ブレイクの翌年にも結果を残す選手は、チームにとっても大きな存在となる
競争の激しいプロ野球の世界において、継続して結果を出し続けるのは決して容易ではない。「2年目のジンクス」という言葉があるように、前年にチームを支える活躍を見せた選手が、翌年に入ってから他球団の研究や勤続疲労によって成績を落とすケースは少なからず存在してきた。
それだけに、ブレイクを果たした次の年においても主力として活躍を続けている選手は、チームにとっても大きな助けとなる。今回は、2023年にブレイクを果たした選手たちが今シーズンに残している成績を、パ・リーグ各球団ごとに確認していきたい。(※成績は5月26日の試合終了時点)
北海道日本ハム
田中正義投手は2023年に47試合で25セーブを挙げ、移籍1年目から守護神として活躍。今季も前年同様に抑えを務め、ここまで7ホールドポイント・10セーブを記録。防御率も前年の3.50から1.42へと大きく改善し、ブルペンの柱としてチームの上位争いを支えている。
万波中正選手は2023年に本塁打王までわずか1本差に迫る25本塁打を放ち、守備でもゴールデングラブ賞を受賞する大活躍を見せた。今季は打率.236、OPS.708とやや苦しんでいるが、リーグ6位タイの5本塁打を記録するなど、主力として攻守にわたって奮闘している。
郡司裕也選手は2023年途中にトレードで加入し、自己最多の55試合に出場して打率.254を記録し、本職の捕手に加えて内外野をこなすマルチな才能を発揮。今季はすでに昨季を上回る4本塁打、21打点を記録し、打率も.268と前年超え。得点圏打率も2年続けて.350を超えるなど、抜群の勝負強さを生かして随所で存在感を放っている。
東北楽天
内星龍投手は2023年にリリーフとして53試合に登板し、防御率2.28と安定した投球を披露。今季からは先発に転向し、クオリティスタート率71.4%と安定して試合を作っている。新たな持ち場で一定以上の適性を示し、先発陣を支える存在の一人となりつつある。
荘司康誠投手はプロ1年目の2023年に先発として防御率3.36と奮闘したが、今季は防御率7.36と安定感を欠いている。また、2023年に新人ながら33ホールドポイントを挙げた渡辺翔太投手も今季は防御率4.32と成績を落としており、いわゆる「2年目のジンクス」に苦しめられている格好だ。
野手では2023年に卓越した守備力とシュアな打撃を活かして遊撃手のレギュラーとなった村林一輝選手が、今季も前年とほぼ同水準の打率を記録。同じく昨季から定位置をつかんだ小郷裕哉選手も前年同様のアベレージを記録し、わずか45試合で前年と同じ13盗塁を記録。両選手ともに、主力の座をがっちりと固めつつあると言えそうだ。
埼玉西武
プロ2年目の2023年に先発として9勝をマークした隅田知一郎投手は、今季も先発陣の一角として防御率3点台と一定の数字を記録。さらに、同期入団の佐藤隼輔投手は2023年に47試合で防御率2.50と好投したが、今季はここまで防御率1.26と前年以上の安定感を示している。
青山美夏人投手は2023年に新人ながらリリーフとして39試合に登板し、防御率2.96と好投。だが、先発に転向した今季の一軍登板は1試合にとどまっている。豆田泰志投手は昨季途中に育成から昇格して16試合で防御率0.59と圧巻の数字を残したが、今季は6試合で防御率12.71と打ち込まれている。
野手では2023年に100試合に出場して正捕手の座に大きく近づいた古賀悠斗選手が、今季も主力として奮闘。昨季は打率.218、OPS.596と打撃が明確な課題だったが、今季は打率.287、OPS.724と好成績を残し、打撃不振に苦しむチームにあって気を吐いている。
千葉ロッテ
坂本光士郎投手は2023年に自己最多の51試合に登板し、貴重な左腕としてブルペンを支えた。今季は一軍初登板が5月10日とやや出遅れたが、その後は6試合で4ホールド、防御率1.50と好投を見せている。その一方で、2023年に44試合で防御率1.25とキャリアハイのシーズンを送った西村天裕投手は、10試合の登板で防御率8.38と苦しんでいる。
横山陸人投手は2023年の夏場に勝ちパターンを担う活躍を見せ、今季も一時は抑えを託された。その後は状態を落として現在は二軍調整中だが、復調が待たれる存在の一人だ。2023年に自己最多の79試合に出場して打率.284を記録した茶谷健太選手は、打率が.147と打撃不振に陥っているが、前年同様に内野のユーティリティの役割を果たしている。
友杉篤輝選手は2023年にルーキーながら64試合で打率.254を記録し、今季も引き続き主力として奮闘。前年を上回る打率.268に加えて、チームトップの7犠打を記録するなど小技も堅実にこなしており、藤岡裕大選手のコンバートで空席となったショートの定位置確保に大きく前進している。
オリックス
東晃平投手は2023年の夏場以降に先発として6連勝を飾り、防御率2.06、K/BB4.44と優れた投球内容を示した。今季は右手のマメを潰した影響で離脱して以降はやや状態を落としているが、それでも6試合で防御率2.89と一定以上の成績を残し、先発陣の一角として奮闘している。
山下舜平大投手は2023年に16試合で9勝、防御率1.61という圧巻の投球で新人王に輝いたが、今季は3試合で防御率6.43と苦戦を強いられた。さらに、2023年に打率.307を記録して首位打者に輝いた頓宮裕真選手も、今季は打率.192と極度の不振に陥っている。
そんな中で、2023年に38試合で防御率2.19を記録した小木田敦也投手が、今季は13試合で9ホールドポイント、防御率1.38を記録。前年を上回る活躍を見せ、ブルペンの中軸へと成長を遂げている。また、2023年は91試合に出場して序盤戦のチームを支えた茶野篤政選手も、今季初スタメンを飾った5月21日の試合で安打を放ち、今後に期待を持たせている。
福岡ソフトバンク
大津亮介投手は2023年に新人ながら46試合に登板して15ホールドポイントを挙げ、防御率2.43と大いに実力を示した。先発に転向して臨んだ今季は登板した6試合全てでクオリティスタートを達成し、防御率1.63と抜群の安定感を発揮。K/BB3.88、WHIP0.85と投球内容も優秀で、新たな先発陣の柱の一人へと成長を遂げつつある。
スチュワート・ジュニア投手は2023年に14試合に先発して防御率3.38と一定の成績を残し、今季は開幕ローテーション入りを果たした。ここまで6試合で防御率2.48と優秀な数字を残しており、来日6年目の大器が昨季を上回る成績を残す可能性も十二分にありそうだ。
川瀬晃選手は2023年に自己最多の103試合に出場し、スーパーサブとして奮闘を示した。今季の打率は.219と昨季を下回っているが、4月27日にサヨナラ打を放つ活躍を見せ、随所で存在感を発揮している。田浦文丸投手は2023年に45試合で防御率2.38と左の中継ぎとして奮闘したが、今季はコンディション不良もあって一軍登板なしと復調が待たれる状況だ。
成績を落とす選手も存在する一方で、主力に定着した選手も少なくはない
昨季に比べて成績を落としてしまった選手たちが見受けられた一方で、前年同様の活躍を見せ、主力の座を盤石のものにしつつある選手の数も少なくない。また、田中投手、古賀選手、大津投手のように、台頭を果たした前年を上回る成績を残している選手が少なからず存在する点も興味深いところだ。
はたして、今回取り上げた選手たちは残るシーズンにおいても活躍を続け、チーム内における不動の地位を築くことができるか。前年の活躍から一転して苦しんでいる選手たちの復調も含めて、各選手たちのさらなる躍進に期待を寄せたいところだ。
文・望月遼太
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