今季はどうなる? 2021年から2022年における、パ6球団のリリーフ陣の“変化”を振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

左から吉田輝星投手、宮森智志投手、又吉克樹投手(C)パーソル パ・リーグTV
左から吉田輝星投手、宮森智志投手、又吉克樹投手(C)パーソル パ・リーグTV

前年に活躍したからといって、翌年も好成績を収められるとは限らない

 プロ野球の世界では往々にして、前年に活躍した選手が翌年も好成績を残せるとは限らない。それは現代野球の屋台骨を担うリリーフ投手に関しても例外ではなく、各球団におけるブルペンの顔ぶれには、基本的には毎年少なからず変化が生じることになる。

 今回は、2021年と2022年における各球団の主要なリリーフ陣の成績を実際に比較。シーズンごとに起きる変化の大きさをあらためて確認するとともに、昨季に台頭した選手たちについて振り返っていきたい。

北海道日本ハム

北海道日本ハム 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
北海道日本ハム 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 開幕から3試合連続でブルペンデーを採用するなど序盤は実験的な起用が目立ったが、中盤戦以降もリリーフ陣は流動的に。とりわけ、2021年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを手にした堀瑞輝投手と、28セーブを挙げた守護神の杉浦稔大投手が、ともに防御率5点台と安定感を欠いた点は大きく響いたといえる。また、宮西尚生投手がプロ15年目にして初めて50試合登板を逃し、前年は防御率1点台だった井口和朋投手も安定感を欠くなど、実績ある投手たちも苦しい戦いを強いられた。

 そんな中でも、玉井大翔投手とブライアン・ロドリゲス投手は前年と同様に安定した投球を見せ、頼れる存在であることをあらためて証明した。そして、ドラフト8位ルーキーの北山亘基投手が勝ちパターンの一角としてフル回転し、石川直也投手もトミー・ジョン手術から復活。4年目の吉田輝星投手が51試合に登板してリリーフ適性を示したのに対し、鈴木健矢投手は先発転向で真価を発揮した。明るい材料も少なくないだけに、今季こそはブルペンを立て直せるかに注目だ。

東北楽天

東北楽天 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
東北楽天 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 安樂智大投手は2021年にセットアッパーとして大車輪の活躍を見せたが、2022年は安定感を欠く投球が目立った。また、酒居知史投手のホールド数も28から1へと激減し、2021年に復活傾向を示していた森原康平投手(7月に横浜DeNAへ移籍)と福山博之投手は、ともに登板機会を大きく減らしている。

 しかし、2021年は長期離脱を強いられた松井裕樹投手が3年ぶりに最多セーブに輝き、アラン・ブセニッツ投手も復調。宋家豪投手は前年同様に勝ちパターンを担い、2年連続で20ホールドを記録した。さらに、西口直人投手がロングリリーフ要員からセットアッパーへと成長し、シーズン最終戦まで最優秀中継ぎ投手のタイトルを争う大躍進を見せた。

 昨季は新戦力の台頭も目立ち、育成ドラフトで入団した宮森智志投手が、初登板から22試合連続無失点というNPB最長タイ記録を達成。同じくルーキーの西垣雅矢投手も防御率2.66と好投し、4年目の鈴木翔天投手も左の中継ぎとして奮闘した。ブセニッツ投手は今オフに退団したものの、来季も層の厚いブルペンを構築できる可能性は十分だ。

埼玉西武

埼玉西武 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
埼玉西武 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 2021年に61試合に登板したギャレット投手が退団し、武隈祥太投手、十亀剣投手、田村伊知郎投手の登板機会も大きく減少。その一方で、リリーフに転向した本田圭佑投手が防御率1点台と抜群の安定感を発揮し、新戦力のボー・タカハシ投手と2年目の佐々木健投手も台頭を見せている。

 それに加えて、増田達至投手と宮川哲投手が不振を脱し、森脇亮介投手は2年ぶりに防御率1点台を記録。そして、60試合で防御率1.77と圧巻の成績を残した水上由伸投手と、前年同様に支配的な投球を見せた平良海馬投手は、揃って最優秀中継ぎ投手の栄冠を手にしている。

 公文克彦投手も出番こそ限られたものの防御率0.00と完璧な投球を見せており、リリーフ陣はまさに多士済々だ。新シーズンはリリーフ陣の柱だった平良投手が先発に転向するが、前年最下位からのAクラス入りの立役者となったリリーフ陣は、来季も大いに期待が持てそうな陣容となっている。

千葉ロッテ

千葉ロッテ 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
千葉ロッテ 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 2021年に形成された強固なブルペンは、優勝争いを繰り広げたチームの原動力でもあった。しかし、その立役者だった佐々木千隼投手と国吉佑樹投手をはじめ、東妻勇輔投手、唐川侑己投手、田中靖洋投手と多くの主力投手が不振に陥ったことで、リリーフ陣は大幅な再編を余儀なくされた。

 その一方で、前年はわずか5試合の登板に終わった東條大樹投手が、セットアッパーに定着して30ホールドを挙げた。西野勇士投手と岩下大輝投手は故障から復活して好投し、小野郁投手は防御率1点台を記録。廣畑敦也投手と八木彬投手も1年目から一軍で奮闘するなど、前年とは異なる戦力の台頭も見られた。

 オスナ投手とゲレーロ投手も助っ人としてチームを支えたが、いずれも今オフに退団。MLBから3年ぶりに復帰する澤村拓一投手をはじめとする新戦力や、不調でクローザーを外れた昨季からの復調を期す益田直也投手ら既存戦力が、その穴を埋められるかがカギになりそうだ。

オリックス

オリックス 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
オリックス 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 前年にセットアッパーを務めたヒギンス投手が退団し、3年連続で40試合に登板していた山田修義投手も登板機会が減少。ポストシーズンでもフル回転を見せた吉田凌投手と富山凌雅投手、剛腕の漆原大晟投手とK-鈴木投手も不振で、新たな力の台頭が求められた。

 そんな中で、トミー・ジョン手術明けの近藤大亮投手と黒木優太投手が序盤の戦いを支え、中盤戦以降は阿部翔太投手、宇田川優希投手、本田仁海投手の3名が大きく飛躍。山崎颯一郎投手とワゲスパック投手のリリーフ転向も奏功し、持ち前の剛速球でブルペンに欠かせない存在となった。

 今季もベテランらしい投球で存在感を見せた平野佳寿投手と比嘉幹貴投手、新人ながらブルペンに割って入った小木田敦也投手らも含め、リリーフ陣は明確なストロングポイントに。ポストシーズンを勝ち抜く主要因となった救援陣にかかる期待は、今季も大きなものとなることだろう。

福岡ソフトバンク

福岡ソフトバンク 主なリリーフ投手の成績(C)PLM
福岡ソフトバンク 主なリリーフ投手の成績(C)PLM

 又吉克樹投手のFA加入に伴い、岩嵜翔投手が人的補償で中日に移籍。しかし、それ以外の主力投手は今季も登板機会を確保し、いずれも防御率3点台以下と好投。とりわけ、嘉弥真新也投手は防御率0点台と抜群の投球内容を示し、津森宥紀投手と甲斐野央投手も防御率2点台と好投を見せた。

 また、新入団の又吉投手も故障離脱を強いられるまでは期待通りの投球を見せ、独立リーグから2年ぶりにNPBに復帰した藤井皓哉投手は大ブレイクを果たした。松本裕樹投手もセットアッパーへと成長を遂げ、守護神を任されたモイネロ投手も変わらぬ安定感を示した。

 ブルペンの安定性が向上を見せたことは、前年はリーグ4位に沈んだチームの復調にも一役買った。それだけに、藤井投手と森投手が先発に転向する来季も安定感を保てるかが肝要だ。オスナ投手の加入や、又吉投手の故障からの復帰を後押しに、ブルペンの再編をスムーズに進めていきたいところだ。

ブルペンの整備に成功するかは、チーム成績にも直結しうる要素だ

 以上のように、球団ごとに程度の差こそあれ、どのチームにおいてもブルペンの顔ぶれには変化が存在した。オリックスと埼玉西武は整備に成功したことがチームの躍進に直結したが、千葉ロッテと北海道日本ハムにとっては、立て直しの失敗がチーム成績にも大きく響く結果となっている。

 それだけに、2022年から2023年にかけて生じるであろう“変化”にうまく対処できるかは、各球団の成績にも直結する可能性が高い。今季活躍した投手たちの活躍や、不振に苦しんだ投手たちの巻き返しといった要素に、新シーズンはぜひ注目してみてほしい。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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