7月はリーグ三冠の大活躍
ここまで本塁打、打点ともにリーグ上位の成績を残している東北楽天の浅村栄斗選手。シーズン序盤は不調に苦しんだものの、7月に入ると本来の打棒が復活。月間打率.395、9本塁打、24打点と3部門でリーグトップの数字を残し、自身3年ぶり5度目となる大樹生命月間MVP賞を受賞した。今回は浅村選手がいかにして好成績を残したのか、その要因に迫っていきたい。
苦しんでいたアウトコースで好成績をマーク
昨季はインコースの打率.297に対し、アウトコースは打率.181と苦しんだ浅村選手。今季も6月までは外角の球をあまりヒットにできず、特に外角低めは打率.136と大きな弱点になっていた。しかし7月は改善が見られ、外角のすべての高さで打率3割以上をマーク。外角低めで3本塁打を記録するなど、幅広いゾーンの球をはじき返していた。
ここ2年は引っ張り傾向の打撃に
もともと浅村選手は広角に長打を放つバッティングが特徴だ。東北楽天に移籍した2019年以降は、ライト方向への長打の割合が3年連続で40%を超えていた。しかし昨季からは引っ張り傾向が強まり、今季は放った長打の半数以上がレフト方向の当たりとなっている。こういった変化により、外角球に対しては引っかけた凡打になるケースが増え、思うような成績を残せていないと考えられる。
7月からは逆方向への長打が増加傾向
右方向の長打割合は今季全体で見ると30%を下回っているものの、月別では7月から増加していることがわかる。7月9日に福岡ソフトバンク・石川柊太投手から放った一発を皮切りに、6月までは見られなかった右方向へのホームランも出始めた。浅村選手自身も「7月頃から球を追いかけるのをやめた」「コースに逆らわない打撃を意識した」と語っており、逆方向にも打ち分ける持ち味を取り戻したことが好成績につながったようだ。
打球方向から終盤戦を占う
ここまで7月の浅村選手の活躍について見てきたが、最後はこれからの終盤戦について考えてみたい。長打以外も含めた全打球の方向を月別に見ていくと、8月は7月に比べて右方向への打球が減っているものの、増加しているのは左へ引っ張る打球ではなくセンター方向への打球だった。センター中心の6月から広角打法で活躍した7月という流れをこの8月から秋にかけても再現できるかどうかが、シーズン終盤の復調に向けたカギとなりそうだ。
月ごとに大きく変わる打球の傾向や、前述の浅村選手のコメントからは、打席を重ねるなかで試行錯誤を繰り返している様子がうかがえる。逆転でのクライマックスシリーズ進出に向けて、主砲のバットにかかる期待は大きい。
※文章、表中の数字はすべて2023年8月22日終了時点
文・データスタジアム編集部
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