得点数は2年連続のリーグトップ。一方課題も明確に【福岡ソフトバンクホークス2023：野手編】｜パ・リーグ.com

得点数は2年連続のリーグトップ。一方課題も明確に【福岡ソフトバンクホークス2023：野手編】

パ・リーグインサイト

選手フォーカス

2023.12.25(月) 16:59

　3年ぶりのリーグ優勝奪還を目指すも、リーグ3位と悔しい結果に終わった福岡ソフトバンク。本記事では今年も投手編、野手編に分け、福岡ソフトバンクの2023シーズンを振り返っていく。

チーム打撃成績はいずれもリーグ上位。失策の少なさも光る

　今季はチーム打率が.248（リーグ2位）、本塁打数104（2位タイ）、得点数536（1位）。昨季の打率.255（1位）、本塁打数108（2位）、得点数555（1位）と比べると、数字自体は下がったものの、リーグ内で見ればハイレベルな打線だったといえる。長打率も.360（2位）、出塁率は.319（2位）だった。

　加えて今季の福岡ソフトバンクは、失策数が52とリーグ最少。堅実な守備で投手陣を支えた。

移籍1年目の近藤健介がさらなる進化。全試合出場でチームの核に

　今季の福岡ソフトバンク打線を振り返る上で外せないのが、近藤健介選手の活躍ぶりだ。昨季オフにFA移籍し、3月にはWBCで世界一に貢献。オフらしいオフのなかった近藤選手だが、開幕戦から打線に名を連ねる。

　5月までは本来の打撃を発揮できなかったが、6月からは3カ月連続で月間OPSが1を超え、8月には自身2度目となる月間MVPを受賞。これまでは11本が最多だった本塁打数を大きく伸ばし、26本で自身初となる本塁打王のタイトルを手に入れる。それでいて打率も落とさず.303でリーグ2位、出塁率は.431とリーグ唯一の4割超え。109個もの四球を獲得し、球団の最多記録を更新した。

　3年ぶり2度目のベストナインに輝いたほか、自身初となる全試合出場、ゴールデングラブ賞と、まさにMVP級の活躍。すでに高かったであろうファンの期待を、見事に上回ってみせた。

柳田悠岐がキャプテンの覚悟を見せ、全試合スタメン出場

　近藤選手とともに、今季の打線を支えたのが柳田悠岐選手だ。キャプテン2年目の今季は、WBC日本代表を辞退しシーズンに専念。チームで唯一の全試合スタメン出場を達成し、2度目の最多安打、4年連続8度目のベストナインを獲得した。

　6月28日の東北楽天戦で、3試合連続の本塁打を放ち、NPB史上69人目となる通算250本塁打を達成すると、8月18日の埼玉西武戦では、NPB史上135人目となる1500安打に到達。その存在感は、プロ13年目の今季も少しも褪せることがなかった。

勝負所の一打と堅実な守備。中村晃が2年ぶりに規定打席到達

　中村晃選手は2年ぶりとなる規定打席に到達し、140安打をマーク。140安打以上を記録したシーズンは2018年以来となる。今季はシーズン前半から安定して安打を重ね、1番での起用も続いた。加えて、6月17日の阪神戦における9回表の逆転打や、9月30日の北海道日本ハム戦でのサヨナラ弾など、ここぞの場面での一打が印象に残っているだろう。

　守備でも一塁手として128試合に出場し、失策をわずか2つに抑え、4年連続4回目のゴールデングラブ賞を獲得。抜群の捕球で野手の送球をカバーするシーンも多く見られた。

周東佑京が盗塁王タイトル奪還　栗原陵矢はケガに苦しむ

　なかなか打撃の調子が上がらなかった周東佑京選手だったが、9月に覚醒した。8日の東北楽天戦では自身初の満塁弾を放つなど、月間打率.360、11盗塁を記録し、初の月間MVPに輝いた。36盗塁で3年ぶりに盗塁王のタイトルも獲得。選手会長となる来季は、シーズンを通した活躍を目指す。

　ほかにも柳町達選手が、自己最多の116試合に出場し出塁率.375をマーク。三森大貴選手も102試合で得点圏打率は3割を超えた。しかしその反面、柳町選手は長打率が昨季の.346から.322に低下し、三森選手も出塁率が3割を切るなど課題も見え、飛躍の年にすることはできなかった。

　また、調子が上がり切らないままシーズンを終えることになったのが、牧原大成選手と栗原陵矢選手だ。牧原大選手は自身初の規定打席到達に強い思いを抱いて開幕したシーズンだったが、7月から成績が下降。そして8月30日に右手首に死球を受け、シーズン中の復帰は叶わなかった。

　栗原選手も、昨季の大けがからの完全復帰を目指してシーズンに臨んだ。開幕直後こそ復活を予感させる活躍を見せたものの、その後は成績を伸ばせず。8月23日の千葉ロッテ戦で右手首を痛め、2年続けてケガでの離脱となってしまった。

外国人野手・長打を期待の若手が軒並み苦戦。来季はどう立て直すか

　今季最も大きな誤算は、外国人野手の不調であろう。外国人野手の本塁打はアストゥディーヨ選手の1本のみで、リーグワースト。シーズン途中に再契約を結んだデスパイネ選手も、かつての打棒再来とはならなかった。

　長打を期待できる若手も今季は苦戦した。藤本博史前監督が期待を寄せ、開幕戦から起用された正木智也選手だったが、18打席無安打と不振で登録抹消。今季はわずか1安打に終わる。昨季に2桁本塁打を記録した野村勇選手もケガで出遅れると、復帰後も状態を上げることができず、3本塁打にとどまった。

　リチャード選手も、二軍では2年連続で本塁打・打点の2冠に輝きながら、一軍では0本塁打と結果を残せず。昨季、プロ初打席から2打席連続弾を打つなど強烈なインパクトを残した渡邉陸選手は、一軍出場なしに終わった。

来季もハイレベルな打線を維持できるか。新監督の手腕にも期待

　近藤選手と柳田選手を軸に、高水準の打線で今季を戦い抜いた福岡ソフトバンク。主力野手の流出もなく、来季も手強い打線となりそうだが、今季規定打席に到達した4選手はいずれも30代であり、若手の台頭が課題になっている。さらに、今季の外国人野手は4選手とも退団が決まっており、来季ともに戦う外国人野手が打線にはまるかどうかは不明瞭だ。

　今季二軍監督としてウエスタン優勝を果たした小久保裕紀新監督の就任1年目。福岡ソフトバンクはどのような変化を見せるのか注目だ。