記録し、一気に名を轟かせる。その後は本職の捕手ではなく、指名打者や外野手で起用されることが多かったが、炭谷銀仁朗選手(現・巨人)の移籍にともなって正捕手としての地位を確立。チームのパ・リーグ連覇に貢献。豪快なスイングが持ち味の打撃にも磨きがかかり、自身初の打撃タイトルとなる首位打者に輝いた。

水口大地内野手(163センチ)
20試合 2盗塁 打率.000 OPS.091

 四国アイランドリーグ・香川から入団し、育成選手としてプロ野球選手のキャリアをスタートした水口選手。1年目からファームで出場機会をつかむと、3年目には打率.325を記録し、支配下登録を勝ち取った。その後は守備固め、代走として一軍での地位を確立。今季は安打こそなかったものの、試合終盤の大事な局面でたびたび仕事を果たした。ちなみに、水口選手は現在のプロ野球界で最も身長が低い選手である。

山野辺翔内野手(170センチ)
9試合 1安打 0本塁打 1打点、打率.071 OPS.421

 2018年のドラフトで社会人野球・トヨタ自動車から指名されると、翌年の春季キャンプでは早速A班に抜擢され、並みいる先輩野手とともに経験を積んだ。今季、一軍での出場こそ9試合にとどまったものの、ファームでは打率.271、12本塁打、29盗塁を記録。翌年以降の飛躍に向け、期待を抱かせる活躍を見せた。

福岡ソフトバンクホークス

田浦文丸投手(169センチ)
8試合0勝0敗0ホールド 10回 6奪三振、防御率4.50

 熊本の秀岳館高校から入団した田浦投手。1年目はファームでも1試合の登板に留まったが、2年目となった今季は大きな躍進を遂げる。二軍で開幕から登板を重ねていくと、7月にはプロ初の一軍昇格を果たし、シーズンを通して8試合でマウンドに上がった。力感溢れるフォームから繰り出す緩急自在の投球で、来季はさらなる活躍を見せてくれそうだ。

甲斐拓也捕手(170センチ)
137試合 98安打 11本塁打 43打点、打率.260 OPS.733

 2010年のドラフトでは育成6位と、決して評価は高くなかった甲斐選手。しかし、三軍を中心に試合経験を積むと、2013年に支配下登録を勝ち取った。2017年に自身初となる100試合出場を果たすと、翌年は133試合に出場し正捕手として定着。広島との日本シリーズでは、チームの日本一に貢献するとともにMVPに輝き、「甲斐キャノン」とも称される強肩ぶりが全国に知れ渡ることとなった。

東北楽天ゴールデンイーグルス

美馬学投手(169センチ)
25試合8勝5敗 143.2回 112奪三振、防御率4.01

 東京ガスから加入した1年目、2011年から一軍での登板を勝ち取った美馬投手は、そのキャリアを中継ぎからスタートする。2年目に先発転向を果たすと、早速規定投球回に到達する活躍を披露。3年目となる2013年は、日本シリーズで2試合、11.2回を投げて無失点と圧巻の投球でMVPに輝き、チーム初の日本一に大きく貢献した。打者の内に食い込むボールを操る、強気の投球が持ち味の美馬投手。今季オフに国内FA権を行使しており、今後の動向に注目が集まる。

西巻賢二内野手(167センチ)
2試合 打率.000 OPS.000

 地元・仙台の仙台育英高校からドラフト6位という下位指名で入団した西巻選手。しかし、1年目からファームで5本塁打を放つ力強い打撃を見せると、一軍でも高卒新人ながら25試合に出場し、打率.247を記録した。順風満帆かに見えた1年目から一転、今季は一軍出場が2試合に留まる苦しいシーズンとなったが、ファームで二塁、三塁、遊撃と複数ポジションをこなしながら103試合に出場し経験を積んだ。ドラフト後に戦力外通告を受け、来季以降の去就は不明だが、20歳の若武者の今後に期待したい。

千葉ロッテマリーンズ

成田翔投手(170センチ)
一軍登板なし

 秋田商業高校から2016年に入団した成田投手は、2年目にして一軍初登板を果たすと、2017年に4試合、2018年に5試合のマウンドに上がり、才能の片鱗を見せた。今季は一軍登板こそなかったものの、ファームで中継ぎを中心に自己最多・51試合に登板。着実に経験を積む左腕は、同じく秋田商業高校出身の偉大な先輩・石川雅規投手(東京ヤクルト)のように、千葉ロッテの「小さな巨人」となることができるか。

北海道日本ハムファイターズ

福田俊投手(170センチ)
一軍登板なし

 2018年のドラフトで北海道日本ハムから指名を受けた福田投手。唯一の大卒新人として期待を背負った今季は、ファームで51試合に登板して経験を積んだ。二軍では先発はわずかに1試合で、残りは全て救援での登板。力強いクロスファイアとスライダーが持ち味の左腕は、偉大な先輩・宮西尚生投手に続く救援投手へ、そして地元・北海道出身の希望の星となるべく、来季の飛躍を誓う。

オリックス・バファローズ

福田周平内野手(167センチ)
135試合 123安打 2本塁打 38打点 30盗塁、打率.250 OPS.651

 NTT東日本から入団すると、1年目の2018年から即戦力の期待に応え、113試合に出場する。今季は新たに主将に就任すると、ダイビングキャッチや一塁へのヘッドスライディングなど、闘志溢れるプレーでチームを牽引。バットを短く構え、リーグ2位タイとなる30盗塁を記録する機動力でチームに貢献した。来季は5年ぶりとなるAクラス進出へ、福田選手の見せる「大きな背中」がチームを引っ張っていく。

西野真弘内野手(167センチ)
56試合 40安打 1本塁打 14打点、打率.241 OPS.615

 JR東日本を経てオリックスに入団した西野選手は、1年目から一軍に定着すると2年目には早くも全試合出場を達成。リーグ最多となる7本の三塁打を記録して、チームの上位打線を支えた。その後は練習中に打球が直撃するなど、度重なる故障に見舞われ、昨季は60試合、今季は56試合とシーズンを通して活躍することができなかった。来季は再びのレギュラー獲得に向け、多士済々な選手の揃うポジション争いに臨む。

 ここまで紹介していきたように、170センチを下回る選手は各球団に2名前後とそう多くはない。けれども、強気に攻める投球、パンチ力のある打撃、闘志あふれるプレーと、それぞれが強烈な個性を放ってプロの世界で生き抜いていることが分かった。

 今年のドラフトでは、楽天の1位指名で大阪ガスの小深田大翔選手(168センチ)、北海道日本ハムの育成2位指名でBCリーグ・新潟の樋口龍之介選手(168センチ)と、新たに2人の選手がこのラインナップに加わる。プロの世界で彼らがどのような個性を発揮してくれるか。そして、今回挙げた選手たちがこれからどんな活躍を見せてくれるか。「小さな巨人」たちのプレーから目が離せない。

文・成田康史

記事提供:

パ・リーグ インサイト 成田康史

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