MLBでも実力を証明した剛腕が帰ってくる。澤村拓一が千葉ロッテにもたらすものとは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

千葉ロッテマリーンズ・澤村拓一投手※写真は2020年時(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・澤村拓一投手※写真は2020年時(C)パーソル パ・リーグTV

MLBから復帰し、3年ぶりにマリーンズのユニフォームに袖を通す

 1月28日、千葉ロッテが澤村拓一投手の入団を発表した。2021年からMLBに活躍の場を移していた澤村投手にとっては、3年ぶりの古巣復帰となる。2020年はシーズン途中に加入して抜群のインパクトを残したが、今回も当時と同様の活躍が期待されるところだ。

 今回は、澤村投手の球歴をあらためて振り返るとともに、日米における年度別の指標に基づく投球スタイルの変化や、千葉ロッテ復帰に際して期待される役割を紹介していきたい。

プロ1年目に先発として新人王に輝き、クローザーとしても最多セーブを獲得

澤村拓一投手 NPB年度別成績(C)PLM
澤村拓一投手 NPB年度別成績(C)PLM

 澤村投手は中央大学から、2010年のドラフト1位で巨人に入団。プロ1年目の2011年から先発ローテーションに定着し、いきなり200投球回に到達するという快挙を達成。防御率2.03と新人離れした安定感を発揮して11勝をマークし、同年のセ・リーグ新人王にも輝いた。

 続く2012年も活躍を見せ、入団から2年連続で2桁勝利と防御率2点台を記録。3年目の2013年も、統一球の変化に伴い投高打低の傾向が終息する中で、防御率3.13とまずまずの数字を残した。だが、打線の援護に恵まれず5勝10敗と大きく負け越し、終盤戦ではリリーフへの配置転換も経験。

 2014年は故障の影響で12試合の登板にとどまったが、2015年は再びリリーフに転向し、防御率1.32、36セーブと見事な活躍で守護神の役割を全う。2016年は防御率2.66と前年に比べるとやや安定感は欠いたが、37セーブを挙げて最多セーブのタイトルを手にした。

故障の影響で調子を崩したが、千葉ロッテへの移籍を機に復調を遂げた

 翌年以降もフル回転の活躍が期待されたが、2017年は故障の影響で一軍登板を果たせず。2018年には戦列に復帰して49試合で24ホールドをマークしたが、防御率は4.64と悪化。2019年には43試合で防御率2.66と復調傾向を示したものの、2020年は13試合で被安打14、与四球8と大荒れで、三軍への降格を経験するなど不振を極めた。

 しかし、9月にトレードで千葉ロッテに移籍したことがきっかけで大きく復調。移籍からシーズン閉幕までの約2カ月間で22試合に登板して13ホールドを挙げ、セットアッパーとして負傷者の穴を埋める活躍を披露。防御率1.71と安定感も抜群で、チームの2位躍進にも大きく貢献した。

世界最高峰の舞台でも、リリーフとしてその実力を大いに証明してみせた

澤村拓一投手 MLB年度別成績(C)PLM
澤村拓一投手 MLB年度別成績(C)PLM

 2020年オフに海外FA権を行使し、ボストン・レッドソックスに移籍。MLB1年目の2021年には55試合に登板して防御率3.06と奮闘し、幅広い起用に応えて5勝10ホールドを記録。剛速球とスプリットを武器に1年目から存在感を示し、ポストシーズンでも3試合に登板するなど、世界最高峰の舞台においてもその投球が通用することを証明した。

 続く2022年も引き続きブルペンの一角として登板を重ね、49試合に登板して防御率3.73と一定の数字を記録。だが、重要な場面での登板機会は減少し、8月のDFAを経て9月には自由契約に。そして、2023年1月に千葉ロッテへの復帰を決断し、3年ぶりにパ・リーグへ活躍の場を移す運びとなった。

故障前と故障後で、投球スタイルに大きな変化が見られた

 次に、澤村投手が記録した年度別の指標について見ていきたい。

澤村拓一投手 NPB年度別指標(C)PLM
澤村拓一投手 NPB年度別指標(C)PLM

 奪三振率と与四球率に関しては、2017年の故障前後で大きく異なる傾向が出ている。プロ初年度の2011年は奪三振率が7.83とさほど高くなかった一方で、与四球率2.02、K/BB3.87と、優れた制球力を示していた。また、2014年は故障で12試合の登板にとどまったが、与四球率1.73、K/BB4.71と、先発としては非常に優れた水準に到達していた。

 クローザーを務めた2015年と2016年も、奪三振率は7点台、与四球率は2~3点台と、キャリア初期と同様の傾向が示されていた。しかし、2018年の復帰後は3年連続でイニング数を上回る奪三振数を記録し、大きく奪三振率が向上。その一方で、与四球率も大きく上昇しており、良くも悪くも力でねじ伏せる投球スタイルに変化していた。

 ただし、千葉ロッテ時代の奪三振率12.43はまさに破格といえる水準で、WHIP0.95も新人時代を上回る、キャリア最高の数字を記録した。相次ぐ故障に伴うモデルチェンジが環境の変化をきっかけに奏功し、以前とは異なるスタイルながら安定感を取り戻したといえよう。こうした投球スタイルの変化は、MLBにおける投球内容にも関連することになる。

MLBにおいても、持ち前の奪三振力の高さは発揮されていた

澤村拓一投手 MLB年度別指標(C)PLM
澤村拓一投手 MLB年度別指標(C)PLM

 2021年は53イニングで61個の三振を奪い、奪三振率10.36という優秀な数字を記録。MLBにおいても、高い奪三振力は十二分に発揮されていた。その一方で、与四球率は5.43と日本時代以上に高くなっており、MLBでも日本時代と同様の傾向が示されていた。

 与四球率の高さもあってK/BBは1.91と低い数値となり、WHIP1.45と走者を溜めるケースも多かった。それでも、奪三振率の高さもあって走者を出しても踏ん張り、防御率3.06と大崩れはせず。NPB以上に剛腕の多いMLBにおいても、澤村投手の速球とスプリットは十二分に通用していたことがわかる。

 ただし、2022年は奪三振率7.11と前年から大きく低下した一方で、与四球率は前年に比べれば改善傾向にあった。結果的にK/BBはさらに低下したものの、WHIPは前年とほぼ同じ数値。日本球界復帰後は、本来の高い奪三振率を維持しつつ、与四球率の改善を図れるかがカギとなってきそうだ。

ブルペンのやり繰りに苦しんだチームにとって、“救世主”となりうる存在だ

 千葉ロッテは2021年に強力なブルペンを原動力に優勝争いを繰り広げたが、2022年は勝ちパターンを担った国吉佑樹投手と佐々木千隼投手をはじめ、唐川侑己投手や東妻勇輔投手といったリリーフ陣の主軸が不振に陥った。また、抑えの益田直也投手も4年ぶりに防御率3点台となり、シーズン途中に勝ちパターンを外れるなど苦しいシーズンを送った。

 59試合で30ホールドと大車輪の活躍を見せた東條大樹投手をはじめ、故障から復活した西野勇士投手と岩下大輝投手、安定感を飛躍的に増した小野郁投手らの活躍はあったが、チームは最後まで勝ちパターンを固定できなかった。前回在籍時に「8回の男」として抜群の存在感を示した澤村投手の復帰は、ブルペンを立て直すうえでも大きな意義を持ちうる。

 また、クローザーとして抜群の安定感を見せたオスナ投手の退団に伴い、抑えの座は空席となっている。近年はセットアッパーとして活躍を見せている澤村投手だが、巨人時代には抑えとしてセーブ王に輝いた実績を持つ。それだけに、チーム内競争の結果次第では、澤村投手が守護神として、9回のマウンドに立つ可能性も大いにあることだろう。

「魂のエース」の背番号を受け継ぎ、気迫の投球でチームを浮上させられるか

 2度目の加入に際して、澤村投手が着用する背番号は「54」。気迫あふれるピッチングで「魂のエース」と呼ばれ、今季から投手コーチとして古巣復帰を果たした黒木知宏氏が現役時代に使用していた、まさに代名詞ともいえる背番号だ。

 澤村投手も三振を奪った際に雄叫びを上げながらガッツポーズを見せるなど、気迫を前面に押し出した投球でファンの心をつかんでいた。受け継いだ背番号に相応しい豪快な投球を披露し、チームを再び上位争いに導けるか。

 世界最高峰の舞台で存在感を見せ、満を持して幕張に帰ってきた剛腕。3年前と同じく「救世主」となれるだけの条件は整っている。

文・望月遼太

関連リンク

2021年から2022年における、パ6球団のリリーフ陣の“変化”
パ・リーグにおける人的補償の“成功例”を振り返る
パ・リーグ6球団の“復活”が期待される選手たち
登板過多の影響は? 前年に60試合以上に登板した投手の翌年成績
「2022年の佐々木朗希」はどうだった? 圧巻の指標と、見えてきた課題

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE