プロ1年目から活躍を見せた選手たちは、序盤戦でどんな打撃を見せたのか
埼玉西武の渡部聖弥選手が開幕から5番打者を務め、打率.429(4月24日時点)と新人離れしたハイアベレージを記録している。残念ながら故障で4月13日に一軍登録を外れたものの、復帰後も持ち前の打撃センスを発揮して高打率を維持できるかに注目が集まるところだ。
ルーキーイヤーから活躍を見せた打者は過去にも多く存在したが、そうした選手たちは序盤戦においてどのような成績を残していたのだろうか。今回は、直近10年間のパ・リーグでプロ1年目に奮闘を見せた5名の打者たちの、月間成績ならびに各月終了時のシーズン成績を振り返っていきたい。
茂木栄五郎選手(2016年)

3月の月間打率が.211、4月は同.240と、序盤戦ではやや苦戦を強いられていた。しかし、5月に入ると月間打率.371、月間出塁率.429と大きく調子を上げ、通算打率も.293まで上昇。徐々にプロの水に慣れ、非凡な打撃センスの一端を垣間見せるようになっていった。
6月は月間打率.246とやや状態を落とし、7月は故障の影響で一軍出場なしに終わったが、戦列に復帰した8月には月間打率.261と一定の数字を残した。シーズン最終盤の9月には月間打率.306、月間出塁率.352と調子を取り戻し、最終的に規定打席に到達して打率.278、出塁率.330を記録。新人王投票でも116票を集めて2位に入る見事な活躍を披露した。
源田壮亮選手(2017年)

4月に月間打率.293、5月に同.306と序盤戦から快打を連発し、5月終了時点で打率.297、出塁率.343とハイレベルな数字を記録していた。しかし、6月から2カ月続けて月間打率.220台と中盤戦では一転して不振に陥り、通算打率も.260台まで低下することになった。
だが、8月に月間打率.255と復調の兆しを見せると、9月には月間打率.317と序盤戦を上回る数字を記録。10月も4試合で5安打と良い形でシーズンを締めくくり、遊撃手として全143試合でフルイニング出場を果たしたうえで打率.270を記録。この活躍が認められ、パ・リーグでは19年ぶりに野手として新人王のタイトルに輝く快挙も達成している。
藤岡裕大選手(2018年)

3月に2試合で3安打、月間打率.333と見事なスタートダッシュを決めたが、4月は月間打率.224とやや調子を落とした。それでも、5月には月間打率.280、月間出塁率.340と再び状態を上げ、6月も打率.259とまずまずの数字を記録。6月末時点で通算打率.259、通算出塁率.334と、いずれも一定の成績を残していた。
7月に月間打率.198と大きく数字を落としたものの、8月には同.270と復調。しかし、9月に月間打率.115と絶不調に陥ると、10月も同.178と苦戦が続いた。終盤戦で調子を落とした影響で、最終的にはシーズン打率.230、出塁率.294という数字に終わったものの、プロ1年目から全143試合に出場し、遊撃手として攻守にわたって存在感を放った。
小深田大翔選手(2020年)

2020年は新型コロナウイルスの影響でシーズンが6月に開幕する変則的な年となり、小深田選手は同月において8試合でわずか1安打とプロの壁に直面した。だが、7月に打率.245、出塁率.388と適応の兆しを見せると、8月には月間打率.281と引き続き数字を向上させた。9月には月間打率.320、出塁率.407と好成績を残し、名実ともに主力の座を掴んでみせた。
10月にも月間打率.290、月間出塁率.353と安定した打撃を続け、11月には6試合で8安打を放ち、月間打率.348、月間出塁率.464と力強く1年を締めくくった。全120試合中112試合に出場して打率.288、出塁率.364とチャンスメーカーの資質を大いに示し、新人王投票でも125票を集めて2位に入る出色のシーズンを送っている。
上川畑大悟選手(2022年)

故障の影響で3月と4月の一軍出場はなかったが、5月に6試合で8安打を記録して打率.400と鮮烈なデビューを飾った。続く6月も月間打率.269、出塁率.356と一定の数字を残したが、7月は月間打率.233、8月は同.228と成績を落とし、通算打率も.262まで低下していた。
しかし、9月に入ってからは月間打率.337、月間出塁率.400と劇的に数字を向上させ、9月17日にはサヨナラ打を放つなど随所でインパクトを放った。10月2日のシーズン最終戦でも3打数2安打1四球と良い形で1年を終え、最終的には80試合で打率.291、出塁率.360と好成績を記録。シーズン終盤のチームを救う活躍を見せ、大きなインパクトを放った。
終盤戦でいかに調子を取り戻せるかが重要
今回取り上げた5名の選手たちのうち、4月(小深田選手の場合は7月)を終えた時点で打率.280以上を記録していたのは、源田選手ただ一人という結果となった。その一方で、藤岡選手を除く4名はいずれもシーズン終盤に入ってから状態を上げていたという点も、傾向としては興味深い要素といえる。
さらに、短縮シーズンだった2020年の小深田選手以外の選手は、いずれも中盤戦以降において調子を崩す時期が存在していた。そのため、1年目から好成績を残すためには、序盤戦の勢いよりも、疲労が溜まってくる終盤戦でいかに調子を取り戻せるかが重要なポイントになってくると考えられる。
2025年にプロ1年目のシーズンを戦っている選手たちも、シーズンの成否を分ける中盤戦以降を乗り越え、主力の座に定着することができるか。序盤戦から出色の打撃を見せていた渡部聖選手をはじめとするルーキーたちの躍動に、今後もぜひ注目してみてほしい。
文・望月遼太