デスパイネの復帰が打線を変える? データに見る、古巣復帰の大砲に期待される役割とは

パ・リーグ インサイト 望月遼太

アルフレド・デスパイネ選手(C)パーソル パ・リーグTV
アルフレド・デスパイネ選手(C)パーソル パ・リーグTV

デスパイネ選手にとっては、およそ半年ぶりの古巣復帰となる

 6月13日、アルフレド・デスパイネ選手の福岡ソフトバンクへの復帰が発表された。2022年限りでチームを離れていたデスパイネ選手にとっては、およそ半年ぶりの古巣復帰となる。

 福岡ソフトバンクは開幕前に大型補強を展開し、今季も上位争いを繰り広げている。そんな中で決定したデスパイネ選手の復帰は、現状のチームに足りないものを補うラストピースとなるかもしれない。

 今回は、デスパイネ選手がこれまでNPBで残してきた活躍や、各種の指標に基づく打撃スタイルと長所を紹介。それに加えて、直近2年間における福岡ソフトバンクのチーム事情をもとに、デスパイネ選手に求められる役割について考えていきた(成績は6月11日の試合終了時点)。

2017年には2冠王に輝くなど、9シーズンにわたって長距離砲として活躍

 デスパイネ選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

デスパイネ選手 年度別成績(C)PLM
デスパイネ選手 年度別成績(C)PLM

 デスパイネ選手はキューバ代表の主砲として国際舞台で活躍し、2014年途中に千葉ロッテに入団。同年は45試合で打率.311、OPS1.001と圧巻の打棒を見せ、早くもその実力を証明してみせた。続く2015年は代表での活動もあって調子を崩したが、NPB3年目の2016年には24本塁打、打率.280、OPS.841と復調し、主砲としてチームをけん引した。

 2017年から福岡ソフトバンクに活躍の場を移すと、移籍初年度に35本塁打・103打点を記録し、本塁打王と打点王の2冠に輝く大活躍を披露。翌2018年は116試合の出場ながら29本塁打を放ち、移籍3年目の2019年にはキャリア最多の36本塁打を記録。2017年から始まったチームの4年連続日本一にも、主砲として大きく貢献を果たした。

 チームの期待に応えて黄金期形成に寄与してきたデスパイネ選手だったが、2020年以降は故障の影響もあり、出場機会がやや減少。それでも、2021年には80試合でOPS.810とさすがの存在感を示し、2022年も89試合で14本塁打・OPS.783と、ベテランの域に達してからも一定の数字を残し続けていた。

最大の持ち味である圧倒的なパワーは、指標の面にも反映されている

 続いて、デスパイネ選手が記録してきた年度別の指標を見ていきたい。

デスパイネ選手 年度別指標(C)PLM
デスパイネ選手 年度別指標(C)PLM

 怪力を活かした豪快な長打は、デスパイネ選手の最大の持ち味の一つ。それを証明するかのように、通算長打率は.491と高水準にある。また、長打率から単打の影響を省いた、真の長打力を示す指標とされる「ISO」は通算で.227と、一般的に優秀とされる.200を上回っている。

 とりわけ、福岡ソフトバンクへの移籍初年度である2017年からの3年間においては、いずれも.250を超えるISOを記録。デスパイネ選手の長打力がトップクラスの水準にあったことが、端的に示された数字となっている。

 それに加えて、1本ホームランを打つのに必要な打席数を示す「AB/HR」という指標も、通算で16.23と非常に優れた水準にある。そして、45試合の出場だった2014年は13.42、25試合の出場だった2020年は14.17と、出場試合数が少なかったシーズンにハイペースで本塁打を放った適応の速さも、途中加入の今シーズンに向けた追い風となるかもしれない。

豪快なバッティングスタイルに加えて、優れた選球眼も兼ね備えている

 また、通算出塁率が.351、出塁率から打率を引いた値である「IsoD」も通算で.088と、いずれも高水準だ。長打力に加えて優れた選球眼も兼ね備え、状況に応じてチャンスメイクもこなせるという特性が、デスパイネ選手の打者としての価値をさらに高めている。

 また、四球を三振で割って求める、選球眼を示す指標の一つである「BB/K」も、通算で.557と一定の水準にある。とりわけ、2020年のBB/Kは1.091と、極めて優秀な数字を記録していた。同年はBABIPが.191と非常に低かった影響もあって打率.224と低迷したが、AB/HRが優れていた点も含め、打撃内容自体は決して悪くなかったことがうかがえる。

近年はやや成績を落としていたが……

 2020年は運に恵まれなかった部分があり、2021年もOPS.810という数字を残したように、近年に至っても一定以上の打撃内容を示していた。しかし、2021年以降はISOとAB/HRの数字が低下傾向にあり、長打力にやや陰りが見られた点は気がかりだ。

 それに加えて、2022年はIsoDとBB/Kも大きく落ち込んでおり、選球眼も悪化していた。年齢的にベテランの域に差し掛かってきたこともあり、全盛期と比較すると緩やかに下降線を辿っていた部分は否めない。

 それでも、2022年にデスパイネ選手は出塁率.338、長打率.444という成績を残していた。この数字は、同年におけるチーム平均の出塁率(.320)、長打率(.377)を上回るものであり、チームに対する貢献度は一定以上のものがあったことがうかがえる。

 そして、今季の福岡ソフトバンクの平均出塁率は.316、平均長打率は.347と、前年以上に数字が下落している。こうしたチーム事情を考えても、デスパイネ選手の加入がチームにとってプラスとなる可能性は大いにあることだろう。

長打を特定の選手に依存するチームにとって、大砲の復帰は大きなプラスに

 2022年にデスパイネ選手が記録した14本塁打という数字は、チーム内では柳田悠岐選手(24本塁打)に次いで2番目に多かった。また、同年に2桁本塁打を記録した選手は柳田選手、デスパイネ選手、野村勇選手の3名のみと、長打力のある選手の不足は課題となっていた。

 今季は6月11日の試合終了時点で、柳田選手が9本塁打、近藤健介選手が8本塁打、栗原陵矢選手が7本塁打を記録している。しかし、それに続くのは甲斐拓也選手の5本塁打、中村晃選手、今宮健太選手の2本塁打と、長打力に関しては、特定の選手への依存が強まっている状態だ。

 さらに、今季は新外国人のアストゥディーヨ選手とホーキンス選手がいずれも結果を残せず、2年目のガルビス選手もMLB時代の輝きを見せられずに苦しんでいる。外国人選手の本塁打が現時点で1本もないのは、12球団を見渡しても福岡ソフトバンクだけだ。

 デスパイネ選手の復帰によって、打線に本塁打の怖さが加われば、主力選手へのマークが分散したり、攻め方が変わってくる可能性もあるはずだ。とりわけ、栗原選手は打率.241、OPS.681と調子が上向きとは言い難いだけに、相乗効果による復調が特に期待される選手といえよう。

 さらに、近藤選手の今季の打率は.272と、通算打率.304に比べて数字を下げている。6月に入ってからは調子を取り戻しつつあるものの、デスパイネ選手の加入で長打を期待できる選手が増加し、本来の持ち味であるチャンスメイクに徹することができるようになれば、復調がさらに加速する可能性も十二分にあるはずだ。

NPBでの10シーズン目を迎える“キューバの至宝”の、さらなる活躍に期待

 昨季はやや成績を落としていたとはいえ、それでもわずか89試合の出場でチーム2位の本塁打数を記録。戦力面でのプラス要素もさることながら、日本でのプレー経験が長く、2017年の2冠王をはじめとした実績も豊富なデスパイネ選手の加入は、ここまで苦しんでいる外国人選手たちにとっても、適応への大きな手助けとなるかもしれない。

 今回の復帰によって、デスパイネ選手はちょうどNPBでの10シーズン目を迎えることになる。幾度となくファンの度肝を抜く打球を放ってきたキューバの至宝が、再び日本球界で豪快なアーチをかける姿に、あらためて期待をかけたいところだ。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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