今季の浅村栄斗は埼玉西武時代と東北楽天移籍後のハイブリッド?

パ・リーグ インサイト

2025.5.30(金) 08:00

東北楽天ゴールデンイーグルス・浅村栄斗選手【写真:球団提供】
東北楽天ゴールデンイーグルス・浅村栄斗選手【写真:球団提供】

 球界屈指のスラッガーとして長年活躍を続け、東北楽天ゴールデンイーグルスにとって欠かせない存在となっている浅村栄斗選手。今年は2つの大記録を目前にしてシーズンを迎え、まず初めに4月22日の北海道日本ハム戦でプロ野球史上47人目の通算300本塁打を達成。そして5月24日には、平成生まれの選手では初の通算2000安打という快挙を成し遂げた。本稿ではそんな浅村選手の今季の打撃について、埼玉西武でプレーした2010年から18年、東北楽天に加入した19年から昨季まで、そして25年と3つの期間を比較しながら深掘りしていきたい。

今季は速球に対して力強い打撃を見せる

浅村栄斗選手 145キロ以上の直球系打率 ⓒデータスタジアム
浅村栄斗選手 145キロ以上の直球系打率 ⓒデータスタジアム

 3、4月度に打率.290、4本塁打、13打点をマークするなど、今季は開幕から好スタートを切った浅村選手。その打撃で注目したいのが、球速の速いボールで好成績を残している点だ。ここまで145キロ以上の直球系の球種に対して打率.333を記録。これは年度別で見ると埼玉西武時代の18年、16年に次ぐ好成績で、東北楽天加入後では最も高い数字となっている。今季の速球に振り負けないバッティングは埼玉西武時代に近い特徴といえるだろう。さらに4本塁打のうち前述の通算300号を含めた3本が150キロ前後のストレートを捉えたもので、スピードボールを力強くはじき返して長打を放つことができている。

直球系の球種に対するスイング率がアップ

浅村栄斗選手 球種別スイング率 ⓒデータスタジアム
浅村栄斗選手 球種別スイング率 ⓒデータスタジアム

 近年と比べて球速の速いボールに強い打撃を見せている今季は、打席内のアプローチにも変化が見られる。上に示したのは球種別のスイング率だ。期間別の変化に注目すると、まず10~18年と19~24年では後者の方が直球系、それ以外の球種ともにスイング率は低く、移籍後は待球寄りの打撃スタイルにシフトしていることが見てとれる。次に19~24年と25年を比較すると、他の球種の数値がさらに低くなっている一方で、直球系のスイング率が上昇していることが分かるだろう。今季はスライダーやフォークなどの変化球に対して例年以上に慎重な姿勢を見せつつ、速球に対しては積極的にスイングを仕掛けているのだ。

狙った速球を確実にバットで捉える

浅村栄斗選手 直球系コンタクト率 ⓒデータスタジアム
浅村栄斗選手 直球系コンタクト率 ⓒデータスタジアム

 そして今季は狙った直球系のボールをしっかりとバットで捉えており、コンタクト率は87.9 %を記録。4年ぶりにリーグ平均を上回っている。スピードボールへの対応に重点を置くことで確実なコンタクトを実現しており、このことが145キロ以上の速球に対する高打率につながっていると考えられる。

ボールゾーンスイング率の低さは健在

2025年パ・リーグ ボールゾーンスイング率ランキング ⓒデータスタジアム
2025年パ・リーグ ボールゾーンスイング率ランキング ⓒデータスタジアム

 速球への積極性を高めた中でも変化球に対しては慎重なアプローチを継続しており、全体としては昨季までと同じく待球傾向にある。東北楽天での浅村選手はボールゾーンスイング率で毎年20%台前半を記録しているが、その持ち味は今季も変わらず、ここまで規定打席到達者の中でリーグ2位となっている。四球率も12.0%と優秀で出塁能力の高さは健在だ。

 以上のように、各成績の推移を見ると、埼玉西武時代は積極性が高くストレートに強いスタイル、移籍後はスイング率を下げた待球型のスタイル、そして今季は速球への積極性と変化球に対する慎重さを両立したスタイル、というように打撃スタイルが移り変わっていることが分かる。

待球傾向でありながら追い込まれた打席は減少

浅村栄斗選手 全打席に占める追い込まれた打席の割合 ⓒデータスタジアム
浅村栄斗選手 全打席に占める追い込まれた打席の割合 ⓒデータスタジアム

 そして今季の打撃には、待球型のスタイルを継続しているにもかかわらず2ストライクに追い込まれた打席が少ないという特徴がある。積極性と慎重さを両立することで、高い四球率を維持しながら打者にとって不利なカウントには持ち込ませない、理想的なアプローチを実現しているのだ。

 開幕から順調に安打を放っていた浅村選手だが、4月27日に大台到達まであと9本としたのち、そこから皆が待ち望んだ一打が飛び出すまでには19試合を要している。記録達成後の会見では、戦ってきたプレッシャーの大きさについて吐露する場面もあった。ともあれ、彼は成し遂げた。今回味わった生みの苦しみも糧に変え、次なる目標に向かって進んでいくことだろう。そう、念願の東北楽天でのリーグ制覇を目指し、背番号3はこれからもヒットを積み重ねる。

※文章、表中の数字はすべて2025年5月24日終了時点

文・データスタジアム

関連LIVE配信

パ・リーグ.com ニュース

今季の浅村栄斗は埼玉西武時代と東北楽天移籍後のハイブリッド?