今季はルーキーイヤー以来の2桁本塁打をマーク

大学、社会人を経て2021年ドラフト4位で福岡ソフトバンクホークスに入団した野村勇選手。1年目からいきなり10本塁打、10盗塁を記録するも、翌年からは2年続けて打率1割台と低迷。背水の陣で臨んだ今シーズンは、自己最多の126試合に出場し、いずれもキャリアハイとなる打率.271、12本塁打、18盗塁をマークした。その飛躍の裏にはどのようなバッティングの変化があったのか。データを用いて掘り下げていきたい。
小柄ながら非凡なパンチ力を誇る

ルーキーイヤーから2桁本塁打を記録したように、野村選手の魅力は思い切りの良いスイングから放たれる長打だ。外野フライがどのくらいの割合でホームランになったかを示すHR/OFでは、今季のパ・リーグ野手の中で第4位にランクイン。リーグ屈指のスラッガーたちに引けを取らない数値を記録している。
今季は高めの投球を積極的にスイング

野村選手の打撃のアプローチ面に着目すると、今季は高めの投球に対するスイング率が上がっていることが分かった。一般的に高めへの投球は、打者にとって打球に角度をつけやすく、長打につながる確率が高い。昨季までの野村選手の高めスイング率はリーグ平均とほぼ同等だったが、今季は63.1%とその割合が大幅にアップ。長打になりやすいボールに対し、今季は積極的にスイングをかけていく様子が見受けられた。
ハイアベレージを残した一方で、改善の余地あり


積極的にスイングをかけた結果、今季は高めの投球に対して打率.349とハイアベレージをマーク。多くのヒットを記録した一方で、高めを打って外野フライになった割合はリーグ平均を下回る45.1%にとどまった。ヒットになった打球はライナー性が多く、凡打では内野フライの割合が平均より高かった。先述の通り、野村選手は外野フライがホームランになる確率が比較的高い。来季に向けては、高めの投球に対する打ち損じを減らし、より適切な角度で打球を飛ばせるようになれば、外野フライの割合も増え、本塁打数の増加につながっていくだろう。
過去のユーティリティープレーヤーと比べても好成績をマーク

ここまでは打撃面にフォーカスしてきたが、野村選手を語る上で外せないのがユーティリティー性だ。今季は遊撃手として72試合、二塁手と三塁手でいずれも13試合にスタメン出場。春先から主力選手の故障離脱が相次ぐ中、首脳陣のさまざまな起用に応える働きを見せた。2010年以降のパ・リーグにおいて、同一シーズンにこの3ポジションで10試合以上スタメン出場した選手は4人いるが、今季の野村選手はその中でも突出した成績を残したといえる。パワーとスピードを兼ね備えながら、内野の複数ポジションをこなせる選手は、過去を振り返ってみても非常に希少な存在だ。
今季はレギュラーシーズンでキャリアハイの成績をマークすると、ポストシーズンでも印象的な活躍を披露した野村選手。「SMBC日本シリーズ2025」では第5戦で決勝アーチを放ち、5年ぶり日本一の立役者となった。11月15日(土)、16日(日)には代表初選出となった「ラグザス侍ジャパンシリーズ2025」が控えるが、国際試合の舞台でも自身の持ち味を存分に発揮してくれることだろう。
※文章、表中の数字はすべて2025年シーズン終了時点
文・データスタジアム
