今年も日本シリーズが終わり、早くも“野球ロス”というプロ野球ファンの方も多いのではないでしょうか。そんなみなさんに朗報です。「第47回 社会人野球日本選手権大会」が10月30日、開幕しました!
社会人野球日本選手権大会ってどんな大会?
「社会人野球日本選手権大会」は「都市対抗野球大会」と並ぶ、社会人野球の2大大会。都市対抗とは異なり、補強選手なしの単独チームで頂点を争います。これまでにも多くのプロ野球選手がプロ入り前に活躍しており、注目ポイントのひとつです。
アマチュア野球に詳しい記者に現役プロ野球選手OBのエピソードをうかがうと、まず千葉ロッテ・荻野貴司選手の名前が挙がりました。2008年、トヨタ自動車に入社した荻野貴選手は、3番打者として打率4割超を残し、史上2チーム目(当時)の大会連覇に大きく貢献。年間ベストナインにも選出されたそうです。
近年では、今季リリーフとしてリーグ連覇、日本一に貢献したオリックス・阿部翔太投手(前所属・日本生命)が2019年に先発、救援として活躍。ドラフト解禁となる高卒3年目、大卒2年目での指名が多い中、異例の入社6年目、28歳での指名につながりました。また、広島の栗林良吏投手も2019年大会の1回戦で大会史上7人目となる毎回奪三振の記録を残しています。
現役プロ野球選手OBが語る、日本選手権の魅力とは?
パ・リーグの社会人出身選手も出場した日本選手権。北海道日本ハムの加藤貴之投手(新日鉄住金かずさマジック・2015ドラフト2位)、上川畑大悟選手(NTT東日本・2021ドラフト9位)からコメントが届いています!
――日本選手権出場時の思い出はいかがですか?
加藤投手「優勝したので(2013年)、それが一番ですかね。(印象的な登板)準決勝のときに(6回を)全部真っ直ぐで3者連続三振を取れたのが初めての経験だったので、すごく覚えています。(決勝は)『ここまで来たんだ』というか、特別なことなく。緊張はしなかったです。2015年は自分の最後の大会だったので、1つでも多く勝ちたいと思って投げていました」
上川畑選手「(2021年は)チームとしてはベスト4だったのですが、個人的にはヒットを1本しか打てなくて。ドラフトも最後の年だと思っていたので、そこで大きくバッティングを変えようと思った大会でした。スイング軌道などを変えてからは夏のオープン戦から都市対抗予選、都市対抗まで結構いい感じで打てましたね(※2021年はオリンピックのため日本選手権は6月29日〜7月14日に開催)」
――社会人での経験がプロに生きたことはありますか?
加藤投手「社会人のときにランニングをすごいやったので、そこは感謝しています。本当にきつかったですね。(1年目は)体も細かったし、野球を覚えないとということもあって野手も経験させていただきました。(投手に転向してからは)がむしゃらに投げて、とにかく数を投げないと、と。肘も肩もケガしましたが、それも良い経験として強くなったと思います」
上川畑選手「一発勝負の社会人野球では小さなミスも許されない。特に、NTT東日本はそういう細かいところを大切にするチームでした。社会人時代からポジショニングは考えてやっていたので、それはプロの舞台でも変わらずできたかなと思います」
――日本選手権に出場する選手へエールをお願いします
加藤投手「社会人野球のシーズンで大きい大会は日本選手権が最後なので、悔いなく、全力で楽しんでください」
上川畑選手「(社会人の)2大大会といわれるだけの大会でもありますし、優勝するのはなかなか大変ですが、全力を出し切って、社員のみなさんも喜んでいただけるような試合を見せてくれたらなと思います」
――最後に、ファンのみなさまへメッセージをお願いします
加藤投手「今シーズンも応援ありがとうございました。来年またどんなシーズンになるかわからないですけど、一生懸命がんばりますので、応援よろしくお願いします。1試合にかける思い、全力プレーというのは社会人の魅力かなと思います。ぜひ、社会人野球も見ていただきたいです」
上川畑選手「プロ野球とは違った野球の面白さというのが絶対あると思います。大の大人が勝利に向かって全力プレーをするというのは見ていて感動しますし、心躍るものを感じてもらえるかと。ぜひ現地で試合を観戦して、社会人野球の素晴らしさを感じていただきたいです」
プロ野球とは違う社会人野球の魅力。それを実感すべく、日本選手権開幕戦に行ってみました!
開幕戦はホークスのドラ2・大津亮介が先発!
初日の第1試合は日本製鉄鹿島と大和高田クラブのマッチアップ。日本製鉄鹿島は福岡ソフトバンクから2位指名された大津亮介投手が先発です。対戦相手の大和高田クラブは今大会唯一のクラブチーム。2009年日本選手権でベスト8進出の実績がある強豪だそうです。監督は元近鉄バファローズの佐々木恭介氏であり、パ・リーグファンとしても注目の一戦に!
試合が動いたのは初回。大津投手は2死球と苦しい立ち上がりで1点を失います。4回表には松本凌太選手にソロ本塁打を浴び、2点ビハインドに。一方、大和高田クラブの先発・松林勇志投手も要所を締める投球で日本製鉄鹿島に得点を与えません。
5回裏終了後には、箕面自由学園高校チアリーディング部「GOLDEN BEARS」によるパフォーマンスも。チアリーディングJAPAN CUP2022日本選手権大会で優勝するなど、高校日本一の実力を持つ同部の演技で会場を盛り上げます。
そして9回裏、大和高田クラブは黒岩龍成投手をマウンドに送ります。なんとか反撃したい日本製鉄鹿島は先頭の生田目忍選手が四球で出塁し、応援のボルテージも一段アップ。しかしここは黒岩投手が後続を抑え、粘り勝ち。試合後には両チームの応援団によるエール交換も行われ、見ごたえのある開幕戦が終わりました。
プロとは一味違う、社会人野球の楽しみとは?
第2試合の前には、日本生命の藤井貴之選手、廣本拓也選手が「10回出場選手」として表彰を受けました。ベテラン記者によると、強豪チームの若手がプロ入りを目指す一方で、中堅選手にとって一つの目標となるのが都市対抗の「10年連続出場表彰」や日本選手権の「10回出場表彰」。毎年新人が入り、世代交代の激しい社会人野球で10年間選手を続けるのは非常に大変なことで、2大大会に10年連続で出場できるのもごく一握りの選手なんだそうです。
また、グラウンドとは異なる一面があるのは高校や大学、プロにはない魅力のひとつ。こちらもベテラン記者から聞いた話ですが、四国銀行のある選手は住宅ローンの融資部門の営業でトップの成績を残したとか。ほかにも工場のラインに入っている選手もいるそうで、想像するとなんだか親近感が湧いてきますね。
さらに、甲子園で活躍した選手のその後の成長を近くで追いかけられるのも、社会人野球ならでは。金足旋風が巻き起こった2018年、準々決勝でサヨナラ2ランスクイズで破れた近江高校の林優樹投手は、卒業後西濃運輸に入社。今大会は出場はないですが、この3年で10キロ球速をアップさせ、今年のドラフトで東北楽天に6位指名されました。練習試合も公開しているチームもあり、身近で見られる機会が多いそうですよ。
限定グッズ販売中! チケットやイベント情報も
場内では日本選手権限定のグッズも販売しています。大会公式プログラムや定番のタオル、Tシャツなどから、名刺入れといった社会人らしいグッズまで多数ラインナップ。JABA担当者のおすすめは「ロングTシャツ」。第47回大会の出場全32チームの名前が入った、限定グッズです。ホワイトとブラックの2色でS〜XXLの5サイズ展開と、バリエーションも豊富。観戦の記念にいかがでしょう?
チケットは当日券もあり、JABAファンクラブ会員や、一部のプロ野球球団ファンクラブ会員はお得な割引価格で購入できます。バックネット裏最前列の「プレミアム席」が担当者のおすすめ。プロ主催試合ではなかなか手の出せないお値段ですが、日本選手権ではなんと3000円(一般・当日)で座れて、場内で使用できる500円クーポンも付いてくるそうです!
11月9日の決勝戦では、さまざまなイベントが企画されています。始球式は、女子野球界最速といわれる、阪神Womenの森若菜投手が登場。さらに試合前と五回終了後には、全国でも屈指の実力を誇る大阪桐蔭高校吹奏楽部が演奏を披露します。
魅力いっぱいの社会人野球日本選手権大会は11月9日まで。“野球ロス”のプロ野球ファンのみなさんも、京セラドーム大阪に行ってみませんか?試合日程・チケットなど詳細は公式ページまで。
取材・文 丹羽海凪
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