シーズン初戦に投げる投手には「開幕投手」という称号が与えられるのと同様に、開幕戦の先発メンバーに名を連ねると「開幕スタメン」と呼ばれる。開幕投手同様、野手としての栄えある称号であるとともに、チームの期待の表れとも言える。
そこで今回は、2019年シーズンに「プロ初の開幕スタメン」を手にした選手たちに注目。チームからの期待を受け、1年の始まりに抜てきされた選手たちがどのような成績を残したのか、球団別に紹介していきたい。なお、今回は日本人選手のみの紹介とする。
【埼玉西武ライオンズ】
・なし
埼玉西武では初の開幕スタメン入りを果たした選手はいなかった。浅村栄斗選手(楽天)、炭谷銀仁朗選手(巨人)と2018年のメンバーが2人抜けて迎えた開幕だったが、外崎修汰選手が右翼手から二塁手、森友哉選手が指名打者から捕手へ、それぞれポジションを変えて穴を埋めた。特に森選手は、プロ入り後初となる捕手での開幕スタメン出場を果たし、正捕手としてシーズンをスタートした。
【福岡ソフトバンクホークス】
牧原大成選手(9年目)
114試合 409打数99安打 3本塁打 27打点 10盗塁 打率.242 出塁率.267 OPS.575
2018年の後半からブレイクを果たすと、今季は「1番・二塁」で開幕スタメンを勝ち取った牧原大成選手。埼玉西武との開幕3連戦では15打数5安打と切り込み隊長の仕事を果たすも、6月初めに登録抹消。しかし7月に再び一軍へ戻ると、上位、下位を問わず多様な打順をこなし、試合数や安打、盗塁といった成績でキャリアハイを記録。内外野を問わない守備や俊足で、強力打線のアクセントとして活躍した。
【東北楽天ゴールデンイーグルス】
田中和基選手(3年目)
59試合 160打数30安打 1本塁打 9打点 3盗塁 打率.188 出塁率.298 OPS.567
2年目ながら105試合に出場し、18本塁打、21盗塁の成績で新人王に輝いた田中選手は、プロ3年目の今季、初めての開幕スタメン入りを果たした。3・4月は主に1番や9番といった打順でスタメン出場を続けていたが、5月に入り前月から違和感を抱えていた右手に骨折が判明し、7月初旬までの長期離脱を強いられた。その後も一軍と二軍を行き来するシーズンとなり、成績を大幅に落としてしまった田中選手。捲土重来を期す来季、俊足スイッチヒッターの復活に期待がかかる。
オコエ瑠偉選手(4年目)
52試合 110打数20安打 3本塁打 15打点 5盗塁 打率.182 出塁率.242 OPS.542
4年目を迎え、初めて開幕戦のラインナップに名を連ねたオコエ瑠偉選手。開幕2戦目に早速初安打を放ったものの、4月、5月となかなか調子が上がらず、6月10日に登録抹消された。しかし、ファームで好調を示すと、チームが3位争いの渦中にいた9月に一軍昇格。限られた出場機会のなかで打率.263と成績を残し、来季に向けた成長を示した。ドラフト1位の期待を背負った大器は、飛躍に向けて着実にステップアップしている。
【千葉ロッテマリーンズ】
藤原恭大選手(1年目)
6試合 19打数2安打 0本塁打 2打点 0盗塁 打率.105 出塁率.105 OPS.211
1965年、前身・東京オリオンズ時代の山崎裕之氏以来、球団史上54年ぶりとなる「高卒新人開幕スタメン」を勝ち取った藤原恭大選手。史上初となる開幕戦安打も記録し、順風満帆なキャリアのスタートとなった。4月7日に登録を抹消されると、その後はシーズン終了までファームで修練を積み、4本塁打、16盗塁を記録した。歴史に名を刻んだ大型新人は、千葉ロッテの未来を担う存在となるか。
【北海道日本ハムファイターズ】
淺間大基選手(5年目)
13試合 29打数6安打 0本塁打 1打点 0盗塁 打率.207 出塁率.345 OPS.578
5年目にして自身初となる開幕スタメンをつかみ、「1番・三塁手」として出場した淺間大基選手。その後もコンスタントに出場していた淺間選手だったが、4月下旬には右すねの骨挫傷が判明し、長期離脱を強いられることになった。8月にファームで実戦復帰を果たすと、9月には再び一軍に昇格。4試合で打率.300、OPS.964と結果を残し、来季に向けて確かな足跡を残した。キャリア最少の出場数に終わった今季のリベンジへ。2年連続の開幕スタメンをつかみに行く。
石井一成選手(3年目)
76試合 196打数44安打 4本塁打 22打点 2盗塁 打率.224 出塁率.282 OPS.649
ルーキーイヤーの2017年から117試合に出場していたが、開幕スタメンは今季が初めてとなった石井一成選手。しかし、3試合で10打数無安打に終わると、4月5日にファームでの再調整を余儀なくされる。その後は一軍と二軍を行き来するシーズンとなったが、7月、9月には.290を超える打率を記録して、バットでのアピールに成功した。田中賢介選手が引退し、内野のポジション争いが激しくなる来季に向け、再びのスタメン入りを虎視眈々と狙う。
【オリックス・バファローズ】
福田周平選手(2年目)
135試合 492打数123安打 2本塁打 38打点 30盗塁 打率.250 出塁率.342 OPS.651
プロ入り2年目にして主将に就任すると、開幕戦でも「1番・二塁手」としてチームの先陣を切った福田周平選手。一時的な登録抹消こそあったものの、年間を通してチームを引っ張り、自身最多となる135試合に出場した。走攻守に気迫溢れるプレーが光った今季を経て、来季はチーム6年ぶりのAクラス入りに臨む。
西浦颯大選手(2年目)
77試合 220打数43安打 1本塁打 18打点 8盗塁 打率.195 出塁率.239 OPS.494
高卒2年目ながら、自身初の開幕スタメン入りを果たした西浦颯大選手。3,4月で外野の一角としてポジションをつかむと、上位打線の一角として打線に定着した。しかし、5月、7月と故障による離脱が相次ぎ、キャリアハイとはなったものの出場は77試合にとどまった。シーズン序盤の活躍は確かなものがあっただけに、来季はコンディションを整えて1年通じての出場を果たしたいところだ。
頓宮裕真選手(1年目)
28試合 91打数18安打 3本塁打 10打点 0盗塁 打率.198 出塁率.204 OPS.556
新人として唯一開幕スタメンを勝ち取って頓宮裕真選手は、開幕戦から2安打、2打点と結果を残して鮮烈なデビューを飾る。4月18日の北海道日本ハム戦ではプロ初本塁打を記録するなど、順調なステップを踏んでいたが、6月に右足の骨折が判明してファームへ。シーズン終盤には復帰を果たしたが、一軍復帰とはならなかった。期待のかかる大砲候補だけに、来季は飛躍の年としたいはず。1年を通して一軍での雄姿を見せたいところだ。
小田裕也選手(5年目)
82試合 180打数37安打 3本塁打 21打点 9盗塁 打率.206 出塁率.275 OPS.581
社会人卒の5年目、30歳を迎える年に初となる開幕スタメン入りを果たした小田裕也選手。開幕2戦目にマルチ安打を放つなど結果を残していたが、4月7日に左足を痛めて抹消となってしまった。それ以降は一軍と二軍で行き来したものの、なかなか成績が上がらず。自身最多の3本塁打を放ったが、打率.206でシーズンを終え、安打数も昨年を下回るなど、悔しいシーズンとなった。台頭する若手との争いも激しくなる2020年、小田選手の活躍に期待したい。
2019年は、パ・リーグ6球団で10人の選手が「プロ初開幕スタメン」に抜てき。各選手とも進境を示したシーズンだった一方、田中和基選手や西浦颯大選手のように、多くの選手が怪我に泣かされる1年となった。しかし、栄えある開幕スタメンに選ばれた経験は必ず生きるはず。彼らの活躍に期待するとともに、2020年に新たにその称号を手に入れる選手の台頭を楽しみにしたい。
成田康史
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