過去10年の首位打者たちは、開幕直後からすでに全開?
打撃タイトルの中でも、最も注目度の高い部門のひとつである首位打者。打者にとっても非常に大きな名誉となるタイトルだが、その栄冠に輝いた選手たちはシーズンが深まるにつれて徐々に調子を上げていったのか、それとも、開幕直後から既に好調を維持していたのか。今後の展望を占ううえでも、こういった傾向を読み解くことに意味はあるはずだ。
そこで、今回は直近10年の首位打者たちが、シーズン開幕直後にどのような成績を残しているのかを見ていきたい。「3・4月」は月間MVP表彰においてもひとくくりで扱われており、この期間はシーズン最初の1カ月としてまとめられる傾向が強い。そのため、今回は3月と4月の成績、ならびにこの2カ月間の成績を合算した数値を紹介していきたい。
直近10年のパ・リーグ首位打者と、その3・4月の成績は以下の通り。(所属は当時)
2009年 鉄平選手(楽天)
3月:試合開催なし
4月:22試合 84打数29安打 打率.345 0本塁打 6打点
合計:22試合 84打数29安打 打率.345 0本塁打 6打点
シーズン通算:132試合 496打数162安打 打率.327 12本塁打 76打点
2010年 西岡剛選手(千葉ロッテ)
3月:8試合 34打数18安打 打率.529 3本塁打 9打点
4月:24試合 102打数25安打 打率.245 0本塁打 1打点
合計:32試合 136打数43安打 打率.316 3本塁打 10打点
シーズン通算:144試合 596打数206安打 打率.346 11本塁打 59打点
2011年 内川聖一選手(福岡ソフトバンク)
3月:試合開催なし
4月:15試合 63打数25安打 打率.397 2本塁打 14打点
合計:15試合 63打数25安打 打率.397 2本塁打 14打点
シーズン通算:114試合 429打数145安打 打率.338 12本塁打 74打点
2012年 角中勝也選手(千葉ロッテ)
3月:一軍戦出場なし
4月:10試合 34打数11安打 打率.324 1本塁打 4打点
合計:10試合 34打数11安打 打率.324 1本塁打 4打点
シーズン通算:128試合 477打数149安打 打率.312 3本塁打 61打点
2013年 長谷川勇也選手(福岡ソフトバンク)
3月:3試合 9打数5安打 打率.556 0本塁打 0打点
4月:24試合 102打数27安打 打率.265 2本塁打 6打点
合計:27試合 111打数32安打 打率.288 2本塁打 6打点
シーズン通算:144試合 580打数198安打 打率.341 19本塁打 83打点
2014年 糸井嘉男選手(オリックス)
3月:3試合 14打数6安打 打率.429 1本塁打 3打点
4月:24試合 88打数31安打 打率.352 3本塁打 11打点
合計:27試合 102打数37安打 打率.363 4本塁打 14打点
シーズン通算:140試合 502打数166安打 打率.331 19本塁打 81打点
2015年 柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
3月:4試合 14打数6安打 打率.429 1本塁打 2打点
4月:22試合 86打数29安打 打率.337 3本塁打 11打点
合計:26試合 100打数35安打 打率.350 4本塁打 13打点
シーズン通算:138試合 502打数182安打 打率.363 34本塁打 99打点
2016年 角中勝也選手(千葉ロッテ)
3月:5試合 15打数7安打 打率.467 0本塁打 1打点
4月:23試合 90打数28安打 打率.311 0本塁打 10打点
合計:28試合 105打数35安打 打率.333 0本塁打 11打点
シーズン通算:143試合 525打数178安打 打率.339 8本塁打 69打点
2017年 秋山翔吾選手(埼玉西武)
3月:1試合 5打数0安打 打率.000 0本塁打 0打点
4月:22試合 86打数30安打 打率.349 5本塁打 11打点
合計:23試合 91打数30安打 打率.330 5本塁打 11打点
シーズン通算:143試合 575打数185安打 打率.322 25本塁打 89打点
2018年 柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
3月:2試合 6打数2安打 打率.333 0本塁打 2打点
4月:21試合 79打数28安打 打率.354 5本塁打 17打点
合計:23試合 85打数30安打 打率.353 5本塁打 19打点
シーズン通算:130試合 475打数167安打 打率.352 36本塁打 102打点
2010年の西岡剛選手と2013年の長谷川勇也選手は、4月に一度調子を落とすも……
以上のように、10選手中9選手が開幕直後の時点で打率.310を超える高水準の数字を残しており、序盤からその後の活躍につながる打撃を見せていたことがわかる。この10年間で複数回首位打者を獲得したのは角中選手と柳田選手の2名のみで、のべ8人のタイトルホルダーが誕生しているため、選手個々の特性によって傾向が偏っているとも言えないだろう。
この中では唯一、2013年の長谷川勇選手だけ3・4月合計の打率が3割を下回っている。打率.288という成績は決して不振というほどの数字ではないものの、4月の月間打率は.265とやや調子を落としていたのは確かだった。しかし、続く5月に打率.362、6月には打率.436と猛チャージをかけ、最終的にはシーズン通算打率.341、198安打という素晴らしい成績を残している。
また、2010年の西岡選手も、月間打率が5割を超えた3月の大爆発によって3・4月の通算打率こそ良好な数字となっているが、4月だけでいえば打率.245と、今回取り上げた選手の中では最も低い数字だった。しかし、5月に月間打率.417と再び調子を取り戻し、その後も史上最多タイとなるシーズン27度の猛打賞を記録するほどの活躍を継続。打率.346に加えてNPB史上5位の206安打と、シーズンを通してリードオフマンとして卓越した成績を収めている。
それ以外の選手は4月単体の打率でも3割を超える数字を残しており、首位打者を獲得するためにはシーズン序盤の活躍がほぼ必須という結果が出ている。打率上位をキープするためには年間を通じた安定感が欠かせないのは言うまでもないが、その「年間」という言葉の中には、もちろんシーズンが始まってから間もない時期も含まれるということなのだろう。
母数が少ないぶん、開幕直後の打率ランキングは例年大きな変動を見せがちだ。しかし、上記の結果を見るに、シーズン序盤に好調だった選手の中から首位打者が誕生する可能性もまた非常に高いと言えそうだ。今季も多くの選手が開幕から好調な打撃を見せているが、その中から栄冠をつかむ選手が現れるのか、注目されるところだ。
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