開幕から打線の主軸に座り、主要3部門全てでリーグ上位の成績を記録
来日2年目を迎えたオリックスのレアンドロ・セデーニョ選手が、開幕から圧巻の打棒を披露している。4月終了時点でリーグ2位の5本塁打、同4位の打率.296、同3位タイの15打点と、主要3部門全てで上位に位置する数字を記録。貴重な長距離砲としてリーグ優勝に貢献した昨季の活躍を経て、一気にリーグ屈指の強打者へと成長を果たしつつある。
セデーニョ選手は、オリックスとの契約以前はMLB傘下のリーグでプレーし、若くして豊かな才能の一端を示していた。今回は、セデーニョ選手のこれまでの球歴や、マイナーリーグ時代に残した成績に加え、各種の指標から読み取れる、選手としての特徴を紹介。長足の進歩を遂げている若き助っ人の魅力について、より深く掘り下げていきたい。(成績は4月30日の試合終了時点)
若くしてNPBに挑戦し、来日1年目から支配下に昇格して優勝に貢献した
セデーニョ選手がこれまでに記録した、NPBにおける年度別成績は下記の通り。
2014年にアマチュアフリーエージェントとして16歳の若さでカージナルスと契約し、同年からマイナーリーグで研鑽を積んだ。2021年オフにはダイヤモンドバックスへ移籍し、引き続きMLB傘下でのプレーを続けていった。
プロ7年目の2022年にはAA級で109試合に出場し、打率.310、30本塁打、93打点、OPS.937と素晴らしい成績を記録。1ランク上のAAA級でもわずか14試合の出場で2本塁打を放ち、打率.291、10打点と奮闘を見せた。そして、同年オフにNPBへの挑戦を選択し、オリックスと育成契約を結んだ。
当時24歳という年齢もあって将来性に期待のかかる立場でもあったが、2023年はシーズン序盤から二軍で結果を残し、5月19日には早くも支配下選手登録を勝ち取る。一軍でも7月には月間打率.309を記録し、18試合で7本塁打、23打点と大活躍。一時は4番を務めるなど大いに存在感を発揮し、中盤戦におけるチームの起爆剤となった。
8月以降はやや状態を落としたものの、それでもシーズン通算では57試合で打率.244、9本塁打、34打点、OPS.716と一定の成績を記録。随所でパワフルなバッティングを見せてチームのリーグ優勝に貢献するとともに、今後のさらなる成長にも期待を持たせた。
そして、2024年は開幕から好調な打撃を見せ、リーグ全体で投高打低の傾向が続くなかで持ち前のパワーを存分に発揮。打線の中軸としてチームをけん引する存在となっており、来日2年目にして大ブレイクの気配を漂わせている。
MLB傘下で着実にステップを踏み、強打者としての成長を続けてきた
次に、セデーニョ選手がMLB傘下時代に記録した成績を確認しよう。
カージナルスと契約した2015年からルーキーリーグに出場し、2016年には47試合で打率.290、OPS.803と活躍。翌2017年にはわずか9試合の出場で4本塁打を放ち、打率.351、OPS1.143と抜群の成績を残した。続く2018年にも59試合で14本塁打、打率.336、OPS1.011と非常に優れた打棒を見せ、ルーキーリーグにおける格の違いを示している。
2019年からはシングルAに活躍の場を移し、100試合の出場で打率.271、OPS.707と一定の数字を記録。翌2020年はパンデミックの影響でマイナーリーグの試合が開催されなかったが、2021年はA+で打率.261、OPS.743と、2年前に比べて成績が改善。また、上位のカテゴリーであるAAでも、19試合で3本塁打、打率.257、OPS.741と遜色のない数字を記録している。
そして、2022年はAAで109試合に出場し、打率.310、30本塁打、93打点、OPS.937と、飛躍的に成績を向上させた。さらに、メジャーの1つ下のカテゴリーであるAAAでも、14試合で打率.291、2本塁打、10打点、OPS.764と、その実力が通用することを示した。マイナーリーグで着実にステップを踏み、2022年にその才能が花開きつつあったといえよう。
課題の選球眼が改善。打者としての完成度が高まっている
最後に、セデーニョ選手がNPBで残してきた各種の指標について見ていきたい。
セデーニョ選手の最大の持ち味といえば、なんといっても抜群のパワーが挙げられる。来日1年目の2023年は57試合で9本塁打を放ち、長打率も.438とまずまずの数字を記録。さらに、長打率から単打の影響を除いた、いわば“真の長打力”を示すとされる「ISO」も.193と、優れた成績を残していた。
さらに、本塁打を1本放つまでに必要な打席数を示す「AB/HR」も、19.56と優秀な水準に到達。この値は同年に本塁打王のタイトルを争った浅村栄斗選手や万波中正選手を上回る数字でもあり、持ち前の長打力は指標の面においても十二分に示されている。
その一方で、選んだ四球は187打席で8個のみ、打率と出塁率の差を示す「IsoD」も.034と低かった。また、四球を三振数で割って求める、打者の選球眼を示す指標である「BB/K」も.170と極端に低く、選球眼に明確な課題を残す状態だった。
しかし、2024年は28試合に出場した時点で既に昨季を上回る11個の四球を選び、出塁率.378、IsoDは.082と、いずれも優秀な水準に到達している。それに伴い、BB/Kも.379と前年に比べて向上を見せており、より完成度の高い打者へと進化を遂げつつある。
また、AB/HRは本塁打王争いができるだけのポテンシャルを示していた前年と、ほぼ同レベルの数字を維持している。さらに、長打率も.500と前年以上に数字を伸ばしており、ISOも.204と、非常に優秀な水準に到達している。
長打率と選球眼の向上に伴い、OPSも.716から.878へと大きく改善。課題だった選球眼が大きく改善されたうえで、長所であるパワーも前年以上に増している点は、セデーニョ選手がより生産性の高い打者へと成長し続けていることの証左でもあるだろう。
2年目に成績を向上させている点も特筆もの
また、セデーニョ選手はMLB傘下時代に、上位のカテゴリーに所属して2年目に入ってから、大きく成績を伸ばす傾向があった点も注目に値する。つまり、新たなカテゴリーにおける最初のシーズンでその環境への適応を進め、次のシーズンにおいて存分に実力を発揮してきた、という考え方もできるはずだ。
この傾向がNPBにおいても続いているのであれば、セデーニョ選手の今季の好調ぶりにも説明がつく。また、同一カテゴリーにおける2年目に選球眼を向上させている点もこれまでのキャリアと共通しているだけに、米球界時代と同様に、このまま年間を通じて好成績を残す可能性も大いにあることだろう。
さらなる伸びしろを残す若き大砲は、王者の屋台骨を支える存在になれるか
現時点で25歳という年齢面を考えれば、セデーニョ選手がさらなる成長を果たす可能性は十二分に残されている。特大のポテンシャルを秘めた逸材が、今後も圧巻のバッティングを見せるか否かは、今季のパ・リーグにおける大きな注目点の一つとなりそうだ。
24歳の若さで海を渡り、ジャパニーズドリームを目指して育成選手としてNPB入りしてから1年半。MLB傘下で示した伸びしろを日本の地で存分に発揮しつつある若き大砲は、リーグ3連覇中の王者の屋台骨を支える強打者となれるか。チームの浮沈を握る存在となりつつある大器が見せる豪快な打撃から、今後も目を離すことはできなさそうだ。
文・望月遼太
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