今年三塁への到達時間がもっとも短かった選手は誰か?
打球が外野手の間を抜けた。打者走者に目を向けると、二塁ベースの手前でスピードを落とさず一気にかけ抜けている。この瞬間、「グワァー!」という歓声で、球場のボルテージが1オクターブ跳ね上がる。三塁打ショーの始まりだ。
今年、パ・リーグで三塁打の好タイムを記録したのは、どの選手だろうか? トップ5をみていこう。
ちなみに計測方法は、打者が投球をバットに当てた瞬間をスタートとし、三塁ベースに到達した瞬間までとした。
三塁打レースを牽引し続ける源田壮亮選手(埼玉西武)
5位・10秒80、4位・10秒77と立て続けにランク入りしたのは、埼玉西武の攻守を支える源田壮亮選手だ。昨年も10秒71で2位につけており、パ・リーグ三塁打タイムランキングの常連といえる存在である。
源田選手の走りを見ていると、二塁ベースを蹴ってから三塁へたどり着くまでの走りに力感のようなものは感じられない。むしろ、八分程度で走っているようである。その点については、以前、本人が「あまり最初から飛ばしすぎると、二塁を蹴ってから失速する」とコメントしていた。トータルでもっとも早く三塁ベースにたどり着く術を心得ているのだ。
裏を返せば、それは打った瞬間から三塁打を狙っていることを意味する。二塁で止まるのが前提ならば、三塁までのペース配分など不要なはず。このことから、源田選手は優れた打球判断力も持ち合わせていることがわかる。
その俊足で侍ジャパン入りを引き寄せた周東佑京選手(福岡ソフトバンク)
今シーズン、新しいスピードスターが誕生した。それが10秒75で堂々3位に入った周東佑京選手(福岡ソフトバンク)だ。
周東選手は、2017年秋のドラフト会議において育成契約で入団し、今年のシーズン開幕直前に支配下登録されると、早くも4月に一軍の試合で実力を発揮した。
周東選手は、身長180センチ、体重74キロというスラッとした体型で、とにかく足が長い。ひと昔前の足が長い選手は、ストライド(歩幅)が広くてもピッチ(回転)が遅く、モッサリとした動作になりがちだったが、現代の“あしなが選手”は、ピッチも速い。三塁打のロングランでは、まさにその特性が最大限に発揮された格好だ。
今季、リーグ盗塁王の金子侑司選手が(埼玉西武)が面目躍如の2位入賞
10秒71というタイムで2位に入ったのは、自身2度目となるパ・リーグ盗塁王を獲得した埼玉西武の金子侑司選手。昨年も10秒85で3位に入っており、源田選手と同じく2年連続でトップ5入り。チームの2トップを担う俊足として、今年も健在ぶりを示した。
金子侑選手も、周東選手と同様にスラッとした体型で、長い足を生かした広いストライドと速いピッチのいいとこ取りをした理想的な走りをする。
加えてすばらしいのが、二塁ベースを踏む前後で、ほとんどスピードを落とさないこと。実際には多少なりとも左回りにターンしているはずだが、まるでベースを真っすぐかけ抜けていると錯覚してしまうほどトップスピードを維持して突き進む。失敗を恐れぬ度胸一発のプレースタイルがあればこその好タイムである。
番外編 体重114キロ! 井上晴哉選手(千葉ロッテ)の迫力ある三塁打
ここで、ひとつ番外編を挟もう。出てきたのは、巨体を揺らして三塁打を放った井上晴哉選手(千葉ロッテ)だ。公称体重は114キロ。センターが飛球をショートバウンドで捕ろうして後逸する姿が目に入ると、二塁ベース手前で一瞬躊躇しながら再び加速。間一髪のスライディングで三つ目の塁を陥れた。
井上選手については、以前、インタビューしたときに自分の走力について聞いたことがある。そのときは、「直線を走るときは、それほど遅くはないですよ」と話していた。
実際、13秒13というタイムは、スピードスターが多く集うプロ野球の世界では後塵を拝するものの、一般的なアスリートして考えたらそれほど悪くはない。甲子園でプレーする高校球児なら、12秒台なら「まずまず速い」としているので、13秒ちょっとならば「可もなく不可もないタイム」としていいのではなかろうか。
アジャ井上選手は、なかなか走れる。プチ情報として、覚えておくといいだろう。
1位に輝いたのもあのニューフェイスだった!
栄えあるパ・リーグ三塁打1位のタイムを記録したのは、またしても周東選手だった。タイムは、なんと10秒55。昨年、チームメイトの牧原大成選手が1位を獲得した10秒66から、さらに0秒11も縮めてしまった。驚くべき新世代選手である。
この俊足ぶりに素早く目をつけたのが、日本代表・侍ジャパンの稲葉篤紀監督。11月2日から開催される『第2回 WBSC プレミア12』に出場する侍ジャパンのメンバーとして周東選手を選出した。
そのとき、福岡ソフトバンクの熱烈なファンならいざしらず、多くの野球ファンが「え?」と思ったかもしれない。しかし、タイムを見れば一目瞭然。稲葉監督、さすがの慧眼である。
果たして、世界の舞台で周東選手が恐るべき力を発揮するときはおとずれるか? 勝負を分けるような場面で、1点をもぎとる走塁をみせてくれることを期待したい。
好タイムの三塁打は、常に三塁打を狙っている証
三塁打というのはそもそも簡単に発生するものではない。外野の深部へ打球を運べる揺るぎない打撃技術と、持ち前の俊足、そして、そこで止まれば安全は確保できる二塁ベースをあえて走り抜ける勇気を常に持っていなければ難しい。
その意味で、2年連続ランキング入りを果たし金子侑選手、源田選手に対するリスペクトを忘れてはならないと感じている。
来年は、果たしてどのような顔ぶれが揃うだろうか。スタジアムで打球が外野の間を割り、「三塁打かもしれない」とワクワクする高揚感を想像しただけで、早くも楽しみで仕方がない。
キビタキビオ
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