開幕一軍入りを果たすかどうかが、シーズンの成否を決定づけるわけではない
開幕一軍入りは選手にとって大きな名誉となるが、シーズンの成否がその時点で決まるわけではない。故障や不振の影響で開幕を二軍で迎えたものの、その後に一軍昇格を果たしてチームに貢献を果たした選手は、毎年少なからず存在しているからだ。
今回は、2024年シーズンに開幕一軍入りを逃したものの、4月以降に一軍で貴重な戦力となった面々を、パ・リーグ各球団ごとに紹介。開幕時の出遅れを取り戻してみせた選手たちの活躍ぶりを振り返るとともに、今季も同様の例が見られることに期待を寄せたい。
北海道日本ハム
齋藤友貴哉投手は前年を棒に振った手術の影響もあって開幕を二軍で迎えたが、夏場以降はリリーフ陣の一角に定着。25試合に登板して6ホールドポイント1セーブ、防御率1.71と抜群の安定感を発揮し、持ち前の剛速球を活かしてブルペンで異彩を放つ存在となった。
野手では清宮幸太郎選手が故障の影響で開幕一軍入りを逃し、序盤戦は不振にも苦しんだものの、6月以降は主力の座に定着。7月から4カ月連続で月間打率.300以上を記録し、わずか4カ月で15本塁打を量産するなど、夏場以降は打線の中軸として圧倒的な打棒を披露した。
水谷瞬選手も開幕は二軍で迎えたが、一軍昇格後は交流戦で史上最高となる打率.438を記録して交流戦MVPの座に輝き、通年でも97試合で9本塁打、打率.287と好成績を残した。上川畑大悟選手は故障で開幕二軍となったが、昇格後はチーム事情に応じて二塁と遊撃を兼任。終盤戦では二塁のレギュラーを務め、106試合に出場してチームの躍進を支えた。
東北楽天
安田悠馬選手は開幕を二軍で迎えたものの、出塁率.383を記録してイースタン・リーグの最高出塁率に輝くなど大いに存在感を発揮。8月に昇格を果たして以降は34試合で打率.262と一軍の舞台でも成長を示し、終盤戦におけるチームの再浮上にも貢献を果たした。
渡邊佳明選手も開幕は二軍スタートだったが、一軍に昇格した5月には月間打率.333と活躍。最終的に打率.250とチーム打率(.242)を上回る数字を残し、打率.143に終わった前年の不振から脱却した。ルーキーの中島大輔選手も7月に一軍へ昇格し、8月には月間打率.293を記録。故障離脱するまで存在感を示し、夏場以降のチームの復調にも一役買った。
埼玉西武
田村伊知郎投手は開幕一軍には入れなかったが、4月に昇格してからは安定した投球を展開し、最終的に前年を上回る28試合に登板。防御率1.82と2年連続となる1点台を記録し、ハイレベルな投球内容によってブルペンの貴重なピースであることをあらためて証明した。
中村祐太投手も開幕一軍入りを逃したが、4月に移籍後初登板を果たして以降はイニング跨ぎも含めた幅広い役割を担った。自己最多の27試合に登板して防御率3.09と一定の数字を残し、現役ドラフトによる移籍をチャンスに変えて活躍の場を大きく広げてみせた。
千葉ロッテ
菊地吏玖投手は開幕を二軍で迎え、5月に一軍昇格した際にも本領を発揮しきれなかったが、8月の再昇格以降にプロ初勝利、初ホールド、そして初セーブを記録。20試合で防御率2.25、奪三振率10.13、K/BB5.40とハイレベルな投球内容を示し、終盤戦において大いに存在感を発揮した。
高部瑛斗選手は故障の影響で2023年に一軍出場を果たせず、本格復帰を果たした2024年も開幕一軍入りを逃した。しかし、5月に昇格を果たして以降は3カ月連続で月間打率.294以上を残し、7月には月間打率.405で自身初の月間MVPを受賞。9月に左手を負傷して残りのシーズンを欠場したものの、シーズン打率.300を記録して復活を強く印象付けた。
藤原恭大選手は故障の影響で開幕に間に合わなかったものの、6月28日にシーズン初出場を果たすとその後は主力の座に定着。課題だった好不調の波の大きさも改善され、74試合に出場してキャリア最高の打率.290を記録。ポストシーズンでも9打数3安打の打率.333と活躍し、完全開花の兆しを示すシーズンを送った。
オリックス
現役ドラフトで加入した鈴木博志投手は開幕一軍入りこそ逃したが、5月下旬に昇格して以降はイニング跨ぎもいとわず幅広い起用に応えた。6月から3カ月連続で月間防御率1点台と好投を続け、32試合で10ホールドポイント、防御率2.97とキャリア最高の投球を披露。新天地で自らの実力を示し、ブルペンを支える存在の一人となった。
本田仁海投手は故障の影響で開幕に間に合わなかったが、5月に昇格を果たすと同月には7試合を無失点と完璧な投球を披露。8月までに23試合に登板して11ホールドポイント、防御率2.86と優秀な数字を残し、防御率6.34と安定感を欠いた前年の不振を脱してみせた。
福岡ソフトバンク
長谷川威展投手は体調不良の影響で開幕一軍入りを逃したが、4月に一軍に合流して以降は32試合に登板して10ホールドポイントを記録。現役ドラフトで入団したチームで確かな存在感を示し、貴重な左腕としてチームのリーグ優勝にも貢献を果たした。
同じ左腕のヘルナンデス投手も故障で開幕二軍スタートとなったが、4月29日に今季初登板を果たして以降は48試合で72奪三振と打者を圧倒。21ホールド3セーブ、防御率2.25、奪三振率13.50、K/BB5.14と抜群の数字を残し、来日2年目にして本領発揮のシーズンを送った。
柳町達選手は厚い外野の選手層に阻まれて開幕を二軍で迎えたが、一軍昇格後は73試合で打率.269と一定の数字を記録。同じく開幕一軍のメンバーに入れなかった正木智也選手も、80試合で7本塁打、打率.270と奮闘。左右の好打者として外野陣を支えた両選手の活躍は、チームのV奪回にも大きく寄与するものとなった。
開幕後に一軍昇格を果たす選手の存在は、長いシーズンを戦ううえで欠かせない
開幕一軍入りを果たしたメンバーだけでシーズンを戦い抜くことは、およそ不可能に近いと言える。開幕後に二軍から昇格した選手や、故障から戦線に復帰した選手たちの存在によって新陳代謝が図られ、長いシーズンを戦い抜くことができるというケースが大半だ。
今季も開幕一軍を逃した選手たちが、シーズン開幕後に本領を発揮してチームを救う存在となるケースが見られるか。開幕一軍入りを果たした選手だけでなく、開幕を二軍で迎えた選手たちが見せる今後のプレーぶりについても、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太