首位打者快走中。太田椋はオリックスの先人たちの系譜を継ぐタイトル獲得なるか

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.5.9(金) 17:00

オリックス・バファローズ 太田椋選手【写真:球団提供】
オリックス・バファローズ 太田椋選手【写真:球団提供】

打撃3部門全てでハイレベルな成績を残し、昨季以上の進化を遂げている

 太田椋選手が5月4日の試合終了時点で打率.397を記録し、パ・リーグの打率ランキングでトップに立っている。太田選手は2024年に91試合で打率.288とブレイクの足がかりを作ったが、今季は本塁打がリーグ5位タイ、打点が同1位タイと打撃三部門全てでハイレベルな成績を残しており、さらなるステップアップを果たしそうな気配を漂わせている。

 今回は、太田椋選手が一軍で記録してきた各種の打撃指標に加えて、各シーズンにおいて守備に就いた試合数を確認。開幕から上位争いを繰り広げる新生オリックスを攻守にわたって支えている24歳の若武者が持つ、特徴と強みをあらためて紹介していきたい。(成績は5月4日の試合終了時点)

選球眼の改善と長打力の向上によって、リーグ最高クラスの生産性を誇る打者に

 太田選手が一軍で記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

太田椋選手 年度別指標 ⓒPLM
太田椋選手 年度別指標 ⓒPLM

 打率と出塁率の差を示す「IsoD」はキャリア平均で.054と決して高い数字ではなく、積極的なバッティングを持ち味としていることが示されている。しかし、今季のIsoDは.065とキャリア平均を上回る値となっており、課題の一つだった選球眼に改善の兆しが見えている。

 また、四球を三振で割って求める、同じく打者の選球眼を示す指標の「BB/K」に関しても、キャリア平均の.299に対して直近2年間はいずれも.400を超える数字を残している。ストライクゾーンを見極める能力が着実に向上していることは、各種の指標にも表れていると言えよう。

 長打率に関してもキャリア平均の数字は.377とやや控えめな水準だったが、直近3年間ではいずれも.400を上回る数字を記録。とりわけ、今季の長打率はリーグトップの.517と劇的な向上を見せており、打者としての生産性も大いに高まっていることがわかる。

 そして、長打率から単打の影響を省いた、いわば“真の長打力”を表すとされる「ISO」という指標に関しても、直近3シーズンにおいては全てキャリア平均の数字を上回っている。さらに、本塁打を1本記録するために必要となる打数を示す「AB/HR」という指標に関しても、今季は29.00とキャリア平均の数字(43.11)を遥かに上回る値を残している。

 これまで紹介してきた選球眼と長打力の向上に伴い、OPSはリーグトップの.979という極めて優秀な水準に到達。キャリア平均のOPSは.693とやや低い水準にあったが、今やリーグ最高クラスの生産性を誇る打者へと進化を遂げている。

キャリアの初期から示してきたユーティリティ性は、着実に生かされている

 続いて、太田選手が一軍で守備に就いたポジション別の試合数について、各シーズンごとに確認していきたい。

太田椋選手 年度別守備試合数 ⓒPLM
太田椋選手 年度別守備試合数 ⓒPLM

 一軍にデビューした2019年は遊撃手として6試合でプレーしたのみだったが、翌2020年には二塁手、三塁手、遊撃手の3ポジションを経験。続く2021年には二塁手を主戦場としながら一塁と三塁の守備にも就いており、内野の全ポジションをこなすユーティリティ性を備えていることが数字にも示されている。

 しかし、2022年以降は一塁手と二塁手としての出場がほとんどで、2024年に3試合で三塁の守備に就いたのが唯一の例外となっている。2023年以降は各種の打撃指標に顕著な向上が見られることを鑑みても、守備の負担が減少したことが打撃面におけるプラスをもたらした可能性はありそうだ。

 また、2024年には一塁手としての出場が58試合、二塁手としての出場が54試合と、一塁手として守備に就く機会のほうが多かった。だが、今季は前年に打撃不振に陥っていた頓宮裕真選手の復調も相まって、開幕から不動の二塁手としてスタメン出場を続けている。

 その一方で、今季は展開に応じて太田選手が二塁から一塁にポジションを移す試合も少なからず存在している点は注目すべきポイントだ。キャリアの初期から示してきた高いユーティリティ性を、主力打者へと成長した今なお随所で生かしつつ、打撃のみならず守備の面でもチームを助ける存在となっている点も、太田選手の大きな強みの一つといえよう。

先人たちと同じく、チームと個人の双方にとって最高の結果をもたらせるか

 オリックスでは過去にも、レギュラーに定着した年にタイトルを獲得した選手が少なからず存在した。最も顕著な例としては、イチロー(鈴木一朗)氏が初めて規定打席に到達した1994年に、NPB史上初のシーズン200安打を達成。首位打者、最多安打、最高出塁率、シーズンMVP、正力松太郎賞を受賞し、一躍球界を代表する選手となったことが挙げられる。

 昨季限りで現役を引退したT-岡田氏も、初の規定打席到達を果たした2010年に本塁打王のタイトルを手中に収める大活躍を果たした。そして、現役選手のなかでは、杉本裕太郎選手が初めて規定打席に到達した2021年に本塁打王を獲得し、頓宮裕真選手も同じく自身初の規定打席に到達した2023年に首位打者の座に輝いている。

 太田選手もチームの歴史を彩ってきた先人たちと同様に、このまま自身初の規定打席到達とタイトル獲得を果たすことができるか。杉本選手と頓宮選手がタイトルを受賞した年にはいずれもチームがリーグ優勝を飾っているだけに、太田選手も中心選手としてオリックスを力強くけん引し、チームと個人の双方にとって最高の結果をもたらせるかに注目だ。

文・望月遼太

関連LIVE配信

特集
特集
パ・リーグ.com ニュース

首位打者快走中。太田椋はオリックスの先人たちの系譜を継ぐタイトル獲得なるか