打率から内野安打を除くと…? 内野安打にまつわる3つのトップ10を紹介!

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.11.29(金) 12:00

北海道日本ハムファイターズ・西川遥輝選手(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・西川遥輝選手(C)PLM

「内野安打」にまつわる、3つの分野をひも解く

 ヒットが記録されるかどうかは、投手と打者の2人のみの勝負によって決まるわけではない。抜けるかと思われた打球が内野手の好守に阻まれたが、打者走者が俊足だったために内野安打をもぎ取った、というケースや、内野安打になるかもしれない打球で間一髪アウトになりヒットを損した、といったシーンは、野球を観戦するうえで少なからず印象に残るものだ。

 また、俊足の打者がセーフティバントを用いて、能動的に内野安打を生み出そうとするケースもある。とはいえ、内野安打を多く記録できるかどうかは、基本的には打撃スタイルに影響されるもの。多くの盗塁を記録している選手であっても、内野安打の比率自体はそこまで多くない、というケースも、往々にして存在するものだ。

 今回は、今季のパ・リーグにおける、「内野安打の本数」「安打数内における、内野安打の比率」「安打から内野安打を除いた数字を基にした打率」という、3つの分野におけるトップ10のランキングをそれぞれ紹介。なかなか表に出てくることの少ない、内野安打にまつわるさまざまな数字を、ひも解いていきたい。

俊足の選手が顔をそろえる中、盗塁数や成功率とも比較

 まずは、今季のパ・リーグにおける内野安打数トップ10に入った選手の顔ぶれを紹介していきたい。参考までに、各選手の今季の盗塁、盗塁刺、盗塁成功率も付記する。

1位:31本
西川遥輝選手(北海道日本ハム)

19盗塁 5盗塁刺 盗塁成功率79.2%
2位:28本
源田壮亮選手(埼玉西武)

30盗塁 9盗塁刺 盗塁成功率76.9%
3位:22本
牧原大成選手(福岡ソフトバンク)

10盗塁 13盗塁刺 盗塁成功率43.5%
4位:21本
金子侑司選手(埼玉西武)

41盗塁 10盗塁刺 盗塁成功率80.4%
5位:19本
中島卓也選手(北海道日本ハム)

12盗塁 5盗塁刺 盗塁成功率70.6%
6位タイ:17本
茂木栄五郎選手(楽天)

7盗塁 5盗塁刺 盗塁成功率58.3%
島内宏明選手(楽天)
3盗塁 4盗塁刺 盗塁成功率42.9%
大田泰示選手(北海道日本ハム)
6盗塁 2盗塁刺 盗塁成功率75.0%
9位:16本
秋山翔吾選手(埼玉西武)

12盗塁 8盗塁刺 盗塁成功率60.0%
10位タイ:15本
外崎修汰選手(埼玉西武)

22盗塁 6盗塁刺 盗塁成功率78.6%
荻野貴司選手(千葉ロッテ)
28盗塁 10盗塁刺 盗塁成功率73.7%

 リーグトップの数字を記録したのは、パ・リーグ盗塁王に3度輝いた経験を持つ韋駄天・西川選手。今季も打率.288、出塁率.393と安定した打撃成績を残したが、盗塁の面では盗塁数、成功率ともに例年と比べると振るわなかった。だが、今季はセーフティバントを試みた際に、一塁到達3秒55という見事な数字を記録。その脚力は、内野安打という面において大いに発揮されていた。

 記録の性質から言っても、2位以下にも俊足の選手が多く名を連ねたのは当然といえるか。また、牧原選手と中島選手の2選手以外は、いずれも規定打席に到達した各球団のレギュラーであるところも示唆的だ。打者走者の足が速ければ、守る側もそれに対応したシフトを敷き、素早く打球を処理しようという心構えを持ってくる。それだけに、それをかいくぐって多くの内野安打を記録するためには、相応の打席数が必要になるということか。

 俊足の持ち主であると広く認められる存在ながら盗塁数や盗塁企図数は多くない、という選手は決して少なくない。今回トップ10に入った選手の中にも、盗塁成功率が50%を割り込んでいる牧原選手や島内選手、盗塁数が1桁にとどまった6位タイの残り2選手といった面々が存在する。彼らは盗塁よりも、打者走者としてその走力をフルに発揮しているのかもしれない。

全安打の1/3以上が内野安打という選手も存在

 次に、今季のパ・リーグ所属選手の中で100打席以上に立った選手たちのうち、内野安打比率がトップ10に入った面々と、それに関連する各種成績を紹介していきたい。

1位:周東佑京選手(福岡ソフトバンク)
102打数20安打 内野安打7本 バント安打2本 内野安打比率35.0%
2位:中島卓也選手(北海道日本ハム)
291打数64安打 内野安打19本 バント安打3本 内野安打比率29.7%
3位:中村晃選手(福岡ソフトバンク)
139打数34安打 内野安打8本 バント安打0本 内野安打比率23.5%
4位:牧原大成選手(福岡ソフトバンク)
409打数99安打 内野安打22本 バント安打6本 内野安打比率22.2%
5位:西川遥輝選手(北海道日本ハム)
548打数158安打 内野安打31本 バント安打6本 内野安打比率19.6%
6位:源田壮亮選手(埼玉西武)
540打数148安打 内野安打28本 バント安打2本 内野安打比率18.9%
7位:安達了一選手(オリックス)
155打数43安打 内野安打8本 バント安打2本 内野安打比率18.6%
8位:金子侑司選手(埼玉西武)
463打数116安打 内野安打21本 バント安打2本 内野安打比率18.10%
9位:辰己涼介選手(楽天)
314打数72安打 内野安打13本 バント安打3本 内野安打比率18.05%
10位:田中賢介選手(北海道日本ハム)
153打数39安打 内野安打7本 バント安打0本 内野安打比率17.9%

 抜群の脚力を買われて「侍ジャパン」にも選出された周東選手が、打者としてもその俊足ぶりを存分に発揮。全安打の実に1/3以上が内野安打という数字を残し、一軍の舞台でも自身の持ち味を見せつけた。2位の中島卓也選手もカット打法と俊足を活かした打撃を以前から得意としており、この位置に来たのも納得といったところか。

 3位の中村晃選手は実働9年間で通算40盗塁と、さほど積極的に盗塁を試みるタイプではない。だが、2015年にはリーグ2位となる24本の内野安打を記録するなど、盗塁は少ないが内野安打は多いというタイプの選手だ。4位以下の面々を見てみても、多くの盗塁を稼いでいる俊足の選手や、二遊間や外野手としての広い守備範囲を誇る選手が多いのが特徴的だ。

 年齢的にも若手、または中堅と、脚力の面でもまだまだこれからという選手が多くランクインする中で、10位には今季限りで現役を退いた田中賢介選手がランクイン。NPB通算203盗塁を記録し、二塁手としても広い守備範囲を誇った脚力は、現役ラストイヤーにおいてもその威力を発揮し続けていた。

打率から内野安打を除くと、その数字はどう変わる?

 最後に、シーズン中に放った安打の中で、内野安打を除いた打率がどのような数字になっているかを紹介していきたい。今季のパ・リーグにおける規定打席に到達した選手の中で、内野安打を除く打率がトップ10に入った選手と、それに関連する成績は以下の通りだ。

1位:森友哉選手(埼玉西武)
492打数162安打 内野安打13本 内野安打比率8% 打率.329 内野安打を除く打率.311
2位:吉田正尚選手(オリックス)
521打数168安打 内野安打13本 内野安打比率7.7%打率.322 内野安打を除く打率.305
3位:荻野貴司選手(千葉ロッテ)
508打数160安打 内野安打15本 内野安打比率9.4% 打率.315 内野安打を除く打率.294
4位:銀次選手(楽天)
529打数161安打 内野安打11本 内野安打比率6.8% 打率.304 内野安打を除く打率.290
5位:秋山翔吾選手(埼玉西武)
590打数179安打 内野安打16本 内野安打比率8.9% 打率.303 内野安打を除く打率.284
6位:近藤健介選手(北海道日本ハム)
490打数148安打 内野安打13本 内野安打比率8.8% 打率.302 内野安打を除く打率.283
7位:中村剛也選手(埼玉西武)
496打数142安打 内野安打5本 内野安打比率3.5% 打率.286 内野安打を除く打率.279
8位:鈴木大地選手(千葉ロッテ)
527打数152安打 内野安打9本 内野安打比率5.9% 打率.288 内野安打を除く打率.276
9位:大田泰示選手(北海道日本ハム)
557打数161安打 内野安打17本 内野安打比率10.6% 打率.289 内野安打を除く打率.267
10位:島内宏明選手(楽天)
506打数145安打 内野安打17本 内野安打比率11.7 打率.287 内野安打を除く打率.262

 森選手は内野安打を含めた数字だけではなく、内野安打を除いた打率でも見事に首位打者に輝いている。2位となったのもシーズン打率2位の吉田正選手であり、偶然にも内野安打の数も両者ともに同じ13本。内野安打を除いた打率が.300を超えたのもこの2選手のみであり、あらためて両選手が持つ高い技術を裏付けるような結果となっている。

 また、内野安打数のランキングでも共にトップ10に入っていた荻野貴選手と秋山選手が、それぞれ3位と5位に入っていたのはやや意外な結果と言えるか。両選手ともに1番打者ながら、いわゆる「走り打ち」というよりはしっかりと振り切る打撃スタイルの持ち主。内野安打よりも外野に飛ぶ安打が多い理由は、そのあたりにもあるかもしれない。

 基本的にはシーズン打率が良かった選手がこちらのランキングでもそのまま上位に来る傾向が強いが、内野安打を含めた数字では6人いた打率.300以上の選手が、内野安打を除いた数字ではわずか2人に。打率.280以上の選手というくくりでも、12人から6人へと大きく減少する。今季は中村選手を除いて、強打者系の選手が軒並み低打率にあえいだ面も影響はしているだろうが、先述したような小さくない差異の存在には驚かされるところだ。

内野安打が打撃の中で占めているウエートは、決して少なくない

 もちろん、選手個々の特性によって違いはあるが、こうして振り返ってみると、年間の打率や安打数の中において内野安打が占める比率が、思いのほか多いということに気づかされる。中には西川選手のように内野安打だけで年間30本以上のヒットを上積みする選手も存在しており、相手守備に与えるプレッシャーも含めて、内野安打というカテゴリーは打撃において小さくないウエートを占めているといえそうだ。

 内野安打の数は決して日の当たる数字ではないが、選手のタイプや、その打撃内容を測るうえでも一定の指標になりうる数字の一つだ。来季も俊足自慢の選手たちがその足で「H」のランプを勝ち取るシーンが、きっと数多く見られることだろう。

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