「2026WORLD BASEBALL CLASSIC」(以下WBC)がいよいよ幕を開ける。日本の野球ファンにとって、本戦にコマを進めた20カ国のなかでもキューバに対しては常に特別な敬意を抱く相手だろう。2006年の第1回大会の決勝戦で侍ジャパンと繰り広げた戦いから20年が経ち、今大会のキューバ代表は、伝統の誇りを胸に、日本野球で成長した選手たちが牽引する姿を見せようとしている。
「野球大国」同士の交流
日本とキューバの間には、野球を通じた長年にわたる交流の歴史がある。1991年から6年間、国際試合で無敗と無類の強さを発揮していたキューバの151連勝を止めたのが日本だった。それからキューバ人選手が日本の社会人野球でプレーし、2006年第1回WBCでは決勝を戦い、近年はキューバ人選手たちがNPBの舞台で活躍を見せる。かつては世界の厚い壁であった「赤い稲妻」は、日本の野球界にとってもその実力を認め合い、高め合ってきた重要な存在である。そのキューバ代表の面々を紹介しよう。

【投手陣】NPBの舞台で磨かれた精鋭たち
キューバ代表の投手陣の核を担うのは、日本の環境で実績を積み上げた選手たちだ。
まずは2024年・2025年と2年連続で「最優秀防御率」のタイトルを獲得した福岡ソフトバンクのリバン・モイネロ投手。150km/h超の速球と高い奪三振能力を武器に、2025年は24試合に登板、12勝3敗、防御率は2024年の1.88を上回る1.46、WHIP0.92と圧巻の成績を残した。NPBで成長し「鷹のエース」となった左腕は母国のためにまずはプールAが行われるプエルトリコの地で腕を振る。

そしてもう一人は2025年から読売ジャイアンツで絶対的守護神として君臨するライデル・マルティネス投手だ。2025年は開幕から31試合連続無失点をマークし、58試合に登板、球団新記録となる46セーブ、3ホールド、防御率1.11、WHIP 0.76と圧倒的な成績を残したタフネス右腕はキューバ代表でも試合を締める役割を担う。
その他にもかつて中日で最優秀中継ぎのタイトルを獲得し、現在はアメリカの舞台で先発として腕を磨くジャリエル・ロドリゲス投手(ブルージェイズ傘下)が核をなす。その他NPB経験者として中日に所属したフランク・アルバレス投手、読売ジャイアンツに所属したヨハン・ロペス投手、現在、中日で育成選手として活躍するランディ・マルティネス投手がそろい、国内リーグの投手を加えた多様なバリエーションを擁する。

【野手陣】多様な経験の融合とレジェンドの役割
打線においては、MLB、NPBなどの舞台で培われた経験がチームの推進力となる。まずはシカゴ・ホワイトソックスや2025年シーズンはロサンゼルス・エンゼルスで活躍し、MLBで確かな実績を誇るスイッチヒッターのヨアン・モンカダ選手。高い身体能力を生かした長打力と確実性のある守備が特徴で、クリーンアップの核として期待される。MLB選手のキューバ代表への合流は、打線に大きな核をもたらす。

北海道日本ハムファイターズで活躍し、勝負強い打撃と献身的な姿勢と熱い気持ちを持つアリエル・マルティネス選手も注目だ。中日育成からNPBの舞台で成長した経験とその実績はキューバ代表へ化学反応をもたらすだろう。

そして忘れてはいけないのが2009年大会から出場し、WBC歴代最多本塁打の記録を持ち、日本や国際大会での豊富な経験を持つアルフレド・デスパイネ選手だ。先日開催された中南米諸国が参加する「2026セリエ・デ・ラス・アメリカス」でも豪快なホームランを放つなど代表チームを牽引しており、チームの精神的支柱だ。指名打者や勝負所での代打として、今なお健在する長打力は警戒の対象である。

その他にはかつて千葉ロッテマリーンズでプレーし、そのスピードでファンを魅了し、「走り打ち」で話題になったロエル・サントス選手も機動力でキューバ代表に試合の流れを引き寄せるアクセントをもたらす。

再び世界の高みへ
今大会、キューバ代表はプエルトリコ、カナダ、パナマ、コロンビアが集うプールAから戦いが始まる。開催地のプエルトリコでの戦いを勝ち抜いた先には、日本のファンも待ち望む「侍ジャパン」との対戦の可能性がある。両チームが勝ち進んだ場合、準決勝以降で対戦することなり、舞台はマイアミへと移る。
マイアミは、世界で最も多くのキューバ出身者が暮らす都市の一つで、野球への情熱に溢れるキューバ出身者たちからの声援は、彼らにとって強力な後押しとなるだろう。

日本での活躍が光る選手を中心に世界一を目指すキューバ代表。日本とキューバ、20年の時を経て互いが再び頂点を競うその瞬間が訪れるのか。伝統ある「赤い稲妻」がアメリカの地でどのような野球を見せるのか、その歩みに注目だ。
文・竹林慎太朗
