多くの項目でキャリアハイを更新している2023年シーズン
昨季は44試合に登板し、15ホールドを挙げた福岡ソフトバンク・松本裕樹投手。今季はより重要な場面での登板が増え、現在は守護神・オスナ投手へとつなぐセットアッパーとして7回や8回を任されている。すでに登板数やホールド数は自己最多を更新し、プロ9年目はキャリアハイのシーズンとなりつつある。今回はそんな松本裕投手が好成績を残している要因を探っていきたい。
最速は変わらずもアベレージは向上
松本裕投手は多彩な球種を操るが、打者を打ち取るのに使われているのは主にストレート、スライダー、フォークの3球種だ。中でもストレートとスライダーは最高球速こそ昨季と変わらないものの、平均球速が大きく上昇。特にストレートは150キロに迫る球を常時投げており、高い出力を維持できるようになっている。
ストレートで丁寧に低めを突くピッチングが持ち味
球速を維持できるようになったストレートは、低めへの投球割合が増している。つり球としても使われるように、高めのストレートは打者の空振りを誘いやすい。しかし、投げきればバットに当てさせない確率は上がるが、一方で甘くなると一発を浴びるリスクも伴う。それに対して、低めのボールは打者の顔から遠いため見極めが難しく、長打にもなりにくい。実際、今季ストレートを捉えられた打球は51.2%と非常に高い割合でゴロになっており、被打率も1割台と素晴らしい成績を残している。
今季、フォークは空振りを奪える球種に
次にフォークについて見てみよう。フォークはストライクゾーンからボールゾーンへの変化でスイングを誘うのが基本となるため、打者は手を出さないように見極める必要がある。その中で今季はボールゾーンに投じた球のうち54.7%をスイングさせるなど切れ味を発揮。それに付随して奪空振り率は昨年に比べて約9ポイントもアップしており、ウイニングショットとして大きく進化を遂げている。
この要因の一つとして、前述の通りストレートを低めに集められるようになったことが考えられる。低めにストレートを集めることで軌道の近いフォークとの見極めがより難しくなり、奪空振り率の向上、ひいては奪三振率の向上につながっているのだろう。
同チームのスチュワート・ジュニアとともに、リーグ屈指のフォーク使いとして君臨なるか
フォークは空振りが奪えるようになったことで打球の発生自体が減っており、被打率はリーグ4位の.100と抜群の成績を残している。これは千葉ロッテ・佐々木朗希投手に匹敵する数値でもあり、一躍リーグ屈指のフォークの使い手になったといえるだろう。
ストレートとフォークのコンビネーションに磨きがかかったことで、投球の安定感が増した松本裕投手。福岡ソフトバンクは救援陣の柱であるモイネロ投手が7月に手術を受けるなど、ブルペンの状況が苦しくなっており、その中でセットアッパーとして結果を残す右腕の存在はとても大きい。シーズンも最終盤に差しかかり、ここからは負けられない試合が続いていく。新たな勝利の方程式の一翼を担う松本裕投手に今後も期待したいところだ。
※文章、表中の数字はすべて2023年9月12日終了時点
文・データスタジアム編集部
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